原油、混迷深まるリビア・ベネズエラ、焦点はイラン制裁に <コモディティ特集>

特集
2019年4月17日 13時30分

ブレント原油やウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)など指標となる 原油価格が上昇している。ブレント原油は節目の70ドルを超えた。世界的な景気減速に伴う石油需要の下振れ懸念がやや後退していることや、石油輸出国機構(OPEC)を中心とした産油国の減産など、原油高の背景は多岐にわたるが、産油国の政治・経済の不安定さや、米国の経済制裁によって騰勢が強まっている。

●リビアは2011年以来の混乱状態に

地中海の南側に位置するリビアでは、国連が認めた国民合意政府(GNA)があるトリポリに向けて、ハフタル司令官率いるリビア国民軍(LNA)が進軍し、攻撃を開始した。昨年予定されていた議会・大統領選は今年に延期されたが、状況としては選挙どころではなく、リビアは2011年の内戦以来の混乱にある。

2011年はカダフィ政権が崩壊した年である。混乱期を経てリビアの原油生産量は安定化する傾向にあるが、再び不透明感が強まっている。リビア国営石油会社は、石油や天然ガスの輸出は2011年の内戦以来最大の危機に直面しているとの認識を示している。3月のリビアの原油生産量は日量109万8000バレル。

●体制転換に揺れるアルジェリア

リビアの隣国であるアルジェリアでは、既存の体制転換を要求する市民の抗議デモが続いている。1999年から長期的に政権を維持したブーテフリカ大統領が大統領選の出馬を辞退したうえ、任期満了を控えて辞任した後も、自由な民主主義を求める怒りは収まっていない。

同国の象徴だったブーフテリカ氏が政権を去り、7月4日に大統領選が行われることになったとはいえ、軍部を含めてアルジェリアの支配層全体が変わらないことには失業など経済問題は解決されないとみられている。3月のアルジェリアの原油生産量は日量101万8000バレル。

●ベネズエラは更なる減少へ

ベネズエラでは生産量が節目である日量100万バレルを下回り、3月は同73万2000バレルまで減少した。石油関連施設への設備投資不足のほか、米国の制裁によって生産量の減少が止まらない。米国を中心とした西側諸国は、野党のグアイド国会議長を暫定大統領として認め、マドゥロ政権を追い詰めている。

ただ、ロシアから支援を受けていることもあって、マドゥロ政権が転覆しそうな気配はない。ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)の資金不足から、生産量はさらに細っていくだろう。

以上のOPEC加盟国は、足元の原油価格を強く押し上げている。アルジェリアはともかく、ベネズエラやリビアには供給途絶リスクが少なからずある。OPECを中心とした産油国が日量120万バレルの協調減産を6月も続けるのであれば、原油価格は一段高となり得る。

●焦点は米政権のイラン制裁に

イランの生産量も不透明である。トランプ米政権は昨年からイラン制裁を再開したが、原油高を警戒して石油制裁に関しては180日間の緩和期間を設けた。8カ国にイランから原油を輸入し続けることを容認している。3月のイランの輸出量は日量100~110万バレル程度と報道されている。ただ、緩和期限は来月初めに終了する。トランプ米政権がイラン産原油の輸出をゼロにするという方針をあらためて打ち出すと、ほぼ間違いなく相場は暴騰する。

マーケットの反応は見通しにくいが、日量100万バレル程度の輸出を引き続き許容する措置をとるにしても、原油高けん制を繰り返すトランプ米大統領が発言とは裏腹に原油高を容認していると受け止められかねず、騰勢を煽るリスクがある。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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