世界に先駆け「情報銀行」動き出す、データ主義時代の躍進株は? <株探トップ特集>

特集
2019年7月10日 19時30分

―第1弾となる認定事業者が決定、企業の参入相次ぎ2019年は“情報銀行元年”に―

世界に先駆けた新しい試みである「情報銀行」が国内で本格的に動き出す。これは“21世紀の石油”と評されるパーソナルデータ(個人情報)を適切に管理し、運用することを目的としており、このほど第1弾となる認定事業者が決まった。データ主義時代を迎えるなか、情報銀行は大きな価値を生む存在になり得ることから、今後さまざまな企業の参入が予想され、2019年は「情報銀行元年」と位置付けられる年になりそうだ。

●GAFAのデータ寡占に歯止め

パーソナルデータを巡っては、GAFAと呼ばれる大手IT企業4社(Google、Apple、Facebook、Amazon)によるデータの寡占化が世界的に問題視されている。これら企業はサービス提供と引き換えに膨大なデータを蓄積・活用しているが、ユーザーの同意なく集められたものも少なくない。また個人のデータがどこにどう使われているのかを把握する術がないのが実情だ。

欧州では個人情報の保護という基本的人権の確保を目的に「一般データ保護規則(GDPR)」が18年5月に施行されたが、日本は政府が主導するかたちで取扱機関を設けて個人の権利を守りつつ情報流通を図る取り組みが推し進められており、それを担うのが情報銀行となる。

●参入機会うかがう企業続々

ITの業界団体、日本IT団体連盟(東京都千代田区)は6月21日、三井住友トラスト・ホールディングス <8309> 傘下の三井住友信託銀行と、イオン <8267> やソニー <6758> などが出資するフェリカポケットマーケティング(東京都港区)の2社を「情報銀行」の第1弾として認定した。IT団体連盟は総務省と情報銀行の指針を作成しており、いわば国のお墨付きを得たかたちだ。

情報銀行とは、個人からその人の個人情報を預かり、預かったデータを蓄積・管理・提供する事業者のこと。情報銀行は預かった個人情報を他の事業者に提供することで利益を獲得し、そこで獲得した利益は情報を提供した個人に“利子”として還元される。外部提供先へのデータ提供の可否は利用者自ら判断することができ、提供したデータの対価がもたらされるという点で、世界的にも独自性が高い試みとなる。

例えば、5月に情報銀行プラットフォーム「スカパー!情報銀行」の実証実験開始を発表したスカパーJSATホールディングス <9412> は、視聴者の視聴履歴やアンケート情報を外部企業に提供し、データ登録・開示に同意したユーザーにはその対価として視聴料を割り引くことを想定。この実験では、インテージホールディングス <4326> が保有するモニターのうちスカパー!契約者を対象とし、参加者自身のパーソナルデータを管理・活用できるPDS(パーソナルデータストア)機能を内蔵したDataSign(東京都渋谷区)開発の情報銀行サービス「paspit(パスピット)」と連携させることで、データ活用企業との情報連携・流通を管理する。

情報銀行の創設に向けた動きは他の企業でも進んでおり、電通 <4324> グループのマイデータ・インテリジェンスは7月3日から、一般モニター約1万2000人が参加する「情報銀行トライアル企画」をスタート。キリンホールディングス <2503> やビジョナリーホールディングス <9263> [JQ]など10社も参画し、各企業がマーケティング活用や製品・サービス開発につなげたり、参加モニターが企業からの対価(サービス、商品、金銭など)を受け取ったりできる仕組みづくりを進める計画だ。

また、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> 傘下の三菱UFJ信託銀行が昨年11月に開始した情報信託プラットフォーム「DPRIME」ベータ版の試行には、アシックス <7936> やNTTデータ <9613> 、テックファームホールディングス <3625> [JQG]など10社が協力している。

このほかでは、今年1月に情報銀行向けのシステムプラットフォームの開発・提供を共同で進めると発表した富士通 <6702> 及び大日本印刷 <7912> 、昨年11月から情報銀行向けソリューションの提供を始めているエルテス <3967> [東証M]もマークしていきたい。

●信用スコア関連株にも注目

情報銀行に準ずる信用スコアリング事業にも企業の関心が高まっている。信用スコアとは、個人に紐づくさまざまな属性を分析し、信用力を数値化したもので、スコアの値によって融資の際の金利や貸出枠の優遇などといった特典を受けることができる。信用スコアが信用力分析のためにデータを集めるのに対し、情報銀行は企業などが利用できるデータを収集するという違いはあるが、どちらもパーソナルデータを蓄積する点は同じ。今後、信用スコアを手掛ける企業が情報銀行に乗り出すことも考えられる。

信用スコアを使ったビジネスの草分けといえるのが、みずほフィナンシャルグループ <8411> などが出資するJ.Score(ジェイスコア)だ。同社は、昨年10月から人工知能(AI)が判定した個人の信用ランク(格付け)を使って他の企業が特定の利用者層にアクセスできる新サービスを開始した。

直近では、LINE <3938> が6月27日からグループ会社を通じて、独自のスコアリングサービス「LINE Score」の提供をスタートし、ヤフー <4689> は7月から自社が保有するビッグデータから開発した独自のスコア「Yahoo!スコア」事業を新たに開始。

NTTドコモ <9437> は、金融機関がドコモの回線を利用している顧客向けに融資する仕組みとして、「ドコモ レンディングプラットフォーム」の提供を19年度上期中にも始める予定。これはドコモのビッグデータを活用した「ドコモスコアリング」やスマートフォンアプリ「レンディングマネージャー」の提供と、同社が手掛ける各種サービスとの連携という3つの特長を備えている。

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