株探で2018年読まれた記事 ― 相場の動く“予兆” <新春特別企画 第1弾>

特集
2019年1月1日 18時00分

株探でその週によく読まれた記事を紹介する【今週読まれた記事】のコーナー、今回は2018年に配信した記事を通して1年を振り返る特別版となります。

2018年の日経平均株価は前年比2750円安の2万0014円、下落率12.1%で取引を終了。辛うじて2万円大台を維持したものの、7年ぶりのマイナスとなって平成最後の1年を終えました。年の瀬になって大幅安に見舞われたことで2012年から続いた“アベノミクス相場”は終焉、弱気相場入りと見る向きもあります。しかしそれが正しかったとしても、下げ続ける相場というものも存在しません。その時々の材料によってムードは好転・暗転を繰り返し、山谷のチャートを形成していきます。また、全体相場が悪ければ個別株勝負、中長期目線から短期目線へのシフトなど、投資家の取れる選択肢も複数存在します。恐らくどのような相場になっても基本は同じ。情報を集め、現状を正確に把握し、機敏に対応することで活路を見出せるのではないでしょうか。

この欄では2018年を振り返って現在の日本市場の立ち位置を再確認するとともに、日経平均が「底を打った・天井を打った」前後に的を絞り、その“予兆”を捉えていた記事を紹介してみたいと思います。相場が動く直前・直後には、どのようなシグナルが発せられていたのでしょうか。2019年相場に向けて何らかのヒントとなれば幸いです。

●26年ぶり2万4000円奪回、適温相場の終了

年明け2018年の日経平均はいきなり741円高で始まりました。前年11月から2ヵ月近く超えられずにいた2万3000円の壁を軽々と超え、「1992年以来、26年ぶりとなる2万4000円台乗せも時間の問題か」という先高期待に満ちたスタートでした。事実、1月18日にザラ場ベースで2万4084円、23日には終値ベースでも2万4124円を記録します。しかし、それが天井となって急ピッチの調整を強いられることに。2月5日配信の「底割れ『NY666ドル安・日経600円安』で見えた日米株式市場が“向かう先” <株探トップ特集>」では、それまで長く上昇相場を主導してきた米国の“ゴルディロックス(適温)相場”が終わり、相場変調が一過性のものではない可能性について触れています。

1月23日以降の日経平均急落の直前には、何か予兆はあったのでしょうか。1月18日配信の「富田隆弥の【CHART CLUB】 『過熱に冷や水』」では、「テクニカルは過熱を強めている」「(外国人投資家は)一転して1兆150億円と大きく売り越しである」「為替が110円に迫る円高となり、業績やEPS(1株あたり利益)に対する過剰期待は注意信号を灯してきた」と、複数の要因を挙げて注意を促しています。上昇局面において「いつ天井を打つのか」を正確に予測するのは困難を極めますが、テクニカルの警告を無視せず下落に備えることが大切であると思い知らされます。

特に2018年、特徴的だったのは“アルゴリズムによる高速自動売買”の影響です。あらかじめプログラムされた基準に従って、コンピューターが人間には不可能な速度で大量の取引を行い、それによって上にも下にも「急激な一方通行」の相場となる現象が頻出しました。この傾向は2019年以降も続くものと思われますが、こうした自動売買が横行する相場では、テクニカル指標の重要性は以前より増しているのではないでしょうか。

●相場に横たわる“米中貿易摩擦”の重石

現在に至るまで世界経済に重くのしかかる“米中貿易摩擦”問題。その端緒となったのが、3月22日にトランプ米大統領が発表した中国への制裁関税です。この日、NYダウは前日比724ドル安、翌23日の日経平均は一時1000円を超える大幅安となりました。緊急特集した「開いたフタ――トランプ『米中貿易戦争』ショックで終わるもの <株探トップ特集>」では、この問題の背景や予測される影響について解説しました。3月時点での市場の見解は「これまでトランプ政権が上げた最大の成果は“株高”。中国との貿易戦争で、この成果を台無しにするとは思えない」と、貿易摩擦もある程度のところで落としどころを見つける公算が高いという楽観派が大勢でした。しかし、実際には2018年を通して度々顕在化しては下落圧力となる、やっかいな問題として市場に横たわることになります。

3月26日の安値2万0347円を底に日経平均は上昇を開始。4月3日配信の「新年度『ロケットスタート候補』10銘柄、点火直前テーマ株でGO! <株探トップ特集>」では、「米国株市場の変調は主にネット関連株や半導体関連などハイテクセクターへの売り圧力が下げを主導」「個人投資家の土俵である中小型株を中心に、テーマ株物色の動きが波状的に東京市場に押し寄せている」と、全体相場は不安定ながらも中小型材料株にチャンスが巡ってきていることを伝えています。

その後、市場のセンチメントも徐々に回復し、5月21日には再び2万3000円を奪回。そして5ヵ月間にわたる長いレンジ相場へと突入します。

●メルカリ、ソフトバンク……“IPO”が注目された2018年

ところで、昨年は“IPO”が注目された年でした。その発端となったのがHEROZ <4382> [東証M]。初値が公募価格の11倍と高騰したことで、後に続く有力IPO銘柄が注目の的となりました。特に6月は13社が上場と“IPOラッシュ”の様相。6月5日に配信した「2018年最注目『メルカリ』登場の6月IPO、“株高の年輪”刻むのは <株探トップ特集>」では、メルカリ <4385> [東証M]をはじめとするそれらの銘柄を特集しました。

しかし、メルカリは初日こそ一時ストップ高と人気を集めたものの、その後は軟調な展開を余儀なくされています。期待値が高すぎたがゆえに苦戦を強いられるというところにIPOの難しさがあるということでしょうか。記憶に新しい“過去最大規模”となったソフトバンク <9434> のIPOも、寄り付きから公募価格を下回る結果となっています。ソフトバンクのIPOについては12月19日配信の「裏切られた期待、ソフトバンクIPO“暴落スタートの深層”<株探トップ特集>」で詳しく分析しており、「例えば公開価格(1500円)がもし1300円であったなら売れ残りなど考えられず、人気が集中したはず」という声も紹介されています。

●フシ目突破に必要な歯車が噛み合う

9月の中旬から10月頭にかけて、ついに長いレンジ相場を上抜けする時がやってきます。それまで2万3000円の壁に4回もトライして失敗してきた鬱憤を晴らすような鮮烈な上昇となりました。上昇波を形成する最後の下値ポイント、2万2172円をつけた9月7日はどのような様子だったのでしょうか。9月9日配信(9月7日記)の人気コラム「【植木靖男の相場展望】 ─ 高値後6日連続安はなにを語る」では、「もはや年内の高値、つまり、1月のそれ(2万4129円)をもう抜けないのでは、といった絶望感が投資家の頭をよぎる」と表現しています。しかし植木氏は、その中に反転上昇の気配を発見し「これは下げ相場の最終局面かもしれない。注目したい」と指摘。見事予想を的中させました。2万3000円の壁へ5度目のチャレンジを開始した9月14日配信の「その変化は本物か――フシ目“2万3000円”突破と『秋高シナリオ』 <株探トップ特集>」では、レンジ突破に必要な状況が揃う直前の様子が記されています。

それら材料の歯車が見事に噛み合った結果、10月2日に日経平均は2万4448円と、27年ぶりの高値へと到達。しかし、記録はそこまでとなりました。急激な上昇の後にやってきたのは急激な下落。2万4000円は天井として意識されやすいといった面はありますが、暴落級の調整の直接的な原因は米国の金利引き上げ、そして市場の重石となり続けている“米中貿易摩擦懸念”でした。10月12日配信の「米中“新冷戦時代”の株価の行方――NYダウ連夜急落の意味するもの <株探トップ特集>」では、米中の貿易摩擦は“貿易戦争”の段階に来ているのではないかと論じています。この頃から米中問題はより深刻度を増していくことになります。

●米国経済の陰りを察知しはじめる市場

10月2日の高値2万2448円から、26日の2万0971円に到達するまでわずか1ヵ月足らずの間に、下落幅は3476円という猛烈な調整となりました。ここで改めて天井を打つ直前の記事を見てみると、10月高値への上昇も的中させた植木氏の9月23日配信のコラム「【植木靖男の相場展望】 ─ ここからは水準より日柄が大事」では、「皮膚感覚では、ここから買える時間はそれほど残っていない。むしろ、10月に入ってからは、どこかで高値を見極めるタイミングを探る段階か」と、天井が近いことを予見しています。テクニカル的にも、9月29日配信の「富田隆弥の【CHART CLUB】 『下値抵抗線を注視の10月相場』」で富田氏は「相場の基本は『流れに従え』であるから、いまのような強い相場では日足チャートに下値抵抗線を引いておき、それを割り込むまでは『買い姿勢』で泳がせばよい。だが、抵抗線を割り込むなら『要警戒』に姿勢を転ずることだ」と、リスクマネジメントの大切さを説いています。両氏にしてもここまでの暴落は予想外だったとは思いますが、調整に入るタイミングを的確に捉えていました。

10月16日配信の「“金”上昇の意外、市場が直視し始めたリスク要因 <東条麻衣子の株式注意情報>」で東条氏は、「来年の第2四半期以降の米国経済の減速を株式市場は織り込み始めたのではないかと考えている」と、これまで好調を維持してきた米国経済に懸念が生じていることを指摘。この頃から翌年の米国景気を不安視する声が聞かれるようになります。10月26日配信の「暴落の連鎖――止まらない世界株安は“終わりの始まり”なのか <株探トップ特集>」でも、日米ともに企業業績の先行き懸念が表出し始め、長期トレンドが転換した可能性について論じています。

●驚愕の年末大暴落、“首の皮一枚”の2万円大台死守

日経平均は10月26日の安値2万0971円を底としたレンジ相場を形成。そのなか、12月2日に開催された米中首脳会談で両国の歩み寄りが見られ、貿易摩擦懸念は一時後退。いよいよ年末ラリーへの期待が高まってきたかにみえました。しかし、その時点で下旬に訪れる下落の展開を予想していたのが、相場観特集で話を伺ったブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏です。12月3日配信の「馬渕治好氏【日経平均の上昇加速、年末ラリー突入の確度】(1) <相場観特集>」で馬渕氏は、「2番天井形成から再び下値を探る展開が想定され、来年前半までに日経平均は2万円大台を割り込むような深押しもあり得るとみている」と指摘。その後の展開をピタリと言い当てました。

日経平均は下値のメドとして意識されてきた2万0971円どころか3月26日安値の2万0347円までも割り込んで下落。12月21日配信の「『暴落の連鎖』日経平均2万円割れ寸前、年末大波乱相場とその行方<株探トップ特集>」では、世界景気の減速懸念がいよいよ顕在化してきた様子を伝えました。更に12月25日には日経平均は1010円安で2万円割れ、市場は総悲観となりました。

ただ、12月28日に日経平均は2万円台を回復、アルゴリズム売買による“一方通行相場”の特徴がここでも見られます。アルゴ取引の弊害は2019年も続くものと思われますが、投資家はこの値幅感に慣れていく必要があるのでしょう。28日の大納会でも2万円割れの展開となるも、引け際に買いが入り“首の皮一枚”残して2万円大台を死守、2019年へと希望を繋ぎます。

こうした状況を踏まえ、2019年の日本市場はどのような展開となるのでしょうか。株探では年末年始の期間、特別企画を数多く配信しています。2018年をまとめたランキング記事や識者による有望株紹介、市場予測など、読みごたえのある記事が目白押しとなっています。これらを2019年相場に臨むための準備にぜひご活用ください。

★元日~3日に、2019年「新春特集」を一挙、“26本”配信します。ご期待ください。

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