プラチナ、下げ止まりからの上値余地は? 新型肺炎の行方に注視 <コモディティ特集>
プラチナ(白金)の現物相場は、中国の 新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速懸念を受けて調整局面を迎え、1月9日以来の安値951.55ドルをつけた。ただ、英国の貴金属製錬大手ジョンソン・マッセイ(JM)が大幅な供給不足が続くとの見通しを示したことで パラジウムが再び急伸したことや、米アップルが新型コロナウイルスの影響で1-3月期の売上高が目標に達しないとの見通しを示し、 金が堅調に推移したことなどが下支え要因になった。
格付け会社ムーディーズが2020年の中国の国内総生産(GDP)成長率予想を5.2%に引き下げるなど、景気減速懸念が強いが、中国人民銀行が大量の資金供給を行ったことに加え、中国政府が追加の景気刺激策を表明した。また、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)が財政政策の拡大を巡って協議したほか、米連邦準備理事会(FRB)の年後半の利下げ観測もあり、景気回復を見越した安値拾いの買いが入るとプラチナ価格の下支え要因になるとみられる。ただ、英JMは今年のプラチナは再び供給過剰に戻るとの見通しを示しており、1000ドル台で上値を伸ばすのは難しいとみられる。
●今年のプラチナは再び供給過剰に
英JMの需給報告によると、2019年のプラチナは6.3トンの供給不足となった。投資需要が35.2トン(前年2.1トン)に急増したことが主因となった。自動車触媒需要はディーゼル車の生産減少などを受けて90.6トン(同92.3トン)に減少した。宝飾需要は中国の減少などを受けて64.8トン(同70.3トン)、工業用需要は中国の設備投資が過去最高となった前年から縮小し73.3トン(同77.5トン)に減少した。供給は187.2トン(同190.0トン)に減少した。今年は投資需要が前年ほど伸びず、供給過剰に戻るとみられている。
一方、2019年のパラジウムは37.1トン(同2.4トン)の供給不足となった。自動車触媒需要が301.0トン(同273.2トン)に増加した。今年は自動車触媒需要の増加で大幅な供給不足が続くと予想される。中国が追加刺激策を表明したこともあり、パラジウムは19日のアジア時間の早朝から一段高となり、1月20日につけた史上最高値2543.50ドルを上抜き、2600ドル台に乗せ、約1カ月ぶりに最高値を更新した。パラジウムETF(上場投信)に利食い売りが出ているが、リースレート(貸出金利)が高止まりし、供給逼迫感が強い。
また、ロジウムが史上最高値1万0300ドルをつけており、パラジウムやロジウムの堅調が続くと、プラチナの下支えになるとみられる。2019年のロジウムは0.8トンの供給不足(同1.6トンの供給過剰)となった。
●新型肺炎の感染推移と景気見通しを確認
中国の新型コロナウイルスによる感染者累計は19日時点で7万4000人を超え、死者は2000人となり、感染拡大に対する懸念が残る。ただ、感染基準の変更で12日に感染者が1万4840人急増した後は新たな感染者は減少しており、転換点を迎えたとの見方も出ている。17日時点で感染が確認された7万人強のうち、1万0844人が治療を受けて退院したとされる。
中国政府の感染症研究の専門家チームは新型コロナウイルスの流行が2月にピークを迎え、4月頃に終息する可能性があると予想している。トヨタ自動車 <7203> など中国の一部工場で生産が再開されたが、正常化にはまだ時間がかかるとみられている。また、4月下旬に予定されていた北京自動車ショーの開催が延期された。さらに、中国は3月5日開幕予定の全国人民代表大会(全人代)の延期を検討していると伝えられており、新型コロナウイルスの感染拡大の影響は未だ見極めにくい。全人代延期を議論する24日の常務委員会の判断を確認したい。
●プラチナETF残高はまちまちの動き
プラチナが調整局面を迎えるなか、プラチナETF(上場投信)残高はまちまちの動きとなった。プラチナETF(上場投信)残高は17日の南アフリカで31.02トン(1カ月前31.76トン)に減少したが、13日の米国で23.27トン(同22.99トン)、英国で18.40トン(同17.92トン)に増加した。景気減速懸念が圧迫要因だが、下げ止まったことで安値拾いの買いも入りやすい。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、2月11日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは6万1840枚となり、1カ月前の6万4525枚(1月14日)から縮小した。1月28日に6万7596枚と過去最高を記録したが、景気減速懸念などを受けて手仕舞い売りが進んだ。
(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林 勇行)
株探ニュース