天空のイノベーション、高速浮上するドローン関連株に勝機あり <株探トップ特集>
―法改正とセキュリティーに対するニーズで急展開、国産ドローンの活躍本番が近づく―
次世代成長産業というべきジャンルは自動運転車やヒト型ロボット、メタバースなど数多くあるが、その中の一つにドローンも間違いなく含まれる。「空の革命」と呼ばれて久しいが、着実にその技術や性能は進化しており、株式市場でもドローン 関連株が改めて注目される局面が近づいている。
●航空法改正で急成長見込める産業用ドローン
ドローンは無人で自動飛行する小型航空機として定義され、遠隔操作や人工知能(AI)を活用したコントロール制御によって空中を縦横無尽に移動する。元来は軍事目的で開発され、ウクライナ有事でもドローンの兵器使用が絡んでおり、その点では暗いイメージを与えている。しかし間違った方向で使われているのは、あくまで人間のエゴによるものであり、ドローンそのものが持つ有用性を否定するものでは決してない。
近年では産業用としてのドローン市場が急速に拡大しており、中期的にもマーケットの成長余地は加速度的に高まっていくことが予想される。モノの輸送はもちろん、空撮、人間の行きにくい場所の点検や測量、災害救助、農薬散布、そしてエンターテインメントへの活用などその用途は非常に幅広い分野に及び、今後も産業経済の発展に大きく貢献する重要な役回りを担うことが必至である。
日本では航空法の改正により2022年度から市街地のような有人エリアにおいて一定の条件を満たせばドローンなどの自動飛行が可能となる。その際に操縦者が直接目視できない範囲も飛ばせるようになり、多用途性が格段に広がることになる。現在の国内のドローン市場の規模はインフラ点検と農業向けを中心に数百億円規模(200億~800億円)にとどまっているとみられるが、30年にはこれが数千億円規模へと飛躍的に拡大するとみられている。
●セキュリティー面で“国産”ニーズ高まる
世界に目を向けると中国のドローン最大手DJIが断トツの商品競争力を誇っているが、それは低価格かつ性能の高さが強みとなっている。DJIの商品は日本国内でも高い販売実績を有する。しかし、近年はにわかに風向きが変わった。中国製のドローンは防衛や警察分野で使われる際に、フライトや撮影情報の窃取などセキュリティー面で懸念が指摘されている。ドローンは通信ネットワークを介して飛行・撮影情報をシステムに保存しており、そのためサイバー攻撃などのリスクを考慮した場合、セキュリティーの充実は何よりも優先されるべきものだ。
政府は20年秋に各省庁などが保有している1000機を超えるドローンについて、高度なセキュリティー機能を有する新機種に入れ替える方針を固めた。いうまでもなく、これが国産ドローンに対するニーズを一気に高める背景となっている。
●ドローン初参入で脚光浴びるソニーG
そうしたなか、今後DJIへの急速なキャッチアップが期待される国内企業を挙げるとするならば、まずソニーグループ <6758> が有力視される。同社は自社製のミラーレス一眼レフ「αシリーズ」を搭載することが可能な、世界最小クラスの機体「エアピーク」を開発、昨年11月に出荷を開始している。AV機器や半導体のほかゲーム、音楽、映画などコンテンツ分野まで幅広く展開し、電気自動車(EV)分野への参入でも話題を集めた同社だが、このエアピークがドローン事業では最初の一歩となる。持ち前のブランド力をドローンでも生かし、国内外でシェアを獲得できるかにマーケットの熱い視線が集まることになる。
また、産業向けドローン専業のACSL <6232> [東証M]に対する注目度も高い。同社は画像処理のノウハウを駆使して、屋内での自動飛行に傾注している。GPSに依存しない形での自律飛行が最大の特長で、機体に設置されたカメラと画像処理により位置・方角を把握できる自己位置推定技術を有する。小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」は「2022国際ロボット展」にも展示され、同社の技術の粋を集めたセキュリティーレベルの高い国産ドローンとして脚光を浴び、DJI製品からの需要シフトが見込まれている。
●双葉電はソフトバンクと協業体制に
双葉電子工業 <6986> は蛍光表示管のトップメーカーだったが、現在は同分野から撤退しており、電子部品やラジコン、生産器材などの製造を主力に手掛ける。ドローン分野にも早くから注力し、産業用ドローンによる実証実験で先駆している。今年1月に千葉県の4市が、各市のドローン関連企業が参加するオンライン商談会を開催し、同社はそこで製品や技術を紹介した。「今回は千葉県に限られたが引き合いはそれなりに旺盛で、機会があれば今後もこのような商談会を開催したい」(会社側)としている。また、20年9月からソフトバンク <9434> とは産業向けドローンの開発で協業体制にあり、今後に期待が大きい。
川田テクノロジーズ <3443> は鉄骨、橋梁、PC土木の大手だが建築や機械システム、ロボット分野への展開も厚い。大日本コンサルタントや産業技術総合研究所などと共同で橋梁点検特化型ドローン「マルコ」を開発している。風の影響を受けても安定飛行を継続でき、搭載カメラで構造物の微細なひび割れも見つけることができる。「国内の橋梁は老朽化が進んでいることもあって(点検の)ニーズは高く、当社の橋梁子会社などと連携して受注獲得に力を入れていく方針」(会社側)としている。
大阪の機械商社であるワキタ <8125> は土木建設機械の販売やレンタルを主力としているが、ICT施工に注力するなか測量分野の技術にも長じている。19年10月に工事測量や測量機器の販売を手掛けるCSS技術開発(東京都多摩市)をM&Aにより完全子会社化した。CSS技術開発は3次元設計データの解析技術で国内でも上位にあり、ドローン、3次元レーザースキャナー、MMS(モバイルマッピングシステム)などによる最新の測量技術を有している。「当社はICT施工に力を入れているが、その際にドローンは必要不可欠のアイテムで、今は人気(ひとけ)の少ない山間部などで活用しているが将来的には都市部での活躍機会も広がっていくだろう」(会社側)としている。
●楽天は超高層階へのドローン配送で耳目集める
ネット通販で国内トップクラスの楽天グループ <4755> の存在も忘れてはならない。同社はかなり早い時期からドローンの活用に向け積極的な取り組みをみせ、成長路線をまい進中の米アマゾン・ドット・コム<AMZN>と併走しているようなイメージだ。既に昨年1月には三重県の離島で商品配送を実用化させた実績を持つが、同年12月には、同社と日本郵便の合弁会社であるJP楽天ロジスティクスが都市部の超高層マンションに向けたドローンによるオンデマンド配送に、実証実験として国内で初めて成功し耳目を集めた。
このほか関連銘柄として注目されるのは、GISソフトの開発・販売及びクラウドサービスを展開するドーン <2303> [JQ]。同社は防災関連分野などでドローンの活用に傾注している。また、航空測量を手掛け国土強靱化政策でも重要なポジションを占めるアジア航測 <9233> [東証2]も、ドローンを使った3次元データ活用などで業界のニーズに対応している。農業機械と鋳鉄管のトップメーカーであるクボタ <6326> はスマート農業に経営の重心を置いているが、農薬散布用などでドローンを投入。昨年1月には、イスラエルのアグリテック企業でドローンによる果樹収穫サービスを展開するTevel社に出資したことを発表、同分野での展開力を強めている。
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