脱炭素社会へ活用必須、関連予算増で飛躍期待の水素関連株 <株探トップ特集>

特集
2019年9月19日 19時30分

―経産省、FCVや水素ステーション支援拡大で市場さらに成長へ―

経済産業省が8月末にまとめた2020年度の概算要求は、19年度の当初予算に比べて15.1%増の1兆4292億円となった。このうち「エネルギー転換・脱炭素化の推進」では同13.2%増の5015億円を求め、なかでも燃料電池車(FCV)などの燃料となる水素関連の予算額は同34.1%増の807億円に拡大した。予算には、FCVや水素ステーション の支援拡大、次世代燃料電池の技術開発が盛り込まれており、関連銘柄の追い風となりそうだ。

●温暖化抑制の切り札

水を電気分解してつくる水素は燃やしても水が出るだけで、二酸化炭素(CO2)を排出しないことから環境への負荷が小さく、「究極のクリーンエネルギー」とされる。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、地球の気温上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えることが定められ、世界的に脱炭素の流れが強まるなか水素の重要性は一段と高まっている。日本でも政府が今年6月に、国内で排出される温暖化ガスを今世紀後半の早い時期までに実質ゼロにすることを閣議決定しており、経産省の概算要求は水素社会実現に向けた取り組みの強化を反映するかたちとなった。

概算要求では、世界に先駆けてFCVや電気自動車(EV)の国内市場の確立を図ることを目的に200億円(19年度当初予算は160億円)が計上されたほか、水素ステーションの整備加速に向けて130億円(同100億円)を要求し、20年度に160ヵ所程度、25年度に320ヵ所程度とする設置目標を達成する構えだ。また、FCVや定置用燃料電池の低コスト化・高効率化・耐久性向上につながる材料開発の予算として新たに75億円を求め、水素の製造・輸送・貯蔵・利用に至るサプライチェーン構築などにも予算が割り当てられた。

世界的に環境規制が強まるなか、これまではリチウムイオン2次電池やEVが脚光を浴びる場面が多く、燃料電池やFCVは押されている感が否めなかったが、政府の姿勢が明確になったことから再び注目を集めることが予想される。25日には経産省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催する「水素閣僚会議2019」が開催されるタイミングでもあり、関連銘柄から目が離せない。

●トヨタは東京五輪にFCVを提供

FCVの先駆者といえばトヨタ自動車 <7203> で、14年12月から元町工場(愛知県)で「MIRAI」の生産を開始し、今年6月には生産累計1万台を達成している。17年から中国でMIRAIの実証実験を開始するなど、グローバル規模での普及拡大にも注力。20年に開かれる東京オリンピック・パラリンピックでは約500台を提供する予定で、世界に向けて技術力をアピールする場となる。

●岩谷産は水素ステーションを展開

FCV普及のカギを握る水素ステーションは、エア・ウォーター <4088> 、出光興産 <5019> 、JXTGホールディングス <5020> 、岩谷産業 <8088> 、東京ガス <9531> 、東邦ガス <9533> などが展開している。

また、水素製造装置を製造している三菱化工機 <6331> 、水素ステーションの基幹設備である水素圧縮機を手掛けている加地テック <6391> [東証2]、水素ステーション用バルブを販売しているキッツ <6498> も関連銘柄だ。

●特殊陶は燃料電池関連の合弁設立へ

燃料電池関連では、三浦工業 <6005> が10月から業務用4.2キロワット固体酸化物形燃料電池システム「FC-5B型」を販売する計画で、日本特殊陶業 <5334> と三菱日立パワーシステムズ(横浜市)は10月1日付で燃料電池の発電要素である円筒セルスタックの製造・販売を行う合弁会社を設立する予定。

これ以外では、日清紡ホールディングス <3105> は燃料電池に使われる触媒を高価で希少な白金から炭素を主原料とするカーボンアロイ触媒に置き換える研究開発を進めているほか、AGC <5201> は科学技術振興機構(JST)と共同で耐久性5倍の無補強高性能電解質薄膜を開発済み。エノモト <6928> は山梨大学と共同研究を行っている「固体高分子形燃料電池用新型セパレータの研究開発」が学術論文として掲載された実績を持ち、山王 <3441> [JQ]は産業技術総合研究所(AIST)と高強度の水素精製用パラジウム銅合金を電解めっきで簡単に合成(成膜)できる技術を既に開発している。

●澤藤電の水素製造装置に注目

水素のサプライチェーン構築では、澤藤電機 <6901> に注目したい。同社は6月に、岐阜大学との共同研究で開発してきた、プラズマを用いた水素製造装置「プラズマメンブレンリアクター」の水素製造量を従来と比較して倍増させることに成功したと発表。これはアンモニアを原料にして水素を製造することから、CO2フリーの水素社会実現に向けた技術として関心を集めている。

JXTGホールディングス傘下のJXTGエネルギーと千代田化工建設 <6366> [東証2]、東京大学、クイーンズランド工科大学は3月、オーストラリアでCO2フリー水素を低コストで製造し、日本に運搬して利用する実証実験に成功したと発表しており、今後の展開が期待される。

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