コロナ禍と健康志向の高まりで注目度アップ、「中食関連」に熱視線 <株探トップ特集>

特集
2022年2月24日 19時30分

―野菜や乳製品を取り入れる人が増加、中食であっても低カロリーや低糖質を意識へ―

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始したことで、ウクライナ情勢を巡る緊迫の度合いが一段と高くなっている。今後はロシアに対する経済制裁や、エネルギーや資源価格をはじめとする物価上昇圧力の高まりによる世界経済停滞も懸念され、株式市場でも先行きに対する不透明感が強まる可能性がある。

こうしたなか注目したいのは、世界経済の影響を受けにくいディフェンシブ性の高い銘柄だ。そのなかでも中食は長期的に拡大トレンドにあったが、新型コロナウイルスの感染拡大により自宅で食事をする人が増えたことを受けて拡大基調が加速しており、その基調は今後も続くとみられている。

●女性の社会進出や高齢化で需要が増加

中食はレストランなど外に出かけて食事をする「外食」と、家庭内で料理を手作りする「内食」の中間に位置し、市販の弁当や惣菜、外食店のテイクアウトなど、家庭外で調理・加工された食品を調理せずに食べること。女性の社会進出や社会の高齢化、男女を問わない晩婚・未婚化などによる共働き・単身世帯の増加に伴い、調理の簡便化需要を満たすものとして需要は拡大傾向にある。

総務省の家計調査によると、主食的調理食品(弁当など)と他の調理食品(惣菜など)を合わせた調理食品の年間支出額(2人以上世帯)は、2020年で13万2494円となり、10年前に比べて3割以上も増加した。前述の要因に加えて、19年10月の消費税増税時に惣菜やテイクアウト商品が軽減税率制度の対象となったことや、コロナ禍で国内の人流が抑制された結果、自宅で食事をする人が増えたことも影響した。

●中食市場は順調に拡大へ

需要が拡大する一方、20年の中食市場はやや減速した。コロナ禍でスーパーなどの惣菜や外食チェーンのテイクアウトが好調だった一方、百貨店やショッピングモールなどの店舗が休業や時短営業をしたこと、駅ビル・駅ナカなどの店舗では人流抑制に伴う客数の減少に見舞われたことなどが要因とされる。矢野経済研究所(東京都中野区)が昨年9月に発表した「惣菜(中食)市場に関する調査を実施(2021年)」によると、20年度の惣菜(中食)市場は、小売金額ベースで前年度比2.1%減の8兆9749億円だった。

ただ今後は、小売・量販店やファストフード店のテイクアウトでは好調なトレンドが継続する見通しであることに加えて、20年度に苦戦を強いられた専門店やコンビニエンスストア、百貨店などでは人流の回復に伴う販売復調が見込まれ、25年度には小売金額ベースで9兆6215億円になると予測しており、市場は成長が期待できそうだ。

●健康志向の高まりも後押し

こうした市場の拡大に加えて、注目されるのが健康意識の高まりによる後押しだ。厚生労働省によると、新型コロナウイルスの感染拡大前(19年11月)と比べて、「現在の食生活がより健康的になった」と回答した人の割合は20.3%、「現在の食生活がより不健康になった」と回答した人の割合は8.2%、「変化なし」と回答した人の割合は71.6%だった。より不健康になった人は、インスタント食品の摂食回数が増えた一方、野菜の摂食回数が減ったが、健康的になった人は野菜や乳製品の摂食回数が有意に増加していることが見て取れる。

こうした消費者の志向を受けて食品メーカーも低カロリー・低糖質など健康に配慮した製品や、野菜をより多くとれるような商品を拡充させている。商品ラインアップの拡充など、このようなメーカー側の取り組みも市場拡大に寄与しそうだ。

●カット野菜や野菜飲料を手掛ける企業に注目

注目銘柄は中食市場の拡大で恩恵を受ける企業だろう。

キユーピー <2809> は、主力の調味料に加えて、カット野菜や惣菜を展開。国内では市販用のカット野菜の売り上げが300億円を目指す規模に拡大しているが、調味料の使用率を向上させるためにもカット野菜の拡大を目指している。また、海外の業務用サラダの展開にも注力しており、中国やタイなどへの展開のほか、更なるグローバル展開を模索している。

カゴメ <2811> は、主力のトマトケチャップのほか、野菜飲料でも高シェアを占めている。中期経営計画のビジョンとして「トマトの会社から野菜の会社に」を掲げており、20年からスタートした「野菜をとろうキャンペーン」を継続するなど成長戦略の起点となる「野菜摂取量を増やす」取り組みにより、国内野菜飲料の深化や海外野菜飲料の育成などを図っている。

カルビー <2229> は、主力のスナック菓子のほか、シリアル食品が成長中だ。国内のシリアル食品はここ最近の健康志向の高まりなどを背景に参入企業が増え、競合が強まっている分野だが、同社では「糖質オフ」などの機能性を強めることでシェアの拡大を狙う。

明治ホールディングス <2269> は、「ブルガリアヨーグルト」のほか、「LG21」「R-1」など 機能性を有したプロバイオティクスヨーグルトを展開している。機能性ヨーグルトは近年、競争が激化している分野で同社もその影響を受けているが、一方でコロナ禍による定番回帰の動きもあってブルガリアヨーグルトは堅調となっている。

このほか、機能性表示の 冷凍食品やレトルト加工品などを展開する日本水産 <1332> やマルハニチロ <1333> などにも注目したい。

●食品容器分野にも注目

食品関連以外の企業にも中食需要拡大の恩恵を受ける企業はある。

中本パックス <7811> は、食料品関連の容器や包装資材に用いられるプラスチックフィルム・シートへのグラビア印刷が主力で、足もとでは冷凍食品・乳製品・惣菜用などのスーパーマーケット向け包材や汎用性の高いテイクアウト・デリバリー用の容器・トレー向け商材、農産物向けフードパックなどが堅調に推移している。また、エフピコ <7947> は食料品や惣菜・弁当などに使われる食品トレー容器の最大手で、足もとでは小売店がビュッフェ形式から容器を使用した売り場へ移行するのに伴う需要やテイクアウト・デリバリー用容器の需要が増加しており、いずれも注目したい。

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