和島英樹のマーケット・フォーキャスト【新春スペシャル】 <新春特別企画>

特集
2025年1月2日 11時00分

株主還元・AI半導体関連が牽引し、日経平均は4万5000円目指す

●24年後半に失速の外国人買いも復活へ

2025年の東京株式市場は、経済の好循環を背景に基調の強い展開となりそうだ。

国内では物価の上昇基調に、賃金の伸びがようやく追いつこうとしている。消費や設備投資の拡大が続けば、企業業績にも追い風になることが期待される。自公少数与党と可処分所得の向上を掲げる国民民主党との連携が進めば、デフレ脱却の道筋が見えてくる可能性がある。

米国では1月に第2次トランプ政権が発足する。減税や規制緩和を推進する方針を明らかにしており、米経済はソフトランディング(軟着陸)から再拡大に進む公算が大きい。

日経平均株価は年末にかけて4万5000円を目指すと想定する。

大手調査機関では26年3月期に10%の増益になると予想している。日経平均株価の1株利益は現在、約2480円(24年12月20日時点)だが、10%増益なら来期の1株利益は2730円程度になる。PER16倍なら4万3700円、16.5倍で4万5000円が見込まれる。なお、24年7月の史上最高値時のPERは17.5倍だった。

需給面では外国人投資家の動向が注目される。24年は年前半こそ買い越しだったが、後半は売りが目立ち、これが株価の圧迫要因になった。企業が自社株買いや増配などROE(株主資本利益率)を向上させる施策を本格化しており、25年はこれを評価した買いが期待できそうだ。

リスク要因は国内では増税路線の浮上。1990年以降のバブル経済崩壊後は、景気が上向くと増税に進んで景気回復の芽を摘んできた経緯がある。海外では米国のインフレや、中国経済のさらなる低迷など。消費や企業業績に影響を与えるようなら、株価の上値が重くなるだろう。

●防衛関連は好業績続く、苦戦の自動車・FAも株価挽回に期待

物色面では、引き続き企業の資本効率の改善に関連するテーマが中心となるだろう。企業はROEの向上策を打ち出している。具体的には前述したように、自社株買いや増配など株主還元策を強化する動きを進めている。24年は主体別売買動向で、自社株買いの動向を示す事業法人は11月までに約7兆7000億円と過去最大の買い越しとなった。25年はさらに増加する可能性がある。ROEの向上が進めば、外国人投資家の買いが入る可能性も高まる。

継続的な還元策を打ち出している三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]などの大手銀行、日本郵船 <9101> [東証P]といった海運など。また、PBRが1倍を割り込んでいる日本製鉄 <5401> [東証P]などの鉄鋼のほか、三菱ケミカルグループ <4188> [東証P]、INPEX <1605> [東証P]、三菱マテリアル <5711> [東証P]などには実施期待がありそうだ。

また、AI(人工知能)半導体関連は外せない展開となろう。データセンター、スマートフォン、自動運転などに用途を広げてきている。AI半導体は短時間に膨大な量の計算をこなすのが特長。製造工程ではチップに切り出して封止(パッケージ)するまでの「後工程」の重要度が増している。AI半導体は後工程でチップの積層化など性能向上のための処理が必要なためだ。切断、研磨、研削装置のディスコ <6146> [東証P]、検査装置のアドバンテスト <6857> [東証P]、後工程材料のレゾナック・ホールディングス <4004> [東証P]、パッケージ装置の芝浦メカトロニクス <6590> [東証P]などが該当する。

データセンター関連では、光ファイバーのフジクラ <5803> [東証P]、空調など施設工事のダイダン <1980> [東証P]、きんでん <1944> [東証P]、変圧器のダイヘン <6622> [東証P]、子会社が電力変動を軽減する蓄電装置を手掛ける武蔵精密工業 <7220> [東証P]などもビジネスチャンスとなろう。

また、半導体関連では主力企業が見直されそうだ。AI半導体の需要は盛り上がったものの、一般的に使われるメモリー(記憶)半導体などは市況の回復が遅れ、株価も低迷を余儀なくされた。25年は需要の回復が見込まれる。前工程に強い東京エレクトロン <8035> [東証P]、ウエハ洗浄装置のSCREENホールディングス <7735> [東証P]、 ウエハ世界大手のSUMCO <3436> [東証P]、超純水装置大手の野村マイクロ・サイエンス <6254> [東証P]など。

また、防衛関連株の好業績が継続しそうだ。政府が防衛費をGDP(国内総生産)の2%に倍増させる方針で、27年度までの5年間で43兆円を投入することが決まっている。従来は採算が見合わないケースがあったが、売上高営業利益率は最大15%を想定して発注することとなっている。三菱重工業 <7011> [東証P]、川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]、東京計器 <7721> [東証P]、日本製鋼所 <5631> [東証P]が軸となる。

一方、24年に苦戦したセクターの株価挽回も想定される。例えば自動車は検査不正問題に加え、EV(電気自動車)シフトの失速、米国での販売苦戦や中国経済低迷の影響を受けた。また、中国経済の苦戦は、工場自動化(FA)投資の鈍化につながっている。25年はこれらが解消に向かう可能性がある。

自動車ではトヨタ自動車 <7203> [東証P]、SUBARU <7270> [東証P]、ホンダ <7267> [東証P]。FAではNC(数値制御)装置のファナック <6954> [東証P]、サーボモーターの安川電機 <6506> [東証P]、搬送システムのダイフク <6383> [東証P]などが挙げられる。

(2024年12月21日 記/次回は2025年2月2日 配信予定)

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