金は値固め、中銀の買いなどが下支え <コモディティ特集>

特集
2019年4月10日 13時30分

の現物相場は世界的な景気減速懸念を受けて3月25日に1,324.13ドルまで戻したが、ドル高や株高をきっかけに戻りを売られて軟調となり、同月28日に1,300ドルの節目を割り込んだ。米中の通商協議が継続され、先行き期待を背景に金ETF(上場投信)から投資資金が流出したことも圧迫要因になった。ただ1,280ドル付近では安値拾いの買いが入って下げ一服となった。中国の金準備が4カ月連続で増加しており、世界の中央銀行の金買いなどが下支えになった。ユーロ圏の景気減速や英国の欧州連合(EU)離脱の先行き不透明感でドルが買われやすいが、一部の経済指標が改善し景気減速懸念が後退しており、ドル安に転じると、金は堅調に推移するとみられる。

●米中の通商協議が最終局面

米中の通商協議が続き、ムニューシン米財務長官とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表らが3月28日に北京を訪問した。翌週には中国の劉鶴副首相がワシントンを訪問し、米交渉団およびトランプ大統領と会談した。カドロー米国家経済会議(NEC)委員長は5日、米中通商協議がテレビ会議形式で来週も継続すると明らかにしており、協議は最終局面を迎えている。ただ、ホワイトハウスのウィレムス通商担当顧問は8日、前週の米中通商協議で進展があったとした一方、合意の障害となっている問題の中には米国として「まだ満足していない」ものがあるとの認識を示しており、今週の協議でまとまるかが目先の焦点である。

合意期待を受けて株高に振れるなか、金ETF(上場投信)から投資資金が流出し、圧迫要因になった。一方、米中の通商協議が合意に達すると景気の先行き懸念が後退し、ドル安に振れるとみられ、金は下げ止まる可能性が出てくる。また米国は欧州や日本との通商協議を開始する予定であり、貿易摩擦に対する懸念が再燃するかどうかが次の焦点である。

●3月の米雇用統計で景気減速懸念が後退

米経済指標では、2月の米雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが大幅に鈍化し、景気減速懸念が強まった。非農業部門雇用者数は2万人増と事前予想の18万人増を大幅に下回り、2017年9月以来の小幅な伸びとなった。しかし、3月の同統計で非農業部門雇用者数が19万6,000人増と事前予想の18万人増を上回ると、景気減速懸念が後退した。

ただ、時間当たり賃金が前月比0.1%増と前月の0.4%増から伸びが鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ休止観測が強い。

トランプ米大統領は5日、米金融当局は利下げし、バランスシートの縮小をやめるべきだと主張しており、けん制発言が続くと、ドル安要因となる可能性も出てくる。

●英国のEU離脱の行方とポンドの動向も焦点

英国の欧州連合(EU)離脱で英下院がメイ英首相の離脱協定案や代替案を否決し、先行き不透明感が残っている。「合意なき離脱」阻止に向けた法案が成立し、混乱は回避されるが、目先はEU離脱が6月30日か1年延期の間で調整とされている。トラス英財務副大臣は「柔軟な延期とは、私には苦行のように聞こえる。英国は既にかなり長期にわたり中途半端な状態が続いている。企業は投資を抑制し、国全体に政治懸念が広がっている」と述べており、EU離脱の行方と ポンドの反応も当面の焦点である。

●中国の金準備が4カ月連続で増加

3月末の中国の金準備は1,885.5トンとなり、前月比11.2トン増加した。2月は9.95トン、1月は11.8トン、昨年12月は9.95トン増加し、4カ月連続で増加した。世界の中央銀行が今後も金準備を増加させるとみられており、金の支援要因である。

金の内部要因では、金ETF(上場投信)から投資資金が流出し、圧迫要因になった。世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は1月31日時点の823.87トンが当面のピークとなり、4月8日時点で760.49トンに減少した。2月の米雇用統計が弱い内容となり、投資資金が戻る場面も見られたが、ドル高・株高に振れると、再び売られた。

ただ、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ休止観測などが下支え要因であり、ドル安に転じた場合の投資資金の動向を確認したい。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは3月12日時点の7万8,819枚を目先の底として拡大に転じた。4月2日時点は9万4,556枚となっている。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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