最高峰の技術に光! 金メダル銘柄の宝庫「グローバルニッチ」究極6選 <株探トップ特集>
―世界を駆けるオンリーワン企業の輝き、次の成長ステージで化けるのはこの株だ―
●羅針盤のない状態で濃霧の海原を行く
東京株式市場は前方視界不良のまま、濃霧の海原を羅針盤が失われた状態で航海するような状況にある。名実ともに7月相場最終日となった30日の東京株式市場は、日経平均株価がほぼ500円の下落をみせるなど再び波乱含みの展開を強いられた。
中国や香港、韓国などのアジアの主要株市場も売られており、新型コロナウイルスの感染拡大が一極集中的に懸念されて日本株市場が独歩安を演じているという構図ではない。国内感染者数が1万人を超え、緊急事態宣言の対象地域が広がる見通しとなったことを嫌気した売りという解釈もされているが、今週の株式市場は既にそれを織り込んだうえでの値運びで、改めて悪材料に掲げるのは今さらの感も強い。
しかし、東京五輪を開催し現在進行形で金メダルラッシュに沸き立つなか、歓喜とは対極にある株式市場の地合いの悪さは想定外とはいえ否定できない事実で、投資マネーの活力を大きく低下させている。30日は週末ということに加え、市場関係者の脳裏に深く刻み込まれている「月末安」アノマリーに当たる日でもあった。日経平均が月末に安く引けるパターンが、ついに11ヵ月連続となったが、そういう話題すら立ち消えとなるくらいに、足もとの売り一辺倒の流れは抗し難いものがあった。
●一段と厚み増す過剰流動性が相場の支えに
企業の決算発表が本格化するなか、状況をよく見極めようと買いが手控えられている面もある。中国政府がネット企業や教育産業、不動産業界などに規制強化の動きを示していることも、これまでは俎上に載っていなかった地政学リスクとしてネガティブに作用している。ただし、こういう局面が得てして買い場となっていることは、昨年3月下旬以降の“超金融相場”で何度となく証明されてきた。FRBによるテーパリング開始時期について思惑が錯綜しているとはいえ、少なくとも現状はこれまでと変わらないどころか、量的緩和が続いている以上、株式市場を取り巻く流動性は更に厚みを増している。
30日の東京市場では東証1部の86%の銘柄が下落したが、見落とされがちなのは売買代金の増加だ。2兆8000億円台に膨らんでおり、これはオプションSQ算出日であった7月9日を除けば、6月21日以来、約1ヵ月半ぶりの水準であった。したたかに買い向かっている資金もあるということを知っておかねばならない。
●グローバルニッチへの投資で活路を開く
ここは、目先の動きに惑わされず中身のある企業を中期スタンスで投資するチャンスといえる。ニッチ分野であってもオンリーワンと呼べる商品やサービスがあればそれは株価変貌の糧となる。半導体製造装置セクターの新星として存在を輝かせたレーザーテック <6920> が良い例で、同社は主力商品のマスクブランクス検査装置でシェアを独占し、半導体高集積化の流れを受けて急速に市場が立ち上がったEUV露光装置向けでも、同検査装置を供給できる世界唯一の企業として名を馳せた。国内外のファンド系資金の組み入れニーズが一気に進み、2019年1月に1300円台にあった株価は今年6月に2万3930円まで上昇、この時の時価総額は2兆2000億円超となり、わずか2年半の歳月にしてテンバガーどころかおよそ18倍となる大変貌を遂げている。
レーザーテックの株価は目先こそ頭打ちとなっているが、株式市場に「ポスト・レーザーテック」を探すという新たなテーマを産み落とした。特定分野で他社の参戦を許さない高い技術とシェアを持っていれば、足もとの業績がどうあれ中長期的視点で機関投資家マネーを継続的に誘引することが可能となり、結果として投資家サイドがテンバガーという究極の果実を手にするようなケースもでてくる。
●世界に誇る技術力が株価大化けの源泉に
経済産業省は2020年6月に6年ぶりとなる「2020年版グローバルニッチトップ企業100選」を発表している。もちろんレーザーテックはこのリストに含まれており、紛れもなく出世頭ということになるが、まだこのほかに40社以上の上場企業が含まれており、これらは株価大化けの可能性を内包する予備軍と位置付けることもできる。今回は、目先を追わず中長期的な見地に立って、ニッチトップの商品競争力が有望視される6銘柄を新たに選抜した。
◎オーエスジー <6136> 【ねじ切り工具】
精密切削工具の大手メーカーで、「めねじ」加工を行うタップや、「おねじ」を作るダイスなどで他社の追随を許さない高い技術力を持っている。脱炭素をテーマとした世界的な電気自動車(EV)シフトの動きが加速するなか、軽量化ニーズに対応した素材加工用工具などでも需要獲得が進む。足もとの業績も好調といってよい。航空機向けはコロナ禍の影響が拭えず現状はまだ低水準だが、世界的に販売需要旺盛な自動車向けで売り上げが押し上げられている。21年11月期の中間決算では2ケタ増収を確保し、営業利益は前年同期比18%増の70億9100万円と大幅伸長を達成したが、3~5月期だけで見れば営業利益の伸び率は93%増の47億9300万円と目を見張る伸びをみせている。株価はここ高値圏でもみ合っているが、押し目買いで対処。時価総額は2000億円前後と今回の銘柄特集で唯一大型株に属するが、EVなど新市場の創出で成長期待は色褪せていない。
◎フコク <5185> 【ワイパーブレードラバー】
自動車用ゴム(ラバー)製品を生産するが、商品競争力の高さは一頭地を抜いており、特に新車装着用のワイパーブレードでは国内オンリーワンとしての地位を確立している。同商品は世界でも断トツの生産量を誇る。また、ワイパーブレード以外でもブレーキ・防御製品などで世界屈指のシェアを確保している。米国を筆頭に世界的な自動車販売の急回復を追い風として、直近22年3月期業績予想の修正を発表しており、売上高を従来予想の700億円から730億円(前期比15.5%増)に、営業利益は33億7000万円から37億2000万円(同5.4倍)に大幅増額した。好調な業績を背景に株主還元も強化、今期年間配当も従来計画の40円に5円上乗せした45円(前期実績は22円)とすることを発表、配当利回りは4.4%前後に達する。PER、PBRも超割安圏にあり、1000円近辺の株価は上値余地が大きい。
◎ジェイテックコーポレーション <3446> 【X線ナノ集光ミラー】
研究機関や実験施設向けに高精度X線集光ミラーや自動細胞培養装置などの理化学機器を製造している。X線集光ミラーはEUV露光装置向けへの展開も見込まれており、現在は同社の集光ミラーの精度が高すぎてオーバースペックながら、半導体の微細化・高集積化が進むなか、EUV次世代機では同社の商品技術が生かされる可能性がある。また、自動細胞培養装置については今後中期的に、再生医療分野などで需要を開拓していく公算が大きい。業績は21年6月期営業損益が2億7800万円の赤字見通しにあるが、22年6月期はX線集光ミラーが研究開発施設の建設が加速している中国向け需要を取り込み、黒字転換が有力視される。EUV露光装置用など半導体業界向けをはじめ、産業向け用途が広がれば業績飛躍の可能性もある。高度な技術分野だけにオンリーワン企業としての成長シナリオが実現性を高める過程で大化けもあり得る。
◎酉島製作所 <6363> 【海水淡水化プラント用ポンプ】
ポンプ 製造大手で国内屈指、プラント向け大型ポンプなどを得意としている。メカニカルシールやエコポンプのほか、再生可能エネルギー分野では耐風性や耐雷性に優れる風力発電システムなども手掛けている。海水淡水化分野では同社は40年にわたる活躍の歴史があり、中核商品である高圧海水供給ポンプなどで存分に強みを発揮している。水不足が深刻な中東や北アフリカ、南米、豪州などで豊富な受注実績があるほか、今後はインドなどでも需要開拓が期待されており、業績拡大に向けた伸びしろは大きいといえる。22年3月期営業利益は横ばい見通しながら、年間配当は前期実績に11円上乗せとなる32円を計画するなど株主還元に前向き。配当利回りは3.6%強と高い。更に自社株買いに積極的な点も評価され、1株利益100円強の収益力を考慮して900円未満に位置する株価は水準訂正余地の大きさが意識される。
◎萩原工業 <7856> 【バルチップ】
合成樹脂繊維の加工製品大手で土木建築向け中心に高い実績を有するほか、スリッター(切断装置)やワインダー(巻取装置)などのエンジニアリング製品も手掛けている。国策として取り組む国土強靱化などの動きが、今後の同社の収益環境に追い風をもたらすことが予想される。多様な商品構成のなかで特に注目されるのが、同社が開発製造する補強繊維バルチップで、トンネル、道路、橋梁、ビルなど構造物の安全を担うコンクリート補強のグローバルエキスパートとして高い評価を得ている。コンクリートの耐久性を飛躍的に高め、国内だけでなく世界中で多くの建造物に採用されている。業績は21年10月期営業利益が5%程度の増益にとどまる見通しながら、22年10月期は防災ニーズを取り込み2ケタ成長が視野に入る。株価指標面で割安なほか、株式需給も信用買い残が枯れ切った状態にあり上値は軽く、2000円大台を目指す展開を期待。
◎古野電気 <6814> 【商船向けレーダー】
魚群探知機や船舶用電子機器メーカーとして世界的に抜群の商品競争力を誇る。同社のチャートレーダーは優れた探知性能と高度なターゲット追尾機能を有し圧倒的なニーズを獲得している。また、航海ルート作成や航海情報を開示する電子海図情報表示システム(ECDIS)なども手掛ける。近年は船舶分野でもデジタルトランスフォーメーション(DX)化が進んでいるが、同社は独自技術を駆使して自律運航やリモート管理でその時流を捉えている。更に、多角化に積極的な点もポイント。船舶分野以外では無線技術を活用して医療機器や教育ICTといった分野に業容を広げている。22年2月期営業利益は33%減益予想にあるが、これは織り込み済みで23年2月期以降は増収増益路線に復帰する可能性が高い。株価は1000円大台での値固めを経て、1月14日の年初来高値1375円奪回を目指す展開が想定される。
株探ニュース