アベル、ウッド、クラーマン、それぞれの「不確実性」の捉え方<13Fで読み解く米著名投資家の売買戦略>第4回
【今回分析する米投資家】
─投資手腕が試される相場でカリスマ3人が取った投資行動とは─
2026年第2四半期(4-6月期)の米国株式市場は、主要指数の動きを見る限り、総じて堅調な 推移を示しながらも、見る角度によって様々な表情を見せた局面だった。米イランの一時的な停戦合意から地政学的リスクが緩和に向かう一方、米連邦準備制度理事会(FRB)議長の交代によって金融政策の不確実性が高まるなど、相場を取り巻く環境が大きく変化する中、AI(人工知能)投資が再び勢いを取り戻し、半導体、データセンターなどのAI関連セクターに資金が流れ込んだ。
サイズ別では大型株を主体とするS&P500種指数の当該四半期パフォーマンスは15%上昇であったが、小型株を主体とするラッセル2000指数は同21%上昇と、小型株が大型株を上回った。バリュー面ではグロース株が17%上昇とバリュー株の13%を上回り、セクター別では情報技術セクターを多く含むナスダック100指数が28%上昇。さらにフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は88%上昇という突出したリターンを記録した。半面、エネルギーセクターは13%下落と冴えず、テーマや業種によってパフォーマンスの明暗が極端に分かれる四半期だった。
こうした展開は、米著名投資家らにとっては、難しいが必ずしも悪くない環境である。あるヘッジファンドは、「地政学、金融政策、技術革新を巡る不確実性の高まりが資産間、銘柄間の変動率を高め、アルファ(市場平均を上回る超過収益)獲得の環境を支えている」と指摘した。別の資産運用会社も、割高なバリュエーションと政策不安が残る半面、「柔軟な運用者には選別機会が生じている」との見方を示している。
つまり、ベータ(市場平均並みの収益)を求めるだけなら適度な追い風が吹いている状態だが、それとともにより高い収益を求める機会も存在した相場だったということだ。もちろんその場合、テーマを見誤れば置き去りにされる。言ってみれば、投資家としての手腕が試される投資環境だったとも言える。
ではそんな相場で、カリスマたちはどのような投資判断を下したのか。今回はグレッグ・アベル(バークシャー・ハサウェイ)、セス・クラーマン(バウポスト・グループ)、キャシー・ウッド(アーク・インベストメント・マネジメント)の26年第2四半期・フォーム13F(13F=機関投資家の株式保有報告書)の動きを追う。(執筆・若桑カズヲ、編集・樫原史朗)
◆なぜ、アベルはアルファベットを大幅に買い増したのか
2026年初めからグレッグ・アベルが率いるバークシャー・ハサウェイ<BRK.B>の13Fポートフォリオは、6月末に2993億ドルとなり、3月末の2631億ドルから約14%増えた。最大の変化はアルファベット<GOOG><GOOGL>である。議決権付きA株を2454万株、約45%買い増し、議決権のないC株も2360万株を買い増し、約7.6倍に増やした。両クラスを合算すると期末評価額は約378億ドルに達し、ポートフォリオの約12.6%を占め、一躍、保有比率第3位銘柄へと躍進した。アップル<AAPL> 、アメリカン・エキスプレス<AXP>、コカ・コーラ<KO>という長年の中核を動かさず、次の大型投資先としてアルファベットの評価を一段引き上げた格好である。