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AI活用で従業員当たりの粗利大幅上昇、エニマインド十河宏輔CEOに聞く<トップインタビュー>

特集
2026年9月15日 10時00分

─韓国コスメの日本市場進出案件が拡大、M&Aは相談件数倍増に─

AnyMind Group<5027>は主力の法人ブランド支援事業で、生産体制の確立からマーケティング、ECの構築・運営、物流まで顧客企業のバリューチェーン全体を支援できるソリューションを提供。成長著しい東南アジアを中心として既に15カ国・地域へ進出している。社内AIの活用により従業員1人当たりの収益性を大幅に強化しつつ、M&Aや米国市場進出に取り組むことで一層の成長加速を目指す。今後の事業展望について、十河宏輔最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。(聞き手・末藤潤也)

●東南アジアのニーズに合った「BPaaS」モデル

──エニマインドのビジネスモデルや強みを教えてください。

当社は「BPaaS」(ビジネス・プロセス・アズ・ア・サービス)というビジネスモデルを採用しています。BPaaSではSaaSモデルのようにソフトウェアを提供する段階に留まらず、そのソフトウェアで実際に顧客が進めたいと考える業務プロセスを丸ごと引き受けます。東南アジアではEC運用などの業務を内製化せず、外部委託する傾向があり、BPaaSは東南アジアのニーズとマッチしたビジネスモデルと言えます。

ソフトウェアの提供で完結するSaaSと比べ、人手がかかる部分もありましたが、足もとではオペレーションの自動化が進んでいます。マーケティング・EC業務に特化したAIエージェント「Any AIエージェント」を活用し、人員を増やさずとも顧客数や支援範囲を拡大できる体制を構築しつつあります。

当社の強みはバリューチェーン全体をサービス領域としていること、東南アジアを中心として15カ国・地域に事業基盤を有することです。各国での事業活動に関するデータの管理はグローバル展開する顧客企業にとって大きな負担ですが、当社1社との取引でバリューチェーン全体と複数国のデータ管理をまとめてできる点がエニマインドの競争優位性につながっています。また、SNSでのマーケティングの効果が実際のECや実店舗の売り上げにどのくらい反映されたかも計測でき、顧客は独自のデータに基づいたマーケティングの適正化を実現できます。

●日本・韓国の粗利は計画大幅超え

──26年12月期第2四半期累計(1~6月)連結決算は売上高382億900万円(前年同期比47.8%増)、営業利益10億5500万円(同41.6%増)と大幅な増収増益を達成。8月14日の取引終了後に決算を発表し、翌営業日にはストップ高まで買われました。改めて6月中間期の振り返りを聞かせてください。

6月中間期は主力の法人ブランド支援事業において、全地域で利益を大きく成長させることができました。なかでも、日本・韓国セグメントは売上総利益で前年同期比80%増の水準となりました。複数国で一気通貫の支援を受けられる点が評価されたほか、AIにより生成された配信者が24時間365日ライブコマースを配信する「AnyLive」(エニーライブ)をはじめとするソリューションの強化が功を奏したと考えています。

東南アジアにおける法人ブランド支援事業の売上総利益は前年同期比52%増でした。ベトナムの好調が目立ちました。当社は2016年の創業以来、東南アジアのなかでもタイとベトナム、インドネシアでの事業展開に注力してきた経緯があり、この3市場では特に先行者利益を確保できています。東南アジアは市場全体のデータが乏しく、シェアの計測は難しいものの、当社は各国のクリエイターやEC、物流のデータを着実に蓄積してきました。これから市場拡大が見込めるエリアで、競合他社に対しデータの量・質ともに優位性を確立しています。

クリエイター支援事業も好調でした。日本国内でのタレントマネジメントが業績を牽引しています。広告・タイアップからグッズ販売、ライブなどのイベント展開といったタレント活動の収益化に必要なサービスを一通り内製化し、タレントの方にとって利便性が高い仕組みを構築してきました。広告・タイアップの取引で多くの実績を積み上げてきた法人ブランド支援事業とのシナジーで、案件をしっかり確保できる点も魅力になっていると思います。

──中期経営計画における27年12月期目標として、営業利益63億円以上(今期は30億6000万円の見通し)を掲げています。今後、成長を加速するため特に注力する国・地域などがあれば教えてください。

基本的に全地域で市場の成長が続いており、事業を拡大する余地はまだまだあります。直近で戦略的に伸ばそうと考えている国は市場規模が大きい日本です。シンガポール創業の当社が日本市場に注力し始めたのはここ数年の話ですが、当社のソリューションへの評価に関し手応えを感じています。

国境を越えた取引にも力を入れており、最近は件数が増加しています。特に韓国コスメの日本市場向けマーケティングや日本・東南アジア企業による中国本土向けマーケティング、中国企業による日本市場向けのマーケティングを支援する案件などが業績に貢献しています。15カ国に事業基盤を有する我々だからこそ提供できるサービスを展開していきます。

そのほか、米国市場の開拓も進めていきます。米国での商品販売や日本へのインバウンド誘致を支援するサービスを展開するほか、日本や東南アジアなどで実績を積み重ねてきたAIを活用したソリューションについて、米国企業への販売を検討しています。

●従業員1人当たりの粗利34%増を実現

──成長戦略としてはどのようなものを考えていらっしゃいますか。

現在マーケティング支援だけ、ECの運営・構築支援だけを利用している顧客に対し他の段階での支援も積極的に提案していきます。加えて、AIネイティブな事業構造への転換とM&Aによる事業拡大を進めていきます。

実際、第2四半期(4~6月)はAI前提のワークフローの導入により、従業員1人当たりの月間売上総利益が前年同期比34%増の112万円と生産性がかなり向上しました。マーケティングにおいては、AIエージェントを活用する少数精鋭のチームにプランニング業務を集約しています。商談から案件整理、市場調査、訴求内容の策定やインフルエンサーの選定、提案書の作成などまでプロセス全体の自動化が進んでいます。人によるレビューを通じてクオリティーコントロールをしていますが、基本的に提案以外のプロセスは自動化できるものと考えています。

AIネイティブな事業構造への転換に関し、当社内で先行しているのは日本です。事業構造の転換はトップがコミットメントして、現場に寄り添い、オペレーションを実際に試し、場合によっては組織図を変える必要が出てきます。全社で同時に取り組むには負荷が大きく、優先順位をつけながら進めなければなりません。未着手の地域も多く、AIを活用した事業構造への転換を通じ、従業員1人当たりの月間売上総利益を伸ばす余地がまだまだあります。日本の事例・実績をタイやベトナム、インドネシアといった従業員数が多い拠点へ優先的に導入していきます。

●15件のM&A全てで買収後の事業成長達成

──これまでM&Aを駆使しながら事業を成長させてきました。今後の方針などについてお聞かせください。

我々がM&Aを積極的に活用しながら成長しているというイメージを、各国の多くの企業に持っていただけるようになったと思っています。従来は当社から候補先の企業にアプローチするケースが多かったのですが、最近は先方からお問い合わせをいただくケースが増えています。ご相談いただく案件数は前年の2倍くらいに膨らんでいます。

M&A資金の調達は基本的に営業キャッシュフローと借り入れで行います。M&A先の経営陣に買収後も一定程度コミットメントしてもらいたい場合に、株式交換をする可能性はあります。この場合は株価水準を見ながら対応している市場買い付けで取得した自社株のプールを活用します。

これまで15件のM&Aを実行してきました。一度も減損損失を計上したことはなく、全ての案件で買収後の事業成長を実現してきました。当社にとって解像度が高い領域を対象とし、再現性を持ったM&AとPMI(統合プロセス)を実施するノウハウを蓄積しています。今年1月にクロージングした3件も順調です。今後も良い案があれば積極的に検討していきたいと考えています。

◇十河宏輔(そごう・こうすけ)

2016年にシンガポールで現AnyMind Groupを設立。創業1年で6カ国・地域に事業展開し、8年で15カ国・地域、従業員2300人を超える規模に拡大。23年には東証グロース市場への上場を果たす。全拠点・事業を統括し、事業成長を牽引し続けている。Forbes JAPAN誌「日本の起業家ランキング2022」でTOP10にランクインし、世界最大級の起業家支援団体Endeavorによる「エンデバー・アントレプレナー」にも選出される。

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