安倍政権が対策に本腰、「水害対策」関連で浮上する“救世銘柄”精選 <株探トップ特集>

特集
2019年11月11日 19時30分

―大規模な河川の決壊や氾濫で早急な対策が必至、注目される有力株をクローズアップ―

相次ぐ大型台風や豪雨による未曽有の災害が、日本列島に甚大な被害を及ぼした。大規模な河川の決壊や氾濫が各地で発生したことで、早急かつ抜本的な 水害対策が求められている。安倍首相は8日の閣議で、水害対策を中心とする 防災・減災を含む新たな経済対策の策定を指示した。国土強靱化を更に推し進める決意を明らかにしており、今回の 台風被害を受け、水害対策に向けた動きは一段と加速することになりそうだ。

●台風被害で高まる防災・減災の動き

2016年8月以来となる包括的経済対策は、ここにきての景気低迷に備えるものだが、甚大な台風被害を受け、河川堤防の強化など水害・治水対策もその柱の一つとして取り上げられる。地球規模となる気候変動の影響は、巨大台風などによる水害の危険性を更に増幅すると予想されるだけに、災害へ向けての対策の重要度は増す一方だ。

株式市場でも、今秋の台風被害を受けさまざまな災害対策関連にスポットライトが当たった。9月9日早朝、関東に上陸した台風15号は、電線や電柱を壊滅的な状態に追いやり、千葉県を中心とする大規模停電を発生させたことで、改めて「電線地中化」関連株に目を向けさせることになった。更に、19号が猛威を振るい河川の氾濫、決壊、土砂災害などが各地で発生。続く21号に伴う記録的な豪雨は、傷の癒えぬ被災地を再び襲った。相次ぐ被害に防災・減災事業を展開する「建設コンサルティング」関連株も急動意、その役割の大きさが意識されることとなった。こうしたなか、今回の新たな経済対策の柱の一つとして災害対策が急浮上したことで、「水害」「治水」へ向けての取り組みに改めて関心が集まりそうだ。

●技研製は「インプラント堤防」で関心

台風19号では、河川の堤防決壊、氾濫による多くの浸水被害が発生。かさ上げ、拡幅などといった堤防整備が求められることになる。ただ、今回の水害により、その脆弱さが露呈することになった対象河川は広範囲にわたるため、莫大な経費と時間がかかることが想定されるだけに簡単ではないことも事実だ。

堤防強化では技研製作所 <6289> の「インプラント堤防」に注目が集まっている。インプラント堤防は、鋼矢板・鋼管矢板といった鉄製の杭による連続壁で堤防を補強し、越水・浸透・浸食による堤防の崩壊を防ぐというもの。台風被害に加え、地震や津波が想定される海岸や河川に構築、または既存堤防を補強することで、被災時の損壊を防ぎ、被害を最小限に食いとめることができる。このほかにも、状況に応じたさまざまな護岸工事を提案しており、水害対策が進むなか活躍場面が広がりそうだ。同社は、10月10日の取引終了後に20年8月期連結業績予想を発表。売上高が前期比11.0%増の360億円、営業利益が同3.2%増となる69億円と増収増益で連続営業最高益更新を見込む。国土強靱化や港湾・道路事業などでインプラント工法の採用が全国に拡大しており、売上増で販管費の増加などを吸収する見通しだ。株価も好調、前週末の8日には4110円まで買われ年初来高値を更新している。

●護岸で力発揮する不動テトラ

不動テトラ <1813> にも期待が高まっている。同社は地盤事業に加え、「テトラポッド」に代表される消波ブロックで知られるが、さまざまなニーズに対応することで、海岸に加え河川の堤防、護岸などでも力を発揮している。同社が前週末8日取引終了後に発表した19年4-9月期決算は、営業利益が前年同期比23%増の23億3200万円と大幅な伸びを示した。高水準の公共投資を背景に売り上げを伸ばし、利益面では工事採算も改善している。手持ち受注高も高い水準を維持しており今後にも期待が大きい。10月30日にマドを開けて戻り高値1592円まで買われた後、目先筋の利益確定売りをこなしていたが、きょうは買い優勢で戻り高値払拭のタイミングをうかがう。

●日特建は営業利益67%増と絶好調

また、特殊土木大手で、ダム基礎、地盤改良など主力とし、環境・防災に強みを持つ日特建設 <1929> も8日取引終了後に19年4-9月期決算を発表。営業利益が前年同期比67.3%増の18億3400万円と絶好調、会社側の事前予想から上振れて着地した。売上高を好調に伸ばすなか、大型工事の利益率改善が営業利益を押し上げる形となった。株価はきょう、これを評価する形で急反発し年初来高値を更新している。そのほかでは、斜面・のり面対策で実績を持ち、護岸整備、杭工事や、河川、海岸工事などでも経験豊富なライト工業 <1926> や、河川護岸材を扱う前田工繊 <7821> にも目を配っておきたい。

●「アクアード」で文化シヤタ

堤防強化は水害対策の基本といえるが、近年の想定を上回る台風やゲリラ豪雨は人智を超え浸水被害に備えることも重要課題となっている。都市部の浸水被害で効力を発揮するのが、建物の入り口に水を遮断する器具を設置することで浸水を防ぐ、いわゆる「止水板」だ。もちろん、今回のような大規模浸水に対応することは難しいものの、地下鉄や地下部分での商店、事業所が増加するなか、一定程度とはいえ浸水を防ぐ止水板の重要度は増している。

止水板では、シャッターを手掛ける企業が牽引している。なかでも文化シヤッター <5930> は、開口部に金具で固定するだけで簡単に取り付けができ、急な増水時もスピーディーに設置することで浸水被害を低減する「止水マスターシリーズ」を手掛ける。同社では「止水事業については需要が拡大するとみている」(広報室)と話す。また注目したいのが、水深3メートルまでに対応した止水ドア「アクアード」だ。スチールドアの操作性はそのままに高い止水性能を発揮するという。「アクアードは、建造物に設計の段階から設置を計画してもらうことになる。既設のものでも対応はできるが、躯体の工事が必要になってくる。今後、認知が高まるなかで、引き合いが活発化してくると考えている」(同)。同製品は地下への浸水にも効果的で、建物の多くが電気設備を地下に設置するなか関心を集めている。また、水密扉と比べて低予算で対策を図れることも魅力だ。

●浸水排出でポンプの鶴見製

浸水は家屋・家財などに大きな被害を与えるほか人命にも関わるが、復旧・復興活動を速やかに進めるためには早急な水の排出が求められる。こうしたなか、水を排出する水中ポンプを手掛ける鶴見製作所 <6351> への期待感は強い。会社側では「昨年の西日本豪雨では、洗浄ポンプ、排水ポンプが活発に動いたのは事実だ。復旧・復興のためにポンプの需要は高まるとみているが、今後は、防災・減災用途においても重要な役割を担うと考えている」と話す。復旧・復興、防災・減災それぞれの分野で排水ポンプの重要性が高まっている。

国土の強靱化はいまや国家的命題であり、更なる防災・減災の視点からの社会資本整備が求められており、建設コンサルタントの役割は一段と大きくなりそうだ。アジア航測 <9233> [東証2]、いであ <9768> など建設コンサルに関心が高まっているが、加えて防災コンサルで実績豊富な応用技術 <4356> [JQ]にも引き続き活躍期待が高まりそう。応用技術は7日取引終了後、19年1-9月期決算を発表。営業利益が前年同期比2.6倍の6億7100万円と急拡大、通期計画の6億3000万円(前期比91%増)を既に超過している。

水害対策に絡む銘柄は多岐にわたるが、総じて業績も好調だ。株価もほぼ8月中旬を底に切り返して、ここ新高値圏に位置している銘柄が多い。防災・減災の動きが株価を後押しする格好となっている。気候変動により更なる想定を超える自然災害の発生が予想されるなか、まさに「水害対策待ったなし!」の状況だ。

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