【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─ 業績回復基調のシクリカル銘柄の動向に注目

市況
2021年4月25日 18時30分

「業績回復基調のシクリカル銘柄の動向に注目」

◆懸念材料重なるが、過度な警戒感は後退に向かうか

5月中旬までの東京株式市場は、新型コロナウイルス感染症の国内での再拡大動向や米国株式などの動きに左右される展開となりそうだ。5月中旬までの日経平均株価は2万7500円~2万9500円程度での値動きを予想する。

政府は東京都、大阪府、京都府、兵庫県の4都府県に緊急事態宣言を発令することを決めた。酒類を提供する飲食店百貨店テーマパークなどの大型商業施設も休業と伝わっており、国内の経済活動が再度低迷することが避けられない。ただ、これ以前も日経平均の上値は重く、海外株高に反応できていなかった面もある。これについては日米首脳会談で結束を固める一方で、中国への警戒感を打ち出したことも影響しているとみられる。特に台湾情勢の先行きなどには海外投資家の関心も高く、外国人投資家の買いが鈍っている面が上値を抑えている可能性が高い。

日本銀行は20日に、TOPIXが前場に前日比1%以上下げたのにもかかわらず、ETF(上場投資信託)の買いを入れなかった。3月24日の同様の局面では購入している。一方、翌21日は701億円を購入しており、3月19日に見直した手法の法則性が見えない。

一方、国内でもワクチン接種が徐々に進むなど、下値には中期的な経済回復をにらんだ買いが入りそうだ。決算発表は5月12~14日にピークを迎え、過度な警戒感は和らぐとみられる。

◆市場の関心は好業績株に、IPO途絶え需給改善も

今週(4月26日~)から決算発表が本格化してくる。4月中旬までの2月本決算企業では、決算良好と見られたしまむら <8227> 、安川電機 <6506> などの株価が発表後に売られるという光景が見られた。3月本決算発表の日本電産 <6594> も安い。市場の期待が高すぎるとの見方もあるが、これが相場の上値を重くしている面もある。

今回、3月本決算銘柄で、特に注目が集まっているのは半導体や電子部品FA(工場自動化)など、いわゆるグロース銘柄の動向。4月27日にファナック <6954> 、28日にソニーグループ <6758> 、村田製作所 <6981> 、30日に東京エレクトロン <8035> 、レーザーテック <6920> (第3四半期)、5月6日に任天堂 <7974> 、5月12日にトヨタ自動車 <7203> など。ソニーGやトヨタは第3四半期決算の発表時に株価が上昇した経緯もある。

日経平均の1株利益は1339円(PER21.8倍)だが、どこまで上昇できるか。PERがどこまで低下するかで上値のメドも変わる可能性がある。

決算以外の5月のスケジュールでは3日の米ISM製造業景況指数、7日の米雇用統計、14日のオプション5月限SQ(特別清算指数)算出、米小売売上高などが注目される。なお、5月はFOMC(米連邦公開市場委員会)の開催予定はない。

IPO(株式の新規上場)は4月27日のテスホールディングス <5074> でいったん途切れる。ゴールデンウイーク後もしばらくは空白期間になるため、需給の改善が想定される。東証マザーズ指数は戻り歩調にあるだけに、好業績株への注目度が高まりそうだ。直近IPO銘柄などが見直される可能性も高い。

決算では地味ながらシクリカル(景気循環)に関連する銘柄の22年3月期の動向に注目しておきたい。昨年2月からの新型コロナ拡大で景況感が悪化し、21年3月期業績は厳しいことが予想される。1年前と比べれば回復基調にあり、増益予想だけでも見直される公算が大きい。機械でオークマ <6103> 、牧野フライス製作所 <6135>鉄鋼で日本製鉄 <5401> 、ジェイ エフ イー ホールディングス <5411> 化学では住友化学 <4005> 、三菱ケミカルホールディングス <4188> など。日本郵船 <9101> など海運株の利益がさらに回復するかにも関心が高い。

(2021年4月23日 記/次回は5月30日配信予定)

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■和島英樹(Hideki Wajima)

株式ジャーナリスト

日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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