“日本橋の空”復活へ、動き出した「首都高地下化」で浮上する株 <株探トップ特集>

特集
2018年7月28日 19時30分

―国交省など地下化で正式合意、東京五輪後着工で中長期的な投資テーマに―

国土交通省と東京都、首都高速道路会社などは18日、日本橋地区の上空を通る首都高を地下化する計画について正式に合意した。従来4000~5000億円かかるとみられていた事業費は、付近にある既存の八重洲線や東京高速道路(KK線)を活用し、一部の地下ルート新設を取りやめることで約3200億円に圧縮する。2020年の 東京五輪後の着工を目指して、今後具体的な手続きに入ることから、「首都高地下化」関連は中長期的な投資テーマとなりそうだ。

●総事業費はさらに膨らむ可能性も

日本橋の首都高を巡っては、以前から景観を損ねているとの指摘が多く、高架を撤去する議論はこれまで幾度となく繰り返されてきた。01年に当時の扇千景国交相が有識者による「東京都心における首都高速道路のあり方委員会」を設立し、日本橋地区の首都高再構築案を提示したほか、06年には小泉純一郎元首相の指示に基づき「日本橋川に空を取り戻す会」が地下化を提言。この時は莫大な費用がかかることなどがネックとなり、事業化には至らなかったが、今回の合意を経て、ようやく景観改善に向けた動きが本格化することになる。

工事の事業区間は、神田橋ジャンクション(JCT)から江戸橋JCT間の約1.8キロで、このうち1.2キロが地下トンネルとなる計画。工期は10~20年程度かかる見込みで、地下ルートの完成後に現在の高架を撤去する。事業費は用地・補償費が約1110億円、本体工事費が約1030億円、河川などの関連工事費が約520億円、その他工事費で約540億円と見積もられている。現在、大型車が通行できない八重洲線やKK線を活用するためには道路幅の拡張や耐震補強などの工事が必要となるが、今回の事業費計画には含まれておらず、総事業費は3200億円以上に膨らむ可能性がある。

●大手ゼネコン以外にもビジネスチャンス

工事を担うのは大成建設 <1801> 、大林組 <1802> 、清水建設 <1803> 、鹿島建設 <1812> といった大手ゼネコンが中心になるとみられるが、このほかにもトンネル施工で定評のある奥村組 <1833> や西松建設 <1820> にも注目。トンネルに入るスロープなど複雑な工程に使われる鉄構関係の製品は造船会社や橋梁メーカーが強みを持つことから、三井E&Sホールディングス <7003> 、横河ブリッジホールディングス <5911> 、宮地エンジニアリンググループ <3431> も恩恵を受けそうだ。

また、地下化するにはまず地質調査が必要となるため、大手の応用地質 <9755> や川崎地質 <4673> [JQ]、ボーリング機器を扱う鉱研工業 <6297> [JQ]の出番が早まる可能性があり、地盤改良工事を手掛ける不動テトラ <1813> 、日本基礎技術 <1914> 、ライト工業 <1926> 、日特建設 <1929> も見逃せない。

さらに、道路舗装機械大手の酒井重工業 <6358> 、高速道路情報表示システムなどを手掛ける星和電機 <6748> 、消火設備をはじめとしたトンネル防災システムを展開している能美防災 <6744> やホーチキ <6745> などにもビジネスチャンスがありそうだ。

●日本橋地区で再開発を進める企業にも注目

日本橋地区の首都高地下化は周辺の再開発事業との連携を見込んだかたちとなっており、国際金融都市としてふさわしい景観が形成されれば、訪日外国人観光客をさらに呼び込む効果が期待できる。このことから、同地区で再開発を進める企業にも注目しておきたい。

三井不動産 <8801> は、重要文化財である高島屋 <8233> 日本橋店を含む一帯街区で「日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業」を推進しており、6月末にはオフィス賃貸事業を行う「日本橋高島屋三井ビルディング」が完成。低層部には都市型ショッピングセンター「日本橋高島屋S.C.」(売り場面積6万6000平方メートル)が入り、今年9月には新館が、来春には本館がリニューアルし、グランドオープンする予定だ。

三菱地所 <8802> は、東京駅日本橋口前に位置する常磐橋街区でプロジェクトを進めており、今年2月にA棟の新築工事に着工。23年までには高さ390メートルを誇るB棟の工事を始め、プロジェクト全体の完成は27年度を予定している。

平和不動産 <8803> は、日本橋兜町(茅場町)再活性化プロジェクトの第1弾となる「日本橋兜町7地区開発計画(仮称)」を19年3月に着工する予定。同計画にはヤマタネ <9305> 傘下の山種不動産なども参加しており、高さ約90メートルの複合ビルを建設する。

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