新春3大テーマ (1) イベント編 「東京五輪関連で浮上する有望株を総検証」 <株探トップ特集>

特集
2020年1月4日 19時00分

―全国で32兆円の経済波及効果、商社、小売、建設などへの恩恵大―

2020年のビッグテーマとして外せないのが、「東京オリンピック・パラリンピック」の開催である。メインスタジアムとなる国立競技場(オリンピックスタジアム)は、36ヵ月の工期で累計150万人の作業員が働き、昨年11月末に完成した。東京オリンピックの開会式は20年7月24日に行われ、8月9日まで世界各国の代表選手の熱戦が行われる。また、東京パラリンピックは、8月25日から9月6日まで開催される予定である。

改正東京五輪・パラリンピック特別措置法によって、1年限りで祝日も移動されることになる。10月第2月曜日の祝日である「スポーツの日」(現在は体育の日)は、7月24日の金曜日に移動。7月の第3月曜日の祝日である「海の日」は、7月23日の木曜日。8月11日火曜日にあった「山の日」は1日前倒して8月10日月曜日に移動する。これにより開会式とその前後が4連休(7月23~26日)、閉会式とその前後が3連休(8月8~10日)となる。観光客の増加などによる首都圏の交通混雑を緩和するため、祝日化で通勤・通学などの量を抑えるのが狙いとされる。

●大会後10年までで経済波及効果は32兆円

オリンピック・パラリンピック準備局によると経済波及効果(試算)は、13年(招致決定年)から30年(大会10年後)まで、東京都で約20兆円、全国で約32兆円とみている。雇用誘発数は、東京都で約130万人、全国で約194万人と試算している。

また、東京都の需要増加額は、恒久施設整備費などの施設整備費、仮設施設整備費、エネルギーインフラ、輸送、セキュリティー、テクノロジーなどの大会運営費、その他、大会参加者・観戦者支出、家計消費支出、国際映像制作・伝送費、企業マーケティング活動費などの直接的効果が1兆9790億円。新規恒久施設・選手村の後利用、大会関連交通インフラ整備、バリアフリー対策やスポーツ、都民参加・ボランティア、文化、教育・多様性のほか、経済の活性化・最先端技術の活用への取り組みといったレガシー効果で12兆2397億円を見込んでいる。

1964年の東京大会のレガシー(道路、鉄道など)は現在でも活用されているが、成熟が進んだ現在の日本で開催される20年大会では、1964年大会とは別の形で課題を克服し、新たな成長につながるモデルの提示が求められている。1964年と来年予定の東京五輪を比べると、それぞれ1年前の日本経済の状況では、景気は総じて拡張・回復局面にある。しかし、前回は高度成長期で成長率が高かったため、五輪後に景気が落ち込んだ。今回はこうした景気失速の回避に向けた対応が焦点となる。そのため、来年の東京五輪後に景気が落ち込むとの懸念は根強い。五輪景気が終わって、不動産価格も暴落するのではないかと懸念する声も聞かれている。

●ロンドン五輪との比較でみる東京五輪

日本と同じく先進国で開催された12年のロンドン五輪を参考にすると、経済波及効果は開催都市であるロンドン地域が当然最大であるが、南東部、イングランド東部、ウエスト・ミッドランズ、スコットランド、ヨークシャー・アンド・ザ・ハンバー、イースト・ミッドランズなどへも波及効果がみられた。特に開催都市の隣接地域においては、開催都市の半分から3分の1程度の波及効果があったとみられている。

20年の東京五輪・パラリンピックにおいても、隣接地域である関東圏にも一定の効果が及ぶと予想される。また、ロンドン五輪は、環境に配慮した都市型オリンピックを目指したほか、競技施設などをロンドン東部のストラトフォード地区に集中させ、新設されたのは34ヵ所の競技施設のうち9ヵ所だった。ロンドン以外で開催された競技においても、原則として既存施設が活用されており、こういった点も東京五輪と同様といえる。

なお、ロンドン証券取引所(LSE)におけるFTSE100種総合株価指数は、12年5月の5300ポイント前後を底に、15年5月には7000ポイントに迫る上昇トレンドを描いている。

業種別にみた経済波及効果として恩恵を受けたところでは、「卸売・小売」がトップであり、「専門・科学・技術サポート」、「事務管理サポート」、「建設」が上位となる。そのほか、「製造」、「飲食店・宿泊」、「運輸」、「芸術・娯楽」などが続いている。「卸売・小売」については、ロンドンを訪れた観光客によって消費が押し上げられた格好だ。「専門・科学・技術サポート」は技術コンサルやシステムデザイン、広告が含まれており、特に広告ビジネスによる寄与が大きい。「事務管理サポート」は、警備や広告代理店などが含まれ、「建設」は関連施設建設となる。

●建設はゼネコンと土木系企業に視線

今回の東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる国立競技場は昨年11月末に完成。設計変更に伴う修正などを行う契約で工事が開始されたが、最終的に上限とされていた額を21億円下回る1569億円となった。従来の五輪メインスタジアムの総工費は、リオが約550億円、ロンドンが約800億円、北京が約500億円、アテネが約350億円とされており、それに比較すると破格の高額だが、厳しいとされていた36ヵ月の工期での完成により、日本の技術の高さが示されたことになる。メインスタジアムの完成により、株式市場においては建築セクターに対していったん材料は出尽くしとみられる可能性もある。しかしながら、東京五輪終了後にも首都高速の地中化(日本橋再開発)や前回の1964年に進められたインフラの老朽化による整備需要が待ち構えており、株価の調整局面においては冷静に押し目を拾いたいところだ。

建設セクターでは、大成建設 <1801> などの大手ゼネコンから、インフラ補修などを得意とする土木系企業に関心が向かいやすい。ショーボンドホールディングス <1414> は、インフラ構造物の総合メンテナンス事業を展開しており、注目されるのはトンネルはく落対策と壁高欄補修の分野となる。日特建設 <1929> は、環境防災、維持補修、都市再生分野などの専門工事に特化した大手特殊土木会社。不動テトラ <1813> は陸上土木では、道路・鉄道など交通から、ダム・河川・上下水道などの防災施設。海洋土木では、防波堤、岸壁などの港湾・漁港施設、護岸、離岸堤などに多くの実績を持つ土木会社だ。

その他、場所によっては堤防のかさ上げや水門などの耐震対策などを推進するなど、局地的な大雨などに対応する施策も取られる。昨年は大型台風が相次ぐなど自然災害が猛威を振るったこともあり、より強固な対策が講じられる。NJS <2325> は上下水道を中心とする水インフラ整備のコンサルティングを手掛けており、リアルタイム浸水対策システムの需要などが見込まれる。

●交通インフラ整備では京三、信号などに注目

東京五輪開催に向けたインフラ整備が進められているが、一段と本格化する分野としては交通インフラ整備となろう。現在、着々と整備されているのが鉄道ホームに設置されているホームドアであり、東京五輪開催までに首都圏のホームのほぼ全てにホームドアが設置される計画だ。 ホームドアでは、京三製作所 <6742> 、日本信号 <6741> 、ナブテスコ <6268> 、高見沢サイバネティックス <6424> [JQ]、日立製作所 <6501> 、川崎重工業 <7012> 、神戸製鋼所 <5406> 、三菱重工業 <7011> 、東鉄工業 <1835> などとなり、シェア的に業績寄与が大きいとみられるのは、京三製作所と日本信号辺りになりそうである。

日本信号は信号機に小型カメラを内蔵した信号機を手掛けており自動運転バスなどに情報を伝達するほか、信号機メーカーは5Gの中継器としての需要が期待されている。その他、輸送面ではJR東日本 <9020> 、JR西日本 <9021> 、JR東海 <9022> など主要鉄道各社のほか、東京都心と臨海地区を結ぶ交通システム「東京BRT」を運行する京成バス(京成電鉄 <9009> )なども注目される。

●リアルとサイバー、セキュリティーにも脚光

公共交通機関や所管施設におけるテロ対策では、ボディースキャナーや高性能X線検査装置などの先進的な保安検査機器の導入を促進。非常時映像伝送システムなどの導入を拡大。ボディースキャナーは米国やドイツ製がメインであるため、使用されているミリ波など高周波製品を手掛けているところとして、TDK <6762> 、ヒロセ電機 <6806> 、村田製作所 <6981> 、東京計器 <7721> 、日立金属 <5486> などが挙げられる。

また、テロ対策において、セコム <9735> 、ALSOK <2331> 、セントラル警備保障 <9740> など、警備会社はフル出動といったところである。その他、ネットワークからシステムに侵入して、重要なデータを盗んだり破壊したりするサイバー攻撃も警戒されている。トレンドマイクロ <4704> 、アズジェント <4288> [JQ]、理経 <8226> [東証2]、ラック <3857> [JQ]といったセキュリティー企業へも関心が集まりやすい。

通信インフラでは、NTT <9432> 、NTTドコモ <9437> 、KDDI <9433> 、ソフトバンク <9434> などキャリア各社のほか、材料株としては訪日客向けに音声通話/SMSとインターネットを両方使えるプリペイドSIMを手掛けている日本通信 <9424> 辺りも人気化しそうである。

観光客の増加などによる首都圏の交通混雑を緩和するため、祝日化で通勤・通学などを抑える狙いから、休みとする企業の他、自宅などから作業する動きが増えてくると考えられる。アセンテック <3565> は、仮想デスクトップを中核にセキュリティー関連事業を展開しているが、仮想デスクトップの需要が拡大することになりそうだ。

また、インバウンド関連といったお馴染みの小売セクターも需要が見込まれる。百貨店、専門店、コンビニエンスストア、飲料企業などにもフォローの風が吹きそうだ。

★元日~6日に、2020年「新春特集」を一挙、“26本”配信します。ご期待ください。

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