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AI革命の中心は? 伝説的マクロ投資家が描く二つの世界地図<13Fで読み解く米著名投資家の売買戦略>第3回

特集
2026年8月7日 10時00分

【今回分析する米投資家】

スタンレー・ドラッケンミラー(デュケーヌ・ファミリー・オフィス)

デビッド・テッパー(アパルーサ・マネジメント)

─高まる地政学的リスクの中で分かれる二人の着眼点─

2026年1-3月期の金融市場は、AI(人工知能)ブームの熱狂が続く一方で、投資家が改めて「世界情勢」を意識させられた四半期でもあった。年明けにはトランプ政権によるベネズエラへの軍事作戦が市場を揺らし、同国のマドゥロ大統領拘束の報が原油市場を緊張させた。さらに2月末には米国とイスラエルによるイラン攻撃が伝わり、中東情勢は一気に不透明感を増す。市場の関心はAIや半導体だけでなく、エネルギー価格、資源供給網、さらには国家間のパワーバランスへと広がっていた。

こうした局面で注目されたのが、ウォール街を代表する二人の伝説的マクロ投資家である。一人はジョージ・ソロスとともに1992年の「ポンド危機」で巨額の利益を上げ、「世界はどちらへ向かうのか」という大局観を武器としてきたスタンレー・ドラッケンミラー。もう一人は金融危機後の銀行株投資で知られ、「恐怖の買い手」と称されるデビッド・テッパーである。興味深いことに、両者ともAI革命そのものには強気だった。しかし2026年1-3月期の「フォーム13F(13F:機関投資家の株式保有報告書)」を見ると、その資金はまったく異なる方向へ向かっていた。

ドラッケンミラーはアルゼンチンやブラジルなど新興国関連資産への投資を拡大し、資源株やヘルスケア銘柄への傾斜を強めた。一方のテッパーは、中国・韓国・台湾を含むアジア市場への投資を維持しながら、半導体や電力インフラ関連への投資を拡大している。実際、ドラッケンミラーは米国株や金融株へのエクスポージャー(資産配分)縮小を進めていた一方、テッパーはAIインフラ関連への資金シフトをより鮮明にしていた。

同じ世界を見ながら、なぜ二人は異なる場所へ資金を向けたのか。13Fから浮かび上がるのは、銘柄選択の違いではなく、世界の変化をどう捉えるかという二人の投資哲学そのものなのである。(執筆・若桑カズヲ、編集・樫原史朗)

◆ヘルスケアを主軸に、世界のエネルギー資本移動を追うドラッケンミラー

デュケーヌ・ファミリー・オフィス 13Fポートフォリオ上位20銘柄一覧(2026年3月31日時点/5月15日公表)
総評価額=33億7682万8000ドル(前四半期比=11億1762万2000ドル)
順位銘柄名業種株価
($)
株価騰落率評価額
($)
評価額増減保有比率
(%)
保有比率増減保有株式数保有株式数増減行動区分
1ナテラ
<NTRA>
ヘルスケア199.99-12.70%612,691,000+37,364,00018.14%+5.313,063,606+552,249買い増し
2インスメッド
<INSM>
ヘルスケア163.52-6.04%188,717,000-69,167,0005.59%-0.141,154,090-327,662一部売却
3台湾積体電路製造(TSMC)
<TSM>
テクノロジー337.9511.21%167,380,000+2,342,0004.96%+1.28495,280-47,805一部売却
4iシェアーズMSCIブラジルETF(コール)
<EWZ>
-38.3920.84%162,313,000+27,989,0004.81%+1.824,228,000-変化無し
5インベスコS&P・500
イコール・ウェイトETF(コール)<RSP>
-191.92-157,566,000-4.67%-821,000-新規購入
6YPF
<YPF>
エネルギー46.2227.82%149,566,000+127,617,0004.43%+3.943,235,962+2,628,972買い増し
7iシェアーズMSCIブラジルETF
<EWZ>
-38.3920.84%131,915,000+19,050,0003.91%+1.403,436,170-116,405一部売却
8BBBフーズ
<TBBB>
生活必需品35.375.93%109,972,000+20,649,0003.26%+1.273,109,202+434,050買い増し
9アルコア
<AA>
工業66.3324.82%99,057,000+25,934,0002.93%+1.311,493,390+117,340買い増し
10ニューアムステルダム・ファーマ
<NAMS>
ヘルスケア32.01-8.75%98,275,000-9,426,0002.91%-0.533,070,146-変化無し
11シー
<SE>
一般消費財82.81-35.09%91,083,000-29,358,0002.70%+0.021,099,905+155,785買い増し
12STマイクロエレクトロニクス
<STM>
テクノロジー34.5533.19%90,275,000+70,209,0002.67%+2.232,612,880+1,839,325買い増し
13ウッドワード
<WWD>
エネルギー357.9218.39%75,648,000-103,002,0002.24%-1.73211,355-379,575一部売却
14テバ・ファーマシューティカル・
インダストリーズ<TEVA>
ヘルスケア30.12-3.49%71,604,000-111,751,0002.12%-1.962,377,285-3,497,585一部売却
15ロク
<ROKU>
通信94.62-12.79%70,983,000+7,735,0002.10%+0.69750,190+167,210買い増し
16ブロードコム
<AVGO>
テクノロジー309.51-60,650,000-1.80%-195,955-新規購入
17State・Street・SPDR・S&P・500
ETF(コール)<SPY>
-650.34-4.63%58,531,000-2,842,0001.73%+0.3790,000-変化無し
18クーパン
<CPNG>
一般消費財18.88-19.97%50,362,000-109,411,0001.49%-2.062,667,485-4,105,424一部売却
19オプション・ケア・ヘルス
<OPCH>
ヘルスケア26.92-15.51%50,301,000-5,325,0001.49%+0.251,868,550+122,600買い増し
20アマゾン・ドット・コム(コール)
<AMZN>
一般消費財208.27-9.77%41,654,000+18,572,0001.23%+0.72200,000+100,000買い増し
※全70銘柄のうち上位20銘柄を掲載。株価騰落率、評価額増減、保有比率増減、保有株式数増減は前四半期(2025年12月31日時点)との比較数値。

スタンレー・ドラッケンミラー率いるデュケーヌ・ファミリー・オフィスの13Fを見ると、最大の特徴は「地域テーマへの賭け」だった。最大保有銘柄は遺伝子診断大手ナテラ<NTRA>であり、インスメッド<INSM>やニューアムステルダム・ファーマ<NAMS>などのヘルスケア銘柄も上位を占める。しかし今回の13Fでより興味深いのは、新興国への傾斜であった。

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