鈴木英之氏【下値リスク再び、FRBタカ派転換に怯える市場】(2) <相場観特集>
―米10年債利回り上昇で高PER銘柄への逆風を意識―
3連休明けとなった11日の東京株式市場は日経平均が下値模索の展開を継続、一時は400円近い下落で2万8000円トビ台まで水準を切り下げる場面があった。大発会こそ大幅高でスタートしたが、その後は米株市場を横目に買いが手控えられている。FRBの金融政策がタカ派色の強いものに変わったことでマーケットには戸惑いもあるようだ。1月から2月にかけて株式市場はどういう波動を描くのか。第一線で活躍する市場関係者2人に今後の見通しを聞いた。
●「全体相場は徐々に下げ渋りも、バリュー株優勢の展開に」
鈴木英之氏(SBI証券 投資情報部長)
日経平均株価は足もとで軟調な値動きとなっている。市場の関心を集めるのは、米国でのインフレ懸念だ。米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表されたドット・チャートでは新年は3回程度の利上げが見込まれているが、フェデラルファンド金利(FFレート)先物では3~4回の利上げを織り込む動きとなっている。これを受け、株式市場は前のめり的にインフレ懸念を織り込みつつあるようだ。
ただ、オミクロン株を含めた新型コロナウイルス感染拡大による影響は、経済指標の伸びの鈍化となってこれから表面化してくる可能性もある。目先的には、今晩のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の公聴会、明晩の米12月消費者物価指数(CPI)などが大きなポイントだ。
今後、2月中下旬頃を視野に入れた場合、日経平均株価のレンジは2万8000~3万円前後を見込んでいる。これから、日米の決算発表が本格化するが、特に今月下旬からの国内企業の決算を機に戻りを試すことを予想する。それまでは、2万8000円近辺をウロウロする展開が見込まれる。
当面はバリュー株優位の展開が予想される。電気自動車(EV)へのシフトを宣言したトヨタ自動車 <7203> など自動車株のほか、配当利回り面でも魅力がある三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> など銀行株は強含みの展開が期待できそうだ。同じく高配当利回りの日本郵船 <9101> など海運株は下がった場面では戻りが狙えると思う。また、日経平均株価の戻りには個別銘柄として同指数への寄与度がトップとなった東京エレクトロン <8035> の上昇が必要であり、同社株の動向は注目されよう。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(すずき・ひでゆき)
早稲田大学卒。リテール営業、調査部、株式部等を経て、SBI証券投資情報部長に。モーニングスター株式会社(投資調査部ゼネラル・マネジャー)へ転籍を経て現職。ラジオ日経、ストックボイス等で相場解説を行っている。
株探ニュース