雨宮京子氏【ついに2万3000円の壁突破、夏相場はこうなる】(1) <相場観特集>
―風向き変わる東京マーケット、ここからの展望と戦略は―
週明け21日の東京株式市場は上値指向を強め、日経平均株価は上値の心理的なフシ目となっていた大台ラインをついに突破、2月2日以来の2万3000円台乗せを果たした。米長期金利の上昇を懸念視する動きは今のところ限定的、足もとは米中貿易摩擦に対する懸念も後退したことで日米ともに株価の先高期待が漂い始めた。ここからの株式市場の見通しと物色の方向性について、先読みに定評のある有力市場関係者の見解を聞いた。
●「満を持しての大台替え、ここからの上値は軽い」
雨宮京子氏(SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアドバイザー)
日経平均は2万3000円台を前にしてもみ合いが長かったが、満を持して上値のフシを突破してきたことで、ここからの展望も明るいとみている。全体相場は押し目待ちに押し目なしの展開となる可能性もある。基本的に米国経済の強さが米長期金利の上昇の要因であり、日米金利差拡大を通じて外国為替市場ではドル買い・円売りの動きが顕著となっている。国内は決算発表通過で企業のガイダンスリスクからも解放され、ここでの円安進行は企業業績見通しの増額要因として投資家心理をフォローする。
さらに6月に予定される米朝首脳会談では、日本の拉致問題の前進に発展する可能性も高いと考えており、もしそうなった場合には東京市場でもリスクオンの動きが一気に強まりそうだ。北朝鮮は経済制裁によりかなり厳しい状態にあることが推察され、それが今回の急転直下の融和路線に反映された。これは強気に対応した米国の方向性が正しかったことを証明するもので、日本株にとってもポジティブな流れの形成をもたらすことになる。
全体相場は薄商いではあるが上値指向が強く、裏を返せば売り圧力の乏しさが改めて認識されるところだ。1月23日につけた年初来高値2万4124円の更新にはもうしばらく時間がかかるかもしれないが、2万3000円台は大方が考える以上に上値が軽いのではないかとみている。
個別では、個人的見解ながら次の5銘柄に上値余地ありと考える。まずハブ <3030> に注目。同社は英国風のパブをチェーン展開しているが、間もなくサッカーのワールドカップが開幕するなかで、売上高拡大期待が膨らむ。中期的にも来年にはワールドカップラクビーが日本で開催、再来年は東京五輪と追い風材料が続く。また、中堅化学メーカーのクレハ <4023> は、原油高が顕著となるなかシェールガス向け掘削部材のPGA(ポリグリコール酸)が18年度から本格拡大見通しにあり、業績見通しは上振れる可能性がある。人工知能(AI)関連ではFRONTEO <2158> [東証M]に一段の上昇を期待。AI活用のデータ解析事業で、訴訟時の証拠保全などのニッチ分野での高い実力が再評価されそうだ。
このほか、好業績が光るアサカ理研 <5724> [JQ]は希少金属回収・精製を行っているが、リチウムイオン電池に欠かせないコバルトの需給逼迫を受けて今後も商機を見出す公算が大きい。最後にクラウドワークス <3900> [東証M]もかなり強い動きにあり、順張りで面白いとみている。安倍政権が進める「働き方改革」に見合う銘柄で、フリーターへの貸付を行う「与信ビジネス」も開始している。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(あめみや・きょうこ)
SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアドバイザー。元カリスマ証券レディ。日興証券時代は全国トップの営業実績を持つ。ラジオ短波(現ラジオNIKKEI)、長野FM放送アナウンサー、『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)記者、日経CNBCキャスター、テレビ東京マーケットレポーター、ストックボイスキャスターなどを経て現在に至る。
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