【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─ 半導体など好業績セクターとバリュー株の相互物色が続くか
「半導体など好業績セクターとバリュー株の相互物色が続くか」
◆佳境を迎える決算シーズン、一段の相場上昇には力不足の感
2月中旬までの東京株式市場は、基本的にはもみ合いの展開となりそうだ。日米で決算シーズン本番を迎えつつあるが、序盤戦では米の主力ハイテク、日本でもFA(工場自動化)や半導体関連企業の決算が事前の予想通り好調な内容となっている。ただ、日経平均株価採用銘柄の1株利益は概ね1100円前後で横ばい推移と、上向きにはなっていない。PERは26倍水準で、22年3月期の業績回復を織り込んでも割安とはいいがたい水準だ。 日経平均株価が2万9000円を抜けて、もう一段の上昇に進むには力不足といえる。日経平均株価の予想レンジは2万7000円~2万9000円。チャート的には昨年12月の上値抵抗ラインだった2万7000円前後が強力な支持ラインとなっている。
外部環境ではバイデン政権が掲げている1.9兆ドルの追加経済対策の行方に関心が高い。上院では金額が大きすぎるとしている野党共和党と民主党の議席数は拮抗しており、額面通りの通過となるかは不透明。「落としどころ」次第では、不足感から景気の先行き不透明感が出る可能性がある。日本では2月下旬から新型コロナ感染症のワクチン接種が始まる見込み。感染者が増加傾向にあるだけに、予定通り開始されれば、先行きに明るさを感じる場面も想定される。
物色面では好業績なセクターと、バリュー銘柄の相互物色が継続することになりそうだ。前者では5Gやテレワークなどで通信量の増大により恩恵を受ける半導体や電子部品関連株、また、EV(電気自動車)を始めとした次世代自動車関連などが代表格。バリュー系では新型コロナで売り込まれていた陸海空運、外食、小売りの一角などが日本でのワクチン接種開始をにらみ、戻りを試す展開が想定される。
特に半導体は、供給不足で自動車の生産に制約が出るほどニーズが高い。東京エレクトロン <8035> 、信越化学工業 <4063> 、SCREENホールディングス <7735> を軸に周辺銘柄の押し目は狙いどころになる可能性がある。一方、新型コロナで苦戦を強いられている日本航空 <9201> 、東日本旅客鉄道 <9020> 、三越伊勢丹ホールディングス <3099> などに買いのタイミングが訪れるのかもポイントだ。
◆EVのキーデバイス「パワー半導体」に注目
今回の注目セクターとして、パワー半導体関連を取り上げる。パワー半導体とは、モーターや照明などの制御や電力の変換を行う半導体のこと。交流を直流にしたり、電圧を変換するなどして、モーターの駆動やバッテリーを充電したりするために使われる。EVではモーターを低速から高速まで精度よく回すことで性能を上げ、また、効率よく動かすことで省エネ・省電力化に貢献。日本企業が世界で一定のシェアを有しており、次世代タイプのSiC(炭化ケイ素)を使ったパワー半導体に強みがある点もポイントだ。ローム <6963> 、富士電機 <6504> 、ルネサスエレクトロニクス <6723> 、三菱電機 <6503> などをマークしたい。
また、今後の日本企業の業績を占ううえで、12月本決算企業の業績見通しに注目したい。12月決算企業は当然ながら、21年通期の業績予想を公表することになる。企業側が今年1年間をどう見ているか。ブリヂストン <5108> 、クボタ <6326> 、ユニチャーム <8113> 、資生堂 <4911> 、DMG森精機 <6141> 、キリンホールディングス <2503> などのグローバル企業の決算と株価動向をチェックしたい。
2月5日のQDレーザ <6613> [東証M]から今年のIPOが始まる。QDレーザは富士通研究所の半導体レーザー技術を事業化するためのスピンオフベンチャー。光通信やレーザー加工などを手掛けている。2月は合計7社のIPOが予定されているが、荷もたれ感は乏しい。IPOを軸としてマザーズなどの新興市場への刺激材料となる可能性がある。
(2021年1月29日 記/次回は2月28日配信予定)
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■和島英樹(Hideki Wajima)
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
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