明日の株式相場に向けて=トヨタEV戦略で色めき立つ市場
きょう(15日)の東京株式市場は、売り買い交錯のなか日経平均株価は前日終値近辺でもみ合う展開となり、結局、前営業日比27円高の2万8459円と小反発。ひとことで言えば、きょうは様子見ムードに終始した相場だった。日本時間あす未明に公表されるFOMCの結果とパウエルFRB議長の記者会見を前に、売りも買いもポジションを一方向に傾けるのはリスクが大きいという思惑が働いた。米国のインフレ警戒感は最高潮に近づいており、直近発表された11月の米生産者物価指数(PPI)が前年比で過去最大の伸びを示し、テーパリング加速はほぼ不可避との見方が浸透している。前日にも触れたように22年の利上げは必至としても、そのタイミングと回数が何回になるのかがマーケットの最大の関心事であり、ドットチャートが耳目を集めることになる。
一方、1日遅れで行われるECB理事会の政策発表にも注目度が高い。欧州も米国ほどではないが忍び寄るインフレの足音は無視できない状況にあるからだ。例えば11月の独CPIは前年比5.2%上昇と高水準で、これまでのようにラガルド総裁も利上げに慎重なスタンスを貫きにくい状況にある。「3月をメドに終了するテーパリングについて一部にあった延長の思惑は霧消したといえるが、イタリアやギリシャなど信用力の低い国債の利率が上昇傾向にあるなかで、ECBも難しい舵取りを迫られており、今回は利上げに関する言及を避けるのではないか」(ネット証券アナリスト)という見方が示されていた。
日本国内では金融政策に選択肢はあまりない状態で、あとは政府の経済対策に期待ということになるが、岸田政権に対してマーケットは半ば諦めムードとなっている。なぜかマーケットに非友好的な政策スタンスばかりがクローズアップされる。おそらく、これは世界的に株式市場が難しい局面にあるという理由の方が大きいのだが、岸田首相に日本株の低迷を助長するとは言わないまでも、気にかけていない発言が多いのも事実である。「首相たるもの、“人の言うことをよく聞く性格”を自らのセールスポイントに挙げてはいけない」という市場関係者の声もある。マーケットは強力なリーダーシップを求めている。
個別では、きょうはトヨタ自動車<7203>が電動化戦略でEVの販売目標を大幅に引き上げたことを材料に関連株が軒並み人気化し、全体相場を支えた。まさに“トヨタサマサマ”であったというよりない。リチウム電池関連の田中化学研究所<4080>、戸田工業<4100>、ニッポン高度紙工業<3891>、日本電解<5759>や、モーターコアを手掛ける三井ハイテック<6966>、急速充電器の新電元工業<6844>などが値を飛ばした。また、トヨタグループのデンソー<6902>、豊田通商<8015>などの株価も強く刺激される格好となった。なお、中小型株ではトヨタを筆頭株主とし、新型ミライ向け製品の供給で全幅の信頼を寄せられている大豊工業<6470>の出直り相場に期待が膨らむ。
トヨタ関連以外では、好業績株を中心に見直し買いの流れが形成されつつある。技術者派遣のアルプス技研<4641>は半導体関連向けで人材需要が旺盛。自動車業界向けでも高い実績があり、好業績の高配当利回り株としてリベンジ相場に乗る可能性がある。また、中低位では児玉化学工業<4222>が業績面の評価が遅れており、水準訂正余地が大きそうだ。三井ハイテクにあやかってモーターコア関連のニッパツ<5991>の動きもマークしたい。
一方、依然として個人投資家マネーは滞った状態で雪解けムードには遠い。これはきょう東証1部新規上場のネットプロテクションズホールディングス<7383>の値動きが暗示している。国内ネット証券が算出するマザーズ市場の信用評価損益率は前日時点でマイナス29.4%と一段と悪化し、追い証絡みの売りが堰を切ってくる危険性とも背中合わせである。なお、マザーズの騰落レシオ(25日移動平均)は64%台で明らかに"陰の極"を示唆。日柄的にもあすは変化日にあたるが、潮の流れが変わるのかどうかも注目される。
あすのスケジュールは、日銀の金融政策決定会合(~17日)、11月の貿易統計、11月の首都圏・近畿圏のマンション販売など。IPOが2社予定されており、True Data<4416>、ブロードエンタープライズ<4415>がいずれも東証マザースに新規上場する。海外では、フィリピン中銀、インドネシア中銀、スイス中銀、トルコ中銀、英中銀の金融政策決定会合のほか、ECB理事会の結果も発表される。このほか12月のユーロ圏PMI速報値、10月のユーロ圏貿易収支、12月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数、11月の米住宅着工件数、11月の米鉱工業生産指数・設備稼働率などがある。(銀)