【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─反転の機をうかがう株式市場、物色の軸は好業績株に
「反転の機をうかがう株式市場、物色の軸は好業績株に」
◆5重苦にあえぐ東京市場だが、企業業績は堅調
9月中旬までの東京株式市場は買い手掛かりが乏しい中にあっても、反転の機をうかがう展開がメーンシナリオとなる。日経平均株価の想定レンジは2万6500円~2万8500円。
8月の株式市場は悪材料が重なり、厳しい展開となっている。その要因は、(1)日本での新型コロナ感染拡大の加速と、緊急事態宣言の延長・適用範囲拡大に伴う経済の低迷長期化リスク、(2)中国での景気のピークアウト感、中国当局のハイテク・教育産業・ゲーム業界への規制強化、(3)米国の景気先行き懸念、金融緩和の縮小懸念に加えて、(4)アフガニスタンの地政学リスク、(5)コロナ影響・半導体不足によるトヨタ自動車 <7203> の減産発表で、同業他社や部品メーカーなどへの企業業績の先行き警戒感がダメ押しとなっている。いわば、5重苦ともいえる状況だ。
一方、とはいえ企業業績は堅調に推移している。22年3月期の全産業の純利益は前期比34%増と、第1四半期決算の発表前から7ポイントの上方修正(報道ベース)となっている。日経平均株価の1株利益も同様に2040円から2145円程度に上昇しており、PERは12.5倍台に低下している。今回の決算発表では7社に1社が上方修正になったとも伝わっている。外部環境の不透明感が後退すれば、業績を見直す余地が大きいとみられる。
また、日経平均株価よりも、TOPIX(東証株価指数)の方が堅調な地合いを継続している。一部寄与度が大きい銘柄の低迷により軟調な推移が続く日経平均株価よりも、TOPIXをベンチマーク(投資基準)としたい。TOPIXは200日移動平均線にサポートされる展開を維持している。
◆反転しつつあるマザーズ、戻りは本格化するか
需給面では9月10日(金)に先物・オプションのSQ(特別清算指数)の算出がある。流動性の高い特異日だけに、反転のきっかけになるかが注目される。スケジュールでは9月末に自民党総裁の任期が到来する。次期衆院選に向けて菅義偉首相が党総裁をスムーズな形で継続できるのか。また、衆院解散への具体的な日程が決まるかについても関心は高い。新型コロナ感染拡大のピークアウト感が出るか否かも相場に影響を与えそうだ。
また、東証マザーズ市場が反転しつつある点もポイントだ。東証マザーズ指数は今年2月16日の1340ポイント(取引時間ベース)の高値を付けて以降、調整色を深めてきた。信用取引の高値期日(6カ月)直後の8月18日に993ポイントの安値を付けている。5月の安値1040ポイントを割って下げが加速したが、18日は引けにかけて急速に切り返し、前日のローソク足の陰線をすべて包み込む「陽線包み足」を形成した。相場反転のシグナルだ。ネット証券の信用の評価損益率はマイナス28%近くに達し、オーバーシュートも示唆している。仮に戻りが本格化すれば、個人投資家の意欲が回復する可能性がある。なお、TOPIXの高値は3月19日であり、9月は期日向かいということになる。
物色面では好業績銘柄への関心が高い。
主力どころでは日本郵船 <9101> 、日本製鉄 <5401> など海運、鉄鋼株の押し目にも妙味がありそうだ。半導体では東京エレクトロン <8035> 、レーザーテック <6920> の動向が他の関連銘柄へ影響を与えることになりそう。材料系では高速通信の5G向けに需要が増加している水晶デバイスの日本電波工業 <6779> 、大真空 <6962> が反転の動きとなっている。調整一巡感が浮上しているうえに業績が順調なアサヒグループホールディングス <2502> 、ユニ・チャーム <8113> などには中期妙味がありそうだ。
マザーズではヘルスケア関連のJMDC<4483>、プレミアアンチエイジング<4934>、5G関連のJTOWER<4485>、6月IPOで好業績のEnjin<7370>などの値動きが軽くなっている。
(2021年8月27日 記/次回は9月26日配信予定)
■和島英樹(Hideki Wajima)
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
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