イランと米国の戦闘終結期待で原油相場は急落も、根深い溝はそのままか? <コモディティ特集>
戦闘終結に向けて米国とイランの協議は大詰めに入っているようだ。ルビオ米国務長官は「イランとの交渉はあと数日かかる」と合意が近いことを示唆したほか、イラン最高指導者の軍事顧問であるモフセン・レザーイー氏は米国との交渉が最終段階にあると述べたうえで、「次の50年間にわたってイランに安全保障が確立されるという結論に達するだろう」との認識を示した。
●最大の争点を棚上げにして妥結を急ぐ
イラン外務省のバガエイ報道官は「14項目の覚書は戦争の終結と、ホルムズ海峡での安全な通航を確保するためのイランの措置と引き換えに、米海軍の封鎖解除に焦点を当てている」と述べた。この14項目には、イランに対する制裁解除や、戦争被害に対する補償、イラン資産の凍結解除、レバノンの含む全ての前線での戦闘停止、将来的な軍事衝突の回避を保証する枠組み、中東の軍事基地からの米軍の徹底、機雷の除去などが含まれている可能性があるが、同報道官によるとホルムズ海峡の管理についての詳細は覚書には含まれておらず、イランの核開発問題と同様に、協議が先延ばしとなる見通し。イランの核開発とホルムズ海峡の管理は米国とイランが対立する最大の争点だが、この超重要な議題を一時棚上げにして、まずは戦闘終結で妥結を急いでいるのが現状だろう。
イラン学生通信(ISNA)によると、核開発協議については米国が14項目の覚書の内容を確約することが条件である。また、イラン外務省はホルムズ海峡の航行に「通行料」は課されないが、「環境税」を徴収することをオマーンと協議していると明らかにした。イラン外務省は「イランとオマーンが共同で策定した安全な通過のためのプロトコルは、国際法に準拠した責任ある措置だ」、「ホルムズ海峡、ペルシャ湾、オマーン海の航行サービスと環境保護にかかる費用は賄われる必要がある」と述べている。ホルムズ海峡の封鎖解除見通しが強まりつつあるものの、イラン戦争前の自由なホルムズ海峡に戻ることはなさそうで、イランの支配下に置かれる可能性が高い。
●両国の深い溝はそのまま、停戦期待はまぼろしか
核開発問題についての協議を一時見送り、戦闘終結に向けて協議が積み重ねられているなか、トランプ米大統領はイランに高濃縮ウランをすぐに引き渡すよう要求している。また、ルビオ米国務長官は「国際海峡での徴収システムは容認できず、世界への脅威であり完全に違法だ」と述べており、通行料や環境税などは一切認めない意向であるが、イランの発表に基づくとホルムズ海峡の管理についての協議は核開発問題と同様に先送りされる公算だ。
これまでの発表や報道をまとめると、妥結できそうな議題については妥結し、交渉が困難な議題を後回しにしようとしている印象で、協議が前進しているという認識が先走っている。米国とイランの深い溝はおそらくそのまま残されている。核開発やホルムズ海峡の支配について詳細な協議を行うために必要な合意を米国が結ぼうとしているなら、米国にとってこの合意はイランに対する敗北を認めることに等しい。14項目の覚書の内容が今のところ不明ではあるものの、米国が譲歩している可能性が高い。戦闘終結期待から原油相場が下落し、下値を探っていた米国債への売りが一巡したことは米経済が一時的に安堵できる要因ではあるものの、トランプ米大統領が敗戦処理を始めるとは到底思えない。停戦期待はただのまぼろしだろう。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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