【杉村富生の短期相場観測】 ─基本方針は“売り上がり”、投資戦術は“小すくい作戦“を
「基本方針は“売り上がり”、投資戦術は“小すくい作戦“を」
●日米市場ともに、株価は抜群に強いが…?
ここ数週間、筆者の基本方針は徹底的な「売り上がり」、投資戦術は「銘柄を絞り込み、投資単位を落としての小すくい作戦を」と主張している。さらに、物色傾向が変わりやすい局面だけに、機敏な対応が求められる。「慎重ですね」。いや、それは違う。
単純な強気、弱気といった感覚ではない。相場を読む、ということ。これがリスク・マネジメントだ。まとまった玉を処理するには上昇局面、かつ積極的な買い手の存在が必要条件となる。3月のように、買い物が消えた状況を売ると、とんでもない安値を叩いてしまう。だからこそ、「売り上がり」なのである。
確かに、足元の相場は堅調だ。日経平均株価(終値ベース)は5月28日に、2万1916円まで上昇した。3月19日の安値(1万6552円)比の上昇幅は5364円、上昇率は32.4%となる。この結果、コロナ・ショックによる暴落(7530円)の7割強を埋めた。マーケットでは「一気に、1月20日の高値2万4083円奪回を狙う」と。
一方、NY市場の強さはそれ以上だ。直近の高値は2万5548ドル(5月27日)、3月23日の安値(1万8591ドル)比の上昇幅は6957ドル、上昇率は37.4%に達する。コロナ・ショックによる下げ(1万959ドル)の63.5%を戻したことになる。
まさに、なり振り構わぬ、何でもありの政策対応の効果だろう。トランプ政権、安倍政権ともに存亡の危機に対処、ドラスチックな財政出動を断行している。特に、アメリカは大量の流動性(ドル)を供給、FRBの総資産は2月末比5割増の7兆ドルに膨らんでいる。ある意味、「金融バブル」といえるだろう。
●金融街と商店街のギャップをどうみるか
とはいえ、ウォールストリート(金融街→株式市場)は活況だが、メインストリート(商店街→実体経済)はボロボロの現状(株価と景気のカイリ、ギャップ)をどう理解すれば良いのだろうか。
もちろん、「金融相場」とか、「不景気の株高」の現象は十分に承知している。しかし、超楽観、有頂天は天井に通じる、という。それに、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が完全に収束したわけではない。2次感染のリスクが残っていると思う。各国政府は「経済優先」にカジを切っているが…。
だからこそ、この局面は無理をせず、個別銘柄(各論勝負)での一本釣りスタイル(投資戦術)が有効と唱えている。
具体的にはスーパーシティ構想(電子行政)の本命と目されるスマートバリュー <9417> 、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関連するYE DIGITAL <2354> [東証2]、好業績なのに深押しの多摩川ホールディングス <6838> [JQ]などに注目できる。
さらに、値動きを考えると、AI(人工知能)のFRONTEO <2158> [東証M]、電子認証の弁護士ドットコム <6027> [東証M]、新型コロナウイルス用治療薬の原末供給の広栄化学工業 <4367> [東証2]、大商いのテラ <2191> [JQ]などに妙味があろう。
なお、株価と順相関のオックスフォード大学が発表している政府厳格対応指数(学校、職場、公共施設、イベントなど17項目をベースに算出)は多くの国々で急低下、制限措置の緩和が進んでいることを物語っている。
2020年5月29日 記
株探ニュース