マクロ両巨頭の投資判断に映るAI相場、この先の風景<13Fで読み解く米著名投資家の売買戦略>第5回
【今回分析する米投資家】
スタンレー・ドラッケンミラー(デュケーヌ・ファミリー・オフィス)
2026年第2四半期(4~6月期)の米国株式市場については前回詳しく触れたため、ここでは繰り返さない。ただ、今回取り上げる二人の売買を読み解くうえで、見落とせない変化があった。AI(人工知能)相場の焦点が、「生成AIは成長するのか」という段階から、どの企業が実際に利益を獲得するのかを見極める段階へ移り始めたことである。つまり、AIの成長は既定路線で、「巨額投資に見合う収益を上げているか」が問われ始めたのである。
その象徴の一つが、ブロードコム<AVGO>だった。同社の26年11月期第2四半期(3~5月期)におけるAI半導体売上高は前年同期比2.4倍の108億ドルに達し、会社側は次の四半期に160億ドルまで拡大すると予想した。内容だけを見れば好決算と言える。だが、市場は素直には反応しなかった。第3四半期のガイダンスを含め、期待に届かなかったとして、発表後は大きく売り込まれた。AI投資による事業拡大は数字で裏付けられたが、投資家にとっては、その成長が株価にどこまで織り込まれているかが新たな問題となったのだ。
こうした局面で注目されるのが、ウォール街を代表する二人の著名投資家である。一人は、金融危機後の銀行株投資など、市場が恐怖に包まれた場面で大胆に買い向かうことで知られるデビッド・テッパー。もう一人は、世界の金利、通貨、資本移動を読み、大きな流れが変わる場面で投資先を素早く切り替えてきたスタンレー・ドラッケンミラーである。興味深いことに、二人ともAI革命そのものを否定しているわけではない。しかし、26年第2四半期のフォーム13F(13F=機関投資家の株式保有報告書)を見ると、両者の資金は異なる方向へ向かっていた。
テッパーは、AIサービスや半導体、メモリー、製造装置、データセンターというAI供給網への投資を強化した。これに対しドラッケンミラーは、半導体関連を残しながら、ヘルスケア、航空、海外株、小型株へと投資対象を広げた。同じAI相場を見ながら、なぜ二人は異なる場所へ資金を向けたのか。今回の13Fから浮かび上がるのは、銘柄選択の違いだけではない。成長が確認された分野をさらに買うのか、それとも市場の期待が高まった分野から次の機会へ移るのかという、二人の「時間軸」の違いなのである。
(執筆・若桑カズヲ、編集・樫原史朗)
◆クラウドから半導体製造装置まで、AI供給網を組み上げるテッパー