日米市場が年初の波乱劇、ナスダック指数3%安が意味するもの <株探トップ特集>

特集
2022年1月6日 19時30分

―米金融政策に対する警戒感高まる、グロース株の物色傾向に変化も―

日本と米国の株式市場が年明け早々、波乱状態に陥った。最高値圏を更新していたNYダウは5日、400ドル近く下落したほか、ナスダック指数は3%強の急落となった。昨年12月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公開され、早期利上げ観測が強まったことが警戒された。この米株安を受け、東京市場も日経平均株価が前日比800円強の下落となり、ともに年初の波乱劇を演じた。市場には、米金融政策の転換で相場の流れに変化が起こる、との見方も浮上している。

●FOMC議事録が日米株安を引き起こす

6日の日経平均株価は前日比844円安の2万8487円と大幅安となった。この急落を引き起こしたのが、5日の米国株式市場の波乱だ。NYダウは392ドル安となり3日ぶりに大幅反落。特に、ナスダック指数は522ポイント安の1万5100と急落し、下落率は3%を超えた。株安の震源となったのが、同日に公表されたFOMC議事録だ。同議事録では、インフレへの対応で早期の利上げに加えて、「利上げの開始後、比較的早い時期に米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートの縮小を始めることが適当ではないか」との意見が出ていることが明らかになった。これを受け、市場ではFRBの金融政策の姿勢は、「予想以上に利上げに前向きなタカ派的」との見方が広がった。

●量的引き締めは5月にも開始との観測浮上

FOMC議事録を受け、フェデラルファンド金利の先物取引からCMEグループが算出する「FEDウォッチ」によると3月に利上げが行われる可能性が60%超に急伸するなど、市場に与えた衝撃は大きかった。とりわけ、「量的引き締め(QT)は予想以上に早い」との見方が強まったことがショックを与えた。QTとは、FRBの保有資産を縮小する動きをいうが、今回の議事録で早期のQT開始が視野に入ってきた。

フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は、「今後の情勢次第で修正されることも予想されるが、市場では3月にテーパリング(量的緩和縮小)を終了するとともに即利上げ実施、5月頃からのQT開始も読み始めたようだ」と指摘する。このFOMC議事録を受け、米10年債利回りは一時1.71%と昨年4月以来の水準に上昇した。米長期金利上昇でハイテク株には売りが膨らみ、米国市場ではテスラ<TSLA>が急落したほか、一時時価総額を3兆ドルに乗せたアップル<AAPL>やアマゾン<AMZN>などを含めた米IT大手「GAFAM」の5社が軒並み安となった。

米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)も3%超の下落となり、日本でも東京エレクトロン <8035> やレーザーテック <6920> のほかソニーグループ <6758> や村田製作所 <6981> などハイテク株が売られた。

●1月発表の雇用統計、CPI、そしてFOMCは要注目

昨年11月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率が前年同月比で6%台後半と約39年ぶりの高水準となった。今年11月に中間選挙を控えるバイデン政権としては、インフレ進行は何としても避けたいところであり、FRBも物価上昇の抑え込みに本腰を入れる方向となっている。今後のポイントは明日7日の米12月雇用統計、12日の同CPIの発表を経て、25~26日に予定されている今年最初のFOMCで今後の金融政策に対する姿勢がどう打ち出されるかだ。米金融政策に対する警戒感から、しばらく米国市場は神経質な展開が続くことが予想される。

●IBMやインテル的なバリュー的性格を持つ銘柄に再評価機運も

なかでも今後の動向が注視されるのがGAFAMを含むハイテク株だ。金利が上昇すればハイテク株の高PERのバリュエーションは、許容されなくなることが予想されるためだ。バリュー株も多く含まれているNYダウが4日まで最高値を更新していたのに対し、ハイテク株比率が高いナスダック指数は昨年12月28日以降、1月3日を除き連日で値を下げ最高値から5%近く下落していることが象徴的だ。

NYダウはいったん調整後は横ばい圏が予想されるが、ナスダック指数は状況次第では一段の下押しもあり得るかもしれない。今後、金利上昇とともにバリュー株物色の流れが強くなると予想される。これからの展開に関しては「同じハイテクセクター内でもグロース株的性格の株からバリュー株的な銘柄へのシフトも予想される」と前出の笹木氏はいう。例えば、半導体関連株でもエヌビディア<NVDA>からインテル<INTC>へ、自動車関連株でもテスラからフォード<F>、GM<GM>、ハイテク株でも高配当利回りのIBM<IBM>的な銘柄が再評価されることも見込まれている。日本株も同様に、三菱商事 <8058> や三井物産 <8031> などの大手商社株のような好業績高配当銘柄が見直されることも予想される。

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