明日の株式相場に向けて=新型コロナと共鳴する材料株相場
週明け14日の東京株式市場は買い優勢、日経平均株価が79円高の2万6732円と3日ぶりに反発した。しかし、取引終盤は売りに押されたイメージも拭えない。全体指数的には2万6800円台に入ると、いったん売りプログラムが作動しているような印象もある。どこかでこの重しが外れるのだろうが、海外投資家がクリスマス休暇に入ると市場エネルギー不足のなか、年内は同じところをウロウロするのではないかという見方を示す市場関係者も少なくない。
冬将軍の到来に合わせ、世界的に新型コロナウイルスが再び猖獗(しょうけつ)を極めている。そうしたなか、未だ米国の追加経済対策がはっきりしないのは、本来ならばマーケットは痺れを切らし政策催促相場という名の下げに転じてもおかしくないタイミングだ。当初は米大統領選前に成立するのかしないのかにスポットが当たっていたが、いつの間にか年を越すか否かのラインまでそのボーダーが後ろにズレ込んでいる。
だが、売り方が暗躍するような気配は今のところない。財政出動がお預け状態の今、希望の光はFRBの緩和政策ということになるが、あすあさっての日程で行われるFOMCがどうなるか。量的緩和策についてはフォワードガイダンスの強化だけでなく、国債の年限長期化や購入金額の上乗せなど拡充策があるのかどうかに注目が集まっている。
しかし今の相場はあくまで個別株勝負の地合いであり、全体指数とは異なる次元で、むしろ受難の経済環境と共鳴して勢いを増している感すらある。電気自動車(EV)関連株やその周辺銘柄が、凄まじい勢いで買いを集めている。中小型材料株がフル回転状態だが、中心軸を担う“恒星銘柄”は日本電産<6594>、そしてトヨタ自動車<7203>ということになろうか。トヨタについてはここにきて他の自動車メーカーとは明らかに株価の値運びに差が生じている。これは燃料電池車「ミライ」や全固体電池の研究開発などで先駆していることが理由のようだ。
「世界的な“脱炭素”への対応で、海外投資家からの評価が一段高いところにある、ということがトヨタ株高の真相のようだ」(国内ネット証券アナリスト)という。EV周辺では前週まで比較的出遅れていた大豊工業<6470>がストップ高人気となった。同社はEVなど電動車に対応した製品に積極的に取り組んでいることで人気に火がついたが、トヨタ系自動車部品メーカーであるということもポイントになったと思われる。
このEVや2次電池、水素関連といったテーマは今後更に物色の裾野が広がっていくことになろう。トヨタを猛追するホンダ<7267>の系列会社で自動車部品メーカーのジーテクト<5970>はEVバッテリーケースの新製品開発で思惑がある。また、ガソリンスタンド向け洗車機などメカトロニクス関連製品で強みを持つエムケー精工<5906>もEV周辺の製品技術で材料性に富む。2次電池関連では正極材の受託加工を展開する日本化学産業<4094>。上ヒゲは目立つものの、株価ポジションが食指の動くいい位置にある。
このほか低位株では株価が300円台を割り込んでいる日亜鋼業<5658>が株式需給関係も良く、着目しておきたい。線材の2次加工大手だが、商用サービスが本格化し始めた高速通信規格5G基地局向けで商機が期待される。
あすのスケジュールでは、国内では特に目立ったイベントはないが、東証2部にビーイングホールディングス<9145>、東証マザーズにスタメン<4019>が新規上場する。海外では11月の中国工業生産高・小売売上高、1~11月の中国固定資産投資、12月のNY連銀製造業景況指数、11月の米鉱工業生産指数など。(銀)