明日の株式相場に向けて=「ソニー爆騰と半導体株安」の明と暗
きょう(4日)の東京株式市場は売りに押される展開となり、日経平均株価が304円安の2万8341円と4日ぶりに反落した。
ゲームストップ株の狂い咲きが引き金となった米株乱調の余波で日経平均は前週後半2日間で1000円近い下げに見舞われたが、それも今週に入ってから流れが一変し、今度は前日までの3日間で1000円近い上昇をみせ、何のことはない“大山鳴動して鼠一匹”とばかりに、もと居た位置に戻ってきた。しかし、このV字リターンの間に手品のように相場の中身がするっと入れ替わった。いわゆる、半導体 や電子部品 など昨年来の相場のリード役が変調なまま、全体相場のリバウンド局面では、それまでコロナ禍で負け組エリアにいた景気敏感株に物色の矛先が向かった。グロース売りのバリュー買いは一時的なリターンリバーサル現象かと思いきや、きょうも東京エレクトロン<8035>や村田製作所<6981>のようなハイテク主力株が売り圧力に晒され下値を探る展開を強いられた。
きょうの相場でスポットライトが当たったのは何といってもソニー<6758>である。上げ幅が1000円を超える急騰をみせ、売買代金も全上場企業のなかでソフトバンクグループ<9984>のお株を奪う断トツの水準をこなした。前日の引け後に発表した今3月期業績予想の上方修正がサプライズとなり投資資金を誘引した。新型コロナウイルスがもたらした巣ごもり需要や企業のテレワーク導入加速といった社会構造の変化が、ことごとく収益にプラスに働き、最終利益は従来予想の8000億円から1兆850億円(前期比86%増)に大幅増額、初の1兆円乗せを果たしたことは確かに驚愕に値するインパクトがあった。しかし、何か違和感が生じている。それは、ソニーの株高パフォーマンスを横目に他のハイテクセクターの主力銘柄が軒並み大きく売られていることだ。主力ハイテク株で買われたのはソニーと同日に決算を発表し通期予想を増額した日立製作所<6501>、そして東証1部に復帰した矢先の東芝<6502>くらいであった。
後場になって、この違和感が表面化する形で先物を絡めて日経平均は一段安となった。3連騰後できょうは目先筋の利益確定売りに押されがちなタイミングではあったが、300円を超える下げは想定しにくいところであった。
しかし、半導体や電子部品株の上昇相場が幕を引いたのかといえば、そうではないはずだ。自動車業界が意図せぬ生産調整を余儀なくされるほど半導体が不足しているという実態は何も変わっていない。例えば5Gについていえば、「日本は世界の主要国の中でかなり普及が遅れており実感が湧かないが、中国や米国などは猛スピードでインフラが進み主要都市では日常生活に浸透した状態にある」(国内証券アナリスト)といい、半導体を飲み込む背景となっている。加えてリモートワーク導入に伴うデータセンター拡張や自動車の電装化も進展するなか、半導体や電子部品産業のコモディティ化は今後加速することが考えられる。なによりも画像処理センサーを戦略商品とするソニーが脚光を浴びている。ソニーは巣ごもり化を背景としたゲーム事業の評価だけで買われているわけではない。
きょうは値上がり銘柄数が値下がり数を上回っことからも、見た目ほど地合いは悪くなかった。半導体関連ではシグマ光機<7713>やタカトリ<6338>などが強い動きを示し、ここウネリがでてきている低位株では、業績予想の増額修正発表を受けシステムソフト<7527>がストップ高に買われたほか、前日取り上げたルーデン・ホールディングス<1400>や土屋ホールディングス<1840>、TAC<4319>なども動意含みだ。このほか、ソニー関連ではムトー精工<7927>が派手な切り返しをみせている。
ここで新たに注目してみたいのは、トヨタ自動車<7203>との燃料電池車における連携で思惑を呼ぶ大豊工業<6470>、元ソニーケミカルで電子材料のニッチトップ銘柄であるデクセリアルズ<4980>、不動産関連の好決算銘柄でアグレ都市デザイン<3467>など。
あすのスケジュールでは、20年10~12月の家計調査、12月の景気動向指数速報値。また東証マザーズにQDレーザ<6613>が新規上場する。海外では、12月の米貿易収支、12月の米消費者信用残高のほか、1月の米雇用統計が注目される。(銀)