明日の株式相場戦略=材料株人気が佳境入り、全体観では潮流に変化
名実ともに下期相場入りとなったきょう(1日)の東京株式市場で日経平均は反発に転じ、幸先の良いスタートとなった。トランプ米政権の対中証券投資抑制や中国企業の米株市場への上場廃止検討の報道は、米政府高官が火消し役を務め、米国株市場はNYダウ、ナスダック総合指数ともに下放れを回避。これに足もと外国為替市場でのドル高・円安も加わって、東京市場も3日連続安を逃れた。前日までに日経平均の日足チャートは高値圏での三羽烏を示現、弱気の虫がうずく場面だっただけに、ここでの踏ん張りは意義が大きい。
ただ、全体相場の潮目が静かに変わりつつある印象は拭い切れない。10月は高変動月というイメージが投資家の脳裏に刻み込まれている部分もあるが、9月が想定以上に強かっただけに本能的に身構えてしまうのは当然ともいえる。また、そのスタンスについては、結果がどうあれ決して間違いではない。
足もとの外国為替市場と株式市場の動きはリスクオンだが、資金の流れに大きな変化が生じている。それを映しているのが債券市場。中心限月の12月物がきょう日中取引終値で88銭安の154円14銭と急落した。10年債入札の不調が取り沙汰されている。日銀の急ピッチな債券買い入れ減額が債券市場の先安感をもたらしているが、これは換言すれば金利の先高思惑であり、市場では「世界的な緩和競争が繰り広げられているなか、日本だけ逆行しているという印象が強まりかねない」(国内ネット証券アナリスト)と指摘する。むろん、これは為替市場で円が買われる背景となる。現状はその気配がないが、仮に今後ドル売り・円買いに反映されるようになった場合、円高・株安のリスクオフの歯車が一気に回転を始める可能性も否定し得ない。今月下旬から3月決算企業の中間決算発表が本格化するが、為替が絡むとなるとタイミング的に警戒しておかなければならない。
全体観と少し離れた位置にある材料株の物色人気はむしろ佳境にある。個別では、ジオスター<5282>が満を持して上放れ、きょうは一時15%以上の上昇で356円まで上値を伸ばす場面があった。トンネルの内壁材であるセグメントでトップシェアを誇り、地下河川や共同溝向け土木製品も展開することで、豪雨対策関連や国土強靱化関連の一角として頭角を現してきた。これまで株価は業績悪の呪縛で下値を探ってきたが、今期収益底入れとなるのであれば、大勢波動のベクトルの向きが変わることに違和感はない。このほか、国土強靱化関連では日本ヒューム<5262>が値刻みこそ小幅ながらジリジリと水準を切り上げている。コンクリート2次製品を手掛けていることが共通項である両銘柄に継続的な投資マネーが流入している。
一方、値動きの大きいゲーム関連株だが、目先は需給主導の展開で、通常ファンダメンタルズ面で買いにくい銘柄ほど戻り売り圧力がなく大きな値幅を出す傾向がある。しかし、株式需給というのは、秋の空のように色模様が変わりやすい。業績内容に買いの根拠を見いだせればそれに越したことはない。ゲーム関連として新しいところでは、20年5月期に営業利益2.7倍、最終黒字化を見込むサイバーステップ <3810> はどうか。前期はコスト負担が先行したが、クレーンゲームアプリ「トレバ」の増台効果による収益貢献が期待される。
目立たないがここ連日下値を切り上げているエムケイシステム <3910> もマークしておきたい。きょうの終値は奇しくもサイバーステップと同値。制限値幅が一気に広がる1000円絡みは投資マネーの食指を動かすポジションではある。同社は社労士向け保険申請システムの開発販売を手掛けるが、クラウドサービス市場の拡大に乗って業績を伸ばしている。20年3月期第1四半期営業利益は前年同期比3.6倍、通期では前期比13%増益見通しにある。小型株で通常薄商いだが、信用買い残も枯れた状態で、品薄感が株高思惑を助長するケースも考えられる。
また中低位株では、光ビジネスフォーム <3948> の上値が軽い。コンピューター関連の情報用紙を製造・販売する。ペーパーレス化の流れ自体は収益環境に向かい風だが、デジタル化が進展しても情報を紙に落とすニーズが消えることはなく、当面は消費税引き上げに伴う特需も意識される場面。一方、データ入出力サービスが時流に乗って利益に貢献しており、19年12月期は営業43%増益を見込んでいる。配当利回りが4.3%と非常に高いにも関わらず、PBR0.3倍台は大幅な水準訂正余地がある。
日程面では、あすは9月の消費動向調査。また、東証2部にレオクラン <7681> が新規上場する。海外では9月の米ADP全米雇用リポートが発表される。なお、中国市場とインド市場は休場となる。(中村潤一)
最終更新日:2019年10月01日 18時57分