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AI相場再開、次の最注目テーマと大化け期待銘柄<小川浩一郎・米国株"上昇のナラティブ">

特集
2026年9月21日 10時00分

◆利上げに市場の大きな動揺なし、そして焦点は米中間選挙へ

9月16日(現地時間)に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)で、大方の予測どおり、0.25%の利上げが決定した。市場はすでにこの結果を織り込んでいて、当日の主要指数こそ下落したが、影響は限定的だった。それ以上に注目されたのはウォーシュFRB(米連邦準備制度理事会)議長の声明だった。筆者は今回の会見前に、利上げなら声明には「ハト派」的な見通しを示し、金利据え置きなら逆に「タカ派的」な見通しを語るだろうと考えていた。結果は改めてFRBの独立性とインフレ抑制の使命を前面に押し出した、タカ派的な内容だった。

利上げなしの可能性を高めに見ていたのは、米中間選挙の年には、金融当局による選挙介入を防ぐ意味もあって、1990年以降、この時期の新たな利上げ開始がなかったこと、ウォーシュ氏がタスクフォースを設置し、市場とは距離を置いてFRB内部で金融政策を議論していること、そして複数の見方ができる米経済のインフレ進行状況を考慮したからだ。もちろん、トランプ大統領のプレッシャーも大きいと考えた。もっとも今後、追加利上げを防ぐための圧力は強まることが予想され、それに対してウォーシュ氏がどう対峙するかは不透明だ。

さて、FOMC通過後の大きな焦点は、言うまでもなく11月に迫った米中間選挙となる。当初、上院で優勢を伝えられていた共和党だが、直近の米予測市場(賭けサイト)によると上下両院ともに民主党勝利の予測が上回っているという。もし、この予測どおりに共和党が惨敗するならば、トランプ政権のレームダック(死に体)化だけにとどまらず、民主党主導による大統領への弾劾裁判ラッシュが始まるはずだ。

それを防ぐために同大統領は、これから2カ月、給付金を含めた大盤振る舞いの経済対策と、企業の成長を促す金融政策に重点的に取り組むはずだ。中東での電撃的な停戦合意を目指すかもしれない。10月に行われるイスラエルの次期総選挙では、ネタニヤフ首相が属する連立与党の劣勢が伝えられており、トランプ大統領としてはこれ以上、義理立てをする理由もなくなっている。

その意味では、今週23日(現地時間)に予定されている米中首脳会談が大きなカギを握る。日本にとっては望ましい結果ではないかもしれないが、中間選挙に向け、中東情勢鎮静化による原油価格の抑制を最優先し、米国側が貿易や安全保障などで大幅な譲歩をしてでも中国側にイランとの交渉を委ねる可能性も考えられる。

◆AI開発競争は軍拡競争と同じ、「AI猛威論」はエクスキューズに過ぎない

とはいえ、米中間選挙の行方がどちらに転ぼうが、株式市場への影響は軽微なものにとどまるだろう。共和党が勝てば現状維持であり、もし負けたとしてもトランプ大統領の暴挙とも思えるような政策に振り回される余地が低下する。いずれにしても、米国株市場最大のテーマである、AI(人工知能)進化の奔流は決して止まることはない。

先週、喧伝されたアンソロピックCEO(最高経営責任者)のダリオ・アモデイ氏の発言をきっかけとした、いわゆる「AI猛威論」についても、結論から言えば、大勢に大きな影響はない。同氏の声明にライバルであるオープンAIのサム・アルトマンCEOやスペースX<SPCX>のイーロン・マスクCEOが賛同したということだが、現在のAI開発競争は言ってみれば軍拡競争と同じだ。

軍拡競争では定期的に競争を抑制しようとする動きが発生する。反軍拡の政治運動や大国同士の軍縮交渉などがそれだが、それでも引いてしまえば負けなので、結局は際限なく競争は続いていく。今回の各氏の意見表明は、激化するAI開発競争を緩めるための各社間のけん制でもあり、無秩序なAI開発に対する世間の批判へのある種のエクスキューズであると理解をすべきではないだろうか。

渦中にあるアンソロピックだが、いよいよ10月中とも噂されている上場が迫ってきている。同社の上場前に、ちょっとした物色のヒントを伝えるならば、周辺銘柄に注目すべきだということだ。6月のスペースX上場前にも、宇宙関連銘柄がテーマ買いで買われ、株価が急騰した。「スペースX祭り」と言われた局面だ。ロケット・ラボ<RKLB>、ASTスペースモバイル<ASTS>、インテュイティブ・マシーンズ<LUNR>といった銘柄だが、いずれもスペースX上場前の5月下旬にかけて、80%前後の急騰劇を展開した。あくまで短期的な上昇だったが、今回もアンソロピック関連銘柄に物色資金が一気に流れ込む「アンソロピック祭り」の展開が予想される。

肝心のアンソロピックについては、もちろん、IPO(新規株式公開)は話題を集めるだろうし、成功裏に進むと考えている。ただ、一つ気になるのは、同社の主戦場であるAIモデルの開発は競合が多く、ブルーオーシャンの市場ではないという点だ。米国だけでもオープンAIやアルファベット<GOOG>、メタ・プラットフォームズ<META>といったライバルが存在する。中国ではディープシーク、ムーンショットAIなどのAI開発企業に加え、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)<BABA>、百度(バイドゥ)<BIDU>、華為技術(ファーウェイ)などの大手企業がしのぎを削っている。欧州にもミストラルAIが存在し、日本でもサカナAIなどが登場している。

これだけプレーヤーの数が多いということは、長期的に見れば技術がコモディティー化していく可能性があることを意味する。分かりやすく言えば、かつて、IT革命の初期段階に雨後の筍のごとく誕生した検索エンジンの状況と似ている。検索エンジンは結局、後発だったグーグル(現アルファベット)が独占的なシェアを確立した。アンソロピックもそうしたポジションを得ることができればいい。だが現時点では、いくらプロ向けや企業向けのAI開発でリードしているといっても、他社を圧倒するような技術的な優位性が確立されているとは言えない。やはり怖いのは中国企業だ。当面はAIブームに乗って株価上昇も期待できるだろうが、その先の数年後に、現在の地位を維持しているという確信は持てない。

◆買い場を迎えたスペースX、エヌビディアは長期安定成長へ

一方、対照的な立ち位置にいるのが、スペースXだろう。同社を見るポイントは、宇宙という、それこそ未開拓な分野で支配的な地位を確立する可能性が非常に高いということだ。アマゾン・ドット・コム<AMZN>しかり、テスラ<TSLA>しかり、パランティア・テクノロジーズ<PLTR>しかり。これら市場で圧倒的なシェアを獲得した企業は、売上高のシェアを高める一時期には、赤字覚悟で投資に重点を置く。だが、市場の支配的地位を獲得すると黒字が固定化し、あとは売上高、利益ともひたすら拡大していく。

こうした企業に投資をするなら黒字になってからでは遅い。上記の3社も、長期チャートで見れば、赤字の時点で買うのと、黒字転換して株価が上昇してしまった後で買うのとでは、パフォーマンスに大きな差が生じていることが分かる。その点、スペースXの株価は8月初旬に付けた100ドル台で底を打ち、現在は150ドル前後と、ちょうど上場初値の水準で推移している。上場時の喧騒は去ったが、四半期決算が黒字化していないいまこそ、投資タイミングとしてはちょうどいい局面を迎えていると言える。

次にAI相場の主役であるエヌビディア<NVDA>についても触れたい。同社の特徴は、業績は抜群、アナリストの評価も高い、そしてすでに誰もが保有している銘柄であるということだ。株式市場での立ち位置は、端的に言えば、一昔前の"アップル<AAPL>化"している。アップルは初代iPhoneが発売された2007年以来、長期にわたる事業成長を続け、株式市場の中心であり続けてきた。株価がわずかの間に何倍にもなるような急騰劇は演じなくとも、長年、安定的に株価が上昇してきた。

その域に、エヌビディアも達したのではないかと感じる。数年前のような短期急騰を期待する投資家には物足りないかもしれないが、今後もAI相場の主役として、安心して長期資金を振り向けることができる銘柄であり続けるのではないだろうか。

◆最も社会的意義の大きなAI実装分野、「AI創薬」に注目

最後に、秋から年末へ向けての個別株の投資テーマを考えてみたい。主な着眼点は三つあり、一つはAIの普及・進化による企業の生産性の向上。次にGAI(生成AI)からAGI(汎用人工知能)へとシフトするAI開発の潮流。そしてもう一つはAI創薬だ。

生産性の向上については、AI導入によって売上高の拡大とコストダウンが最も進んでいるセクターが投資対象になる。ゴールドマン・サックス・グループ<GS>やJPモルガン・チェース<JPM>、モルガン・スタンレー<MS>といった大手金融機関やIT企業全般が該当する。ITと言えばいささか広義に過ぎるが、アマゾン・ドット・コムやマイクロソフト<MSFT>など、GAFAMクラスの大企業と捉えてもらって差し支えない。こうした巨大企業は、あまり表立っては報じられないが、AIを当たり前のように使いこなし、生産性の向上とリストラによるコスト削減を同時に進めているはずだからだ。

AI開発の潮流については、今後、各社がAGI開発へと重点を移し、投資を加速していくことが確実視されている。となるとやはり、最先端半導体の需要拡大はさらに続いていく。必然的に再び、半導体セクターが相場のど真ん中へ返り咲くのではないだろうか。半導体セクターは今年に入ってからも、年初から3月まで、4月から6月まで、そして7月以降と、3カ月ごとに調整と急騰の局面を繰り返している。10月以降は再び、企業業績の好調を背景とした現実買いのステージに入り、見直される局面に入るというシナリオだ。

どの局面でも株価が大崩れせず、しっかりしているエヌビディアはもちろん、マイクロン・テクノロジー<MU>やブロードコム<AVGO>、マーベル・テクノロジー<MRVL>といった7月以降の調整から抜け出せていないAI半導体の主力企業が狙い目だ。

そして最後のテーマ、AI創薬については、最も社会的な意義の大きいAI実装分野でもある。AI創薬に力を入れている企業と言えば、イーライ・リリー<LLY>、ファイザー<PFE>、メルク<MRK>といった大手製薬企業が真っ先に挙げられる。しかし、これらの企業はいかんせん事業領域が広く、AI効果が全体業績に及ぼす効果は限られる。

そこで今回、特に紹介したいのは、ツイスト・バイオサイエンス<TWST>という企業だ。設立は2013年、現時点の売上高は3億ドル超で、赤字決算を続けているが、年初来、株価が4倍化し、強烈な上昇トレンドを維持している。同社の何が評価されているのか。AI創薬という言葉からは、一般的なバイオベンチャーのような、ハイリスク・ハイリターンのイメージを持たれるかもしれない。だが、同社は創薬自体ではなく、創薬を行うためのプラットフォームを提供するという事業形態なのだ。

製薬企業が設計したDNAを、同社のシリコン上の基盤を使った独自技術によって合成する。メーカーの意図したDNAの製造委託を受ける立場で、半導体業界のファウンドリー企業に近いと言ったほうが分かりやすいかもしれない。その合成技術が、AI導入によって劇的に向上し、製薬メーカーの新薬開発の大幅なスピードアップ実現が期待されている。AI創薬の流れは今後ますます拡大していく。ただし、実際に創薬する企業は、新薬開発が成功するかしないかがすべてで、投資対象としては一か八かの賭けになってしまう。しかし、同社のように創薬のためのプラットフォームを提供している企業なら、新薬開発のリスクを取る必要がない。幅広い企業の創薬ニーズを受け入れ、事業を拡大していける道筋が見えているわけだ。

今年に入ってからの市場の高い評価は、創薬の分野で、AI活用を最大限発揮できる企業として認識され始めてきたからだ。他社のように、足元の株価はご多分に漏れず、金利の先高観などから調整していたが、強烈な上昇トレンドは維持。一目均衡表で言うところの「三役好転」を形成し、反転基調が鮮明になっている。赤字経営が続いていると記したが、調整後EBITDAでは来期、27年9月期後半には黒字転換できる見込みだ。時価総額が100億ドル未満の現段階なら、遠くない将来、株価が何倍にもなる「大化け」も期待できる。そう考えて、今回はあえて一つに絞り、まだ多くの投資家が認識していないだろう有望銘柄を紹介した次第である。

【著者】

小川浩一郎(おがわ・こういちろう)

岩井コスモ証券投資調査部長/チーフアナリスト

1967年生まれ。外資系コンサルティング会社で戦略立案、M&Aアドバイザリー等に従事した後、投資ファンドで投資実務や資産運用に携わり、2006年、岩井コスモ証券に入社。現在は米国株式を中心に外国株式に関する業務全般を担当。テレビ東京「Newsモーニング・サテライト」、インターネット配信「ストックボイス」等に随時、出演。長年の市場分析経験を生かしたストーリー性のある銘柄・セクター分析に定評がある。社団法人・日本証券アナリスト協会検定会員、米国公認会計士・米国証券アナリスト・有資格者。

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