複雑さ増す米国とサウジ、原油価格・イラン巡って協調と対立 <コモディティ特集>

特集
2019年3月20日 13時30分

昨年から米国が始めた対イラン制裁で、石油関連の制裁は180日間に限って一時緩和されているが、5月初めにはこの緩和期限が終了する。中国や、韓国、インドなど8カ国がイランから今後も原油輸入を継続できるのかが焦点である。

●イランの原油輸出をゼロにする必要性は乏しい

ロイター通信が関係筋の話として伝えたところによると、米国はイランの輸出量を日量100万バレル未満に削減することを検討しているもよう。現在のイランの輸出量は日量125万バレル程度。

トランプ米政権は経済制裁によって最終的にイランの生命線である原油輸出をゼロにし、一段と追い込む方針である。イランの核・ミサイル開発を制限し、シリアなど紛争地域への介入を停止させることが、米国の対イラン制裁の目的である。ただ、今のところ、イランが制裁の取り下げを米国に求める兆候はみられない。

原油高を抑制することを米国が優先するならば、石油制裁の緩和を続けることが妥当である。米国はイラン経済の弱体化に成功しており、イランの原油輸出をゼロにする方針を実行する必要性は乏しい。米国も含めて世界経済は減速していることから、対イラン制裁の強化によって原油高という無用な向かい風を発生させることはないと思われる。夏場にかけては例年のようにガソリン需要が増加するため、米国では改質ガソリンの価格がすでに上向いている。

●米国とサウジの関係に変化

石油輸出国機構(OPEC)プラスは少なくとも6月まで日量120万バレルの協調減産を維持し、それ以降も供給を絞る可能性がある。トランプ米大統領は原油高やOPECの減産をけん制し続けているが、サウジアラビアを中心とした産油国が米国の意向を汲む兆しは今のところみられない。サウジと米国の間柄は昨年とは変わってしまったようだ。

2018年、米国はイランの原油輸出をゼロにする方針を掲げ、イラン制裁を開始した。サウジを中心とした産油国はイランの減産を穴埋めするように増産したが、米国はイランの原油輸出を一部許容し、昨年末にかけての原油安を後押しした。イランとサウジはイエメンで代理戦争を繰り広げるなど、中東の覇権国を巡って勢力争いを続けており、サウジとしてはイランを弱体化させようとする米国に協力する意味合いもあったが、当時の増産は米国に利用された印象がある。

ジャーナリストであるカショギ氏殺害事件を巡って、米国は国際的に非難を浴びたサウジを擁護する反面、サウジが舵取りを行うOPECには石油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法案を利用しつつ圧力をかけ、対イラン制裁については原油高を抑制する手段として利用するなど、関係性は友好的であり、敵対的でもあり、関係性は一様に表現できない。

●念のため荒れ相場に備えを

原油高を抑制しようとする米国と、現状の水準に満足できないサウジに溝が生じている可能性が高く、世界経済の不透明感もあって需要期の値動きはかなり見通しにくい。トランプ米大統領がこれまでのように口先介入を繰り返すとは思えない。最近の値動きは落ち着いているが、念のため荒れ相場に備えたほうがよさそうだ。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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