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PBR1倍割れ銘柄の宝庫、再編機運高まる「放送局」関連にズームイン <株探トップ特集>

特集
2026年10月8日 19時30分

―凋落する「メディアの王様」は、規制緩和で息を吹き返すか―

総務省は9月28日、1つの放送局が同じ地域で2つのチャンネルを持つ「1局2波」を認める放送法の改正省令を施行した。8月に地上波テレビ放送局を対象にした「マスメディア集中排除原則」の見直し案が電波監理審議会で承認されたことを受けての改正だ。特定資本が複数の放送局を支配することを防ぎ、言論の多様性を維持することを目的とした同原則は、戦後の放送行政の基本方針となっていたが、インターネットの台頭や人口減による地方局の経営悪化などの状況を受け、かねてから日本民間放送連盟では見直しを求める声が高まっていた。今回の改正は、その要望を政府が受け入れたもので、事業環境の悪化が続くわが国放送業界にとっては、待望の規制緩和だ。他方、東証によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業への是正要請が強まる中、放送局はPBR1倍割れ企業の“宝庫”でもある。はたして今回の規制緩和は、各局の企業価値向上に結び付くのだろうか。

●同一地域で「1局2波」が可能に

周知のように国内の民間放送局は、在京キー局を中心に5つのネットワーク(系列)を形成している。キー局を頂点に、関東、中京、近畿の広域放送局、更に県ごとに県域放送局が属する形が基本だ。今回の規制緩和により、系列局そのものは維持しつつ、放送局同士の経営統合が解禁され、一つの法人が複数の局を持つことが可能になる。業界と制度は異なるが、独占禁止法の運用が弾力化され、地方銀行の合従連衡が進んだことを思い起こさせるようなインパクトを感じる。

背景には、民間放送局の経営環境の悪化がある。電通グループ <4324> [東証P]傘下の電通の統計によると、わが国のテレビ広告市場(地上波)は最盛期、2000年の2兆円超から25年は1兆6000億円超へと約20%縮小。媒体別広告費構成比でも、インターネット広告の50.2%に対して、テレビ広告は衛星放送を含めても21.8%にとどまり、かつての「メディアの王様」の面影はない。特に地方放送局は、人口減少による視聴者数や広告需要の減少が顕著で、一企業で放送局を維持する余力がなくなってきている。合従連衡を通した経営の合理化は最優先の課題となっているのだ。

では今回の規制緩和が、放送局各社にどのように作用するのか。まず予想されるのが、キー局の持ち株会社主導によるネットワーク傘下の地方局の統合・再編が進むことだ。ネットワーク内での統合は、07年の放送法改正によって制度上は可能となっているが、実際には一部でしか進んでいない。だが今回の規制緩和を契機に、改めて再編の機運が高まる可能性がある。

もう一つは、地方局同士の再編だ。ケースとしては、同一県内の異なるネットワークに属する放送局を集約する形と、同じネットワーク内の隣接する地方局同士が統合し、より広域での放送局となる形がある。いずれも放送インフラの共通化や管理コストの削減による経営効率向上が期待でき、今回の規制緩和の真の狙いはここにあるとも言われている。ただし、いずれのパターンもコスト削減とともに、収益力の向上を実現しなければ、単なる救済合併になってしまう。投資家の視点に立てば、再編・統合が株主利益に沿ったものなのかを慎重に吟味していくことが重要となる。以上の点を踏まえ、各社の動向と今後の展開を考察する。

●フジHD騒動は放送業界の「他山の石」となるか

まず、フジ・メディア・ホールディングス <4676> [東証P]については、現時点での投資判断というより、放送局が企業価値を上げていくためには何が必要なのかを考えるためのケーススタディとして紹介したい。きっかけは05年のライブドアによる親会社、ニッポン放送買収問題だ。このお茶の間を巻き込んだ騒動を経て、同社は08年に放送業界ではいち早く持ち株会社化。ニッポン放送やサンケイビルを非上場化したうえで傘下に収め、メディア・コンテンツと都市開発・観光の2事業体制となった。

ところが、24年に子会社フジテレビジョンでの人権・コンプライアンス問題が発覚。再びお茶の間を騒がし、スポンサー離れによって放送関連事業が大赤字となったことは記憶に新しい。その後、同局と因縁浅からぬ旧村上ファンド系のアクティビストによる株式買い占めを受け、今年2月には2350億円の自己株取得を実施し、不動産関連など本業以外の事業の外部資本の導入・売却を図る方針を発表。株主優待拡充や増配など株主還元策も強化した。同ファンドの要望を大幅に受け入れる形で「手打ち」となったのだ。その結果、配当利回りは5%台に乗せ、PER(株価収益率)は地上波放送局で唯一の20倍超え、同じくPBRも唯一、1倍を超えた。

放送局にとって、フジHDを巡る一連の動きの最大の教訓は、事業の収益性が低く(低ROE)、株価の評価が低い(低PBR)場合には、アクティビストの標的になりやすいという事実を改めて思い知らされたことだ。更に不動産など本業以外の優良な資産を有している場合には、事業分離の圧力もかかりやすい。だが、こうした企業は短期的な資本効率を上げるだけでも株価は上昇する。実際、“外圧”を受けての結果ではあるが、この騒動によって同局は、劇的な企業価値の向上を実現している。他局にとっても「他山の石」となるはずだ。

●業界再編有力候補、TBSHD系の3つの地方局

TBSホールディングス <9401> [東証P]は、1951年開局のラジオ東京を発祥とし、メディア・コンテンツ事業に加え、ライフスタイル事業、不動産事業も展開する。かつては毎日新聞社が大株主だったが、時とともに資本関係が薄まり、安定株主が不在となったところでフジテレビ騒動と同時期の2005年から数年間、楽天グループ <4755> [東証P]による株式買い占めのターゲットとなった。TBSHDには本社隣接地の東京・赤坂の不動産、東京エレクトロン <8035> [東証P]の株式など、業界トップクラスと言われる本業の放送事業以外の巨大な含み資産がある。それでいて、PBRは0.5倍台という割安感は、20年前と変わらない。つまり、フジHD同様の改善余地があるということだ。

また、TBSHDはネットワークの形成が早かったため、地域の有力企業が出資した上場系列局が数多く存在することも特色だ。中京地区の広域局である中部日本放送 <9402> [名証P]、福岡の基幹局であるRKB毎日ホールディングス <9407> [福証]、新潟を地盤とするBSNメディアホールディングス <9408> [東証S]などだ。いずれもPBRは1倍を大きく下回っているが、中でもCBCは0.4倍強、RKBHDは0.3倍台と際立っている。こうした割安感を背景に、各社とも株価は年初来、徐々に下値を切り上げているが、今回の規制緩和によって業界再編が本格化すれば、その主役となる立ち位置にあり、更に上値を追う可能性が高い。

日本テレビホールディングス <9404> [東証P]は、1953年に日本初の民間テレビ放送として開局した。読売新聞グループ本社が大株主で、本業である放送事業の強さはTBSHDと双璧と言われる。2025年にはネットワーク内の札幌テレビ放送、中京テレビ放送、読売テレビ放送、福岡放送の4局が持ち株会社・読売中京FSホールディングスを設立。北海道から九州までの主要局の経営統合は、広域的なネットワーク再編の先駆例として注目される。株価は年初来、下落基調を続けているが、これは他のキー局と比べて放送事業への依存度が高く、広告収入減少の影響が大きいことがある。有料動画配信サービス「Hulu」や23年に買収したスタジオジブリなど伸びしろは多く、足もと3000円割れの株価は買い場を提供していると判断することもできる。

●放送業界は“オワコン”の見方を変えられるか

テレビ朝日ホールディングス <9409> [東証P]は、朝日新聞社が大株主で、主力のメディア・コンテンツ事業の他に、シアターや音楽フェスなどリアルイベントにも注力している。今期からスタートした4カ年経営計画では、ROE7%台、配当性向40%という財務目標を掲げている。ネット放送局「AbemaTV」に設立当初から出資するなど、従来のテレビ放送以外の新分野開拓にも積極的だ。なお、ネットワークに属する上場企業・朝日放送グループホールディングス <9405> [東証P]は、近畿広域局としての老舗であり、番組制作力に定評がある。同じく朝日新聞社が大株主でもあることから、今後の系列局再編の可能性は低くない。

テレビ東京ホールディングス <9413> [東証P]は、日本経済新聞社が33%の議決権を保有する後発の関東広域局で、近畿、中京、北海道、九州など6つの地方局でネットワークを形成、日経グループらしく経済番組の質の高さに定評がある。他のキー局と異なり、全国規模でのネットワークは形成していないため、ネットワーク内の再編はあまりチャンスがないかもしれないが、身軽な分、独立局との統合などでチャンスとなる可能性もある。

いずれにしても地上波放送局は、フジHD以外は各局ともにPBRが1倍を大幅に下回り、株式市場の評価は高くない。“オワコン”という市場の厳しい見方を変えるためにも、ドラスチックな業界再編による収益性向上、株主還元の強化など思い切った資本政策の変更が待たれる。逆に言えば、そうした施策を講じれば、昨年のフジHD同様、市場の見方は大きく変わることになる。

最後に業界再編の動きとは離れるが、日本BS放送 <9414> [東証S]を挙げたい。ビックカメラ <3048> [東証P]の連結子会社で、無料で視聴可能なBS放送局だ。テレビ通販やアニメ番組に強みがある。特筆すべきは財務面の強さで、コスト管理の徹底により自己資本比率が90%台と、放送業界としては異例の高水準にある。配当増や自社株買いなど、財務・資本政策の変更があれば、評価が一変する可能性もあるだろう。

株探ニュース

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