明日の株式相場に向けて=アクセル全開「半導体材料」の大車輪ラリー
きょう(3日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1667円高の6万8402円と急反発。一時2000円超の急騰を演じ、取引終盤に伸び悩んだものの6万8000円台で着地した。終値で6万7000円台をつけることなく跳び越えた格好である。上がらない持ち株を傍らに、奔流と化す二極化相場を唖然とした面持ちで眺めている投資家も少なくないのではないか。日経平均6万円時代というフレーズがメディアに踊ったのはつい最近のこと。このまま走り続けると、時代ではなく6万円シーズンだったということになる。
前日の押し目は何だったのかと言わせるほどの、半導体セクター特化型のブル相場である。こう見ると日経平均がきのうの後場寄りに1400円近い下落で6万5000円台半ばまで下押した場面は、目を瞑ってでも拾うチャンスだったということになる。前日は欧州時間からリスクオンの流れにあったが、米国株市場では取引開始直後の朝方こそやや気迷いムードが漂ったものの、その後は水かさが増すように広範囲に買いが広がり全体を押し上げた。しかし、株価の上昇エンジンとなっているのは半導体関連、これに尽きる。フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が6%近い急騰で青空圏を舞い上がっており、まさしくリスクオンの象徴となっている。
前日の米株市場では半導体製造装置世界首位のアプライド・マテリアルズ<AMAT>が7%高、EUV露光装置でシェアを独占するASMLホールディング<ASML>が4.7%高と値を飛ばし、投資家のセンチメントを強気に傾けた。しかし、何といっても圧巻だったのはファブレス半導体設計・開発のマーベル・テクノロジー<MRVL>が33%高という暴騰を演じたことだ。同社はファブレス企業という点でエヌビディア<NVDA>と同業態だが、商品領域は大きく異なる。エヌビディアのAI半導体が生成AIの脳(中枢)とすれば、神経系を担うデータインフラ(ネットワーク)がマーベルの主戦場である。両社が競合しないということもあってか、台湾の半導体イベントで登壇したエヌビディアのジェンスン・ファンCEOが「次の1兆ドル企業はマーベル」と持ち上げたことが、同社の株価を突き上げた。これはリップサービスの要素もあったとは思うが、AIエージェント時代を実現させる舞台装置としての不可欠性を予期しての偽らざる本音だったかもしれない。
米国株市場と比べれば、東京市場ではまだAIバブルの芽が吹いたような状態であり、その点USにキャッチアップするまでの距離の差を考慮すれば、まだかなりの伸びしろがあるという見方も成り立つ。時価総額を爆発的に増加させるキオクシアホールディングス<285A>でも時価総額は43兆円ソコソコだ。1兆ドルクラブに入るにはあと100兆円以上時価総額を増やす必要がある。さすがにここから株価が3倍以上に化けるというシナリオはかなり高いハードルだが、ある意味今は変身途上という売り込みトークがしばらくは通用することになる。キオクシアがボーダレスで海外マネーの投資ターゲットとなっているとすれば、同社株の値動きが今後AIバブルとの距離を測る中期的なバロメーターとなりそうだ。
そうしたなか、AIデータセンターやそれをつなぐ通信インフラを作り出すマテリアル系企業、いわゆるツルハシ銘柄に焦点が当たっている。前日のSOX指数急騰を横目にナスダック指数の値動きが鈍かったのは違和感があるが、それはソフトウェア関連株に売りがかさみ上昇圧力を相殺したからである。きょうの東京市場でも見事にソフトウェア関連株には半導体周辺と真逆の風が吹いた。アンソロピック・ショックの余韻を今なお引きずるなか、AIを動かすインフラを提供する企業こそが今の大車輪相場の中核である、という認識をマーケットに植え付けた1日であった。
そして、足もとでは半導体材料を手掛ける企業に対する物色人気が急激に高まっている。MLCC人気とは別の追い越し車線が1本引かれたイメージである。ラサ工業<4022>がストップ高で値上がり率トップに買われ号砲を鳴らした感があるが、きょうはマスクブランクスを手掛けるAGC<5201>やHOYA<7741>、フォトレジストとシリコンウエハー双方で世界に名を馳せる信越化学工業<4063>、封止剤や表面研磨材で強みを持つレゾナック・ホールディングス<4004>、半導体パッケージ基板トップのイビデン<4062>などが値を飛ばした。このほか、ここから注目しておきたい企業としては四国化成ホールディングス<4099>やトリケミカル研究所<4369>、三菱ケミカルグループ<4188>、ステラ ケミファ<4109>などが挙げられる。また、アミノ酸の製法を横展開した半導体パッケージ基板用絶縁材料(高性能ビルドアップフィルム)を独占供給する味の素<2802>も25日移動平均線を踏み台に上値追い再開が期待できそうだ。
あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約が朝方取引開始前に開示されるほか、5月の輸入車販売(日本自動車輸入組合)、5月の車名別新車販売(自販連)、5月の軽自動車販売(全軽自協)がいずれも前場取引時間中に発表される。また、個別に積水ハウス<1928>の2~4月期決算発表が予定されている。海外では4月のユーロ圏小売売上高に耳目が集まるほか、米国では週間の新規失業保険申請件数、1~3月期労働生産性指数・改定値などにマーケットの関心が高い。(銀)