窪田朋一郎氏【22年相場も大詰めへ、日経平均の着地点は?】 <相場観特集>
―米雇用統計発表後も底堅さ発揮する米国株市場に追随か―
週明け5日の東京株式市場では、日経平均株価が2万7000円台後半で頑強な値動きを示したが、下値抵抗力を発揮する一方で上値も今一つ重い状況にある。前週末の日経平均が大幅安していたことで、そのリバウンドに期待した向きにとってはやや拍子抜けという感もある。12月相場突入でいよいよ2022年相場の最終コーナーを回ったわけだが、ここから年末に向けて株高トレンドが維持できるのかどうか、相場の先読みに定評のある松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏に見解を聞いた。
●「インフレ警戒感後退で年末高の流れに」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
前週末の米国株市場では、11月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数の伸びが事前の市場コンセンサスを上回ったことなどを受け、いったんは売られたものの、その後は持ち直しNYダウはプラス圏まで株価を浮上させて取引を終えた。今回の雇用統計の結果に関わらず、米国のインフレは既にピークアウトしているという認識でよいと思われる。サービス価格は高止まりしているが、高騰していたコンテナ船市況は既に軟化し、原油市況も最近は弱含みで推移、更に中古車価格なども前月比マイナスに転じるなど、いわゆるモノのインフレはほぼ収まった状態にあるからだ。
FRB高官の相次ぐタカ派的発言などでインフレ警戒ムードは依然として漂ってはいるが、データ的には米インフレは収束の方向に向かっていると考えてよい。したがって、米国株市場はこれまで上値を押さえる最大の材料となっていた要因から徐々に解放され、NYダウ、ナスダック総合株価指数ともに上値指向を強める展開が読める。仮に今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、来年2月1日に結果が開示されるFOMCでの利上げ打ち止めの可能性が示唆された場合は、マーケットに一段と追い風が強まりそうだ。
日本株も基本的に米国のリスク選好の地合いに追随することが期待されるものの、ひとつ厄介なのは外国為替市場で目先1ドル=134円近辺まで円高が加速していることだ。これが輸出セクターなどの重荷となり、その分だけ日経平均の上げ足は鈍くなることが予想される。もっとも下値抵抗力は発揮されそうで、2万7500円前後が12月相場の下限となるのではないか。一方で上値については円高逆風のなかやや天井が下がっているとはいえ、年初につけた高値2万9300円どころを視界に入れてこよう。米国のインフレ警戒感の後退に加え、中国のゼロコロナ政策が段階的にではあるが次第に緩和の方向に向いていることはポジティブ材料となる。
そうしたなか東京市場で物色対象としてマークされるのは、これまで円安によるデメリット株のレッテルを貼られていた銘柄群だ。例えばニトリホールディングス <9843> [東証P]やワークマン <7564> [東証S]、サイゼリヤ <7581> [東証P]などが優位性を発揮する可能性がある。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「マザーズ信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」「アクティビスト追跡ツール」など、これまでにない独自の投資指標を開発。
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