いま再び「グローバルニッチトップ」 経産省“お墨付き”優良企業の価値 <株探トップ特集>

特集
2020年7月8日 19時30分

―気迷い相場で輝く成長率“2.21倍”、100選のなかの注目は―

日経平均株価は6月9日に戻り高値2万3185円をつけ、その後は上げ一服商状となっている。世界的に新型コロナウイルスの感染が再拡大していることが経済正常化の重荷になるとの警戒感と、各国政府・中央銀行による財政・金融政策への期待感が交錯しているといった様子だ。相場の方向感はつかみにくい状況が続き、牽引役となる物色対象も見いだしにくくなっている。足もとでは半導体関連株に活路を求める動きもみられるが、“気迷い相場”ではニッチ(隙間)分野で強みを持つ銘柄にも一考の余地がある。

●選定企業は113社

経済産業省は6月30日、世界市場のニッチ分野で勝ち抜いている企業や、国際情勢の変化のなかでサプライチェーン(供給網)上の重要性が増している部素材などの事業を持つ優良な企業を選んだ2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」を発表した。前回実施された13年度から日本企業を取り巻く事業環境は大きく変化し、デジタル経済の進展や世界の政治経済情勢の変動、少子高齢化のような社会構造の変化などを踏まえ、公募249社のうち113社が選定された。

部門ごとの選定企業数は、機械・加工部門が61社(うち大企業15社、中堅企業13社、中小企業33社)、素材・化学部門が24社(大企業10社、中堅企業6社、中小企業8社)、電気・電子部門が20社(大企業11社、中小企業9社)、消費財・その他部門が8社(大企業1社、中堅企業2社、中小企業5社)となった。重視されたポイントは収益性や競争優位性、戦略性、国際性の4つで、選定企業は単純平均で世界シェア43.4%、営業利益率12.7%、海外売上比率45.0%という企業群となっている。また、同省によると各企業が提供している製品・サービスの現在の市場規模と5~10年後に予想される市場規模について聴取した結果、平均してグローバルニッチトップ(GNT)の市場規模は2.21倍の成長率になったという。

足もとのグローバル市場は新型コロナの感染拡大の影響が依然として続いており、こうしたなか世界で勝負するためには他社にはない何らかの強みを持つことが重要になる。特定分野の技術力を磨くことで市場の寡占度を高め、価格決定権を握れば値下げ競争に巻き込まれにくい。梶山弘志経産相は「GNTに選定された企業は多くの企業にとって羅針盤と位置付けられ、GNT企業に対して経産省のネットワークやリソースを駆使して、事業展開に最大限サポートしたい」と述べていることもあり、関連銘柄に注目したい。

●機械・加工部門

NITTOK <6145> [JQ]は精密FAライン設備が評価され、前回から連続受賞した。同社は経済・事業環境の変化にあわせ、制御、搬送、ハンドリング、画像処理、RFID(無線自動識別)、センシング、通信など自動生産に関するさまざまな技術の深化・開発を進めているほか、これと並行して従来の加工機・自動機を組み合わせて作るラインではなく、トータル制御ができる搬送ラインをプラットフォームにして高い生産性を実現するラインに注力している。

ナブテスコ <6268> は、主に産業用ロボットの関節用途として事業展開している「精密減速機 RV」が対象となった。この製品は軽量かつコンパクトでありながら、優れた耐久性と高い位置決め精度を持っているのが特長で、1986年に市販して以来さまざまな分野で活用され、特に中大型産業用ロボット関節用途の世界市場で高いシェアを誇っているという。

このほかの上場企業では、フコク <5185> の新車装着用ワイパーブレードラバー、兼房 <5984> [東証2]のFerro Maxコールドソー、オーエスジー <6136> のねじ切り工具、ソディック <6143> のNC放電加工機、日進工具 <6157> の小径エンドミル、ミクロン精密 <6159> [JQ]の心なし研削盤、レオン自動機 <6272> の包あん機、ユニオンツール <6278> のプリント配線板用超硬ドリル、日精エー・エス・ビー機械 <6284> のプラスチックボトル生産機を選定。

技研製作所 <6289> のサイレントパイラー、小森コーポレーション <6349> の商業用オフセット印刷機や証券印刷機、酉島製作所 <6363> の海水淡水化プラント向け大型ポンプ、大同工業 <6373> の二輪車用ドライブチェーン、日機装 <6376> の航空機逆噴射装置向けカスケード、昭和真空 <6384> [JQ]の水晶振動子製造工程用の周波数調整装置、THK <6481> の直線運動部の転がり化を実現したLMガイド、川崎重工業 <7012> の航空用ギヤボックス製品、太平洋工業 <7250> の自動車用タイヤバルブ、ジャムコ <7408> の大型航空機・旅客機用厨房設備及び化粧室などの内装品も選ばれている。

●素材・化学部門

東洋合成工業 <4970> [JQ]は、世界で約50%のマーケットシェアを持つ感光性材料(半導体やフラットパネルディスプレーの製造に使用されるフォトレジストの主要原料)が認定された。第5世代移動通信システム(5G)IoT(モノのインターネット)AI(人工知能)電気自動車自動運転といった先端技術に必要な半導体に使用されることから、今後も世界規模で需要が拡大する見通しだ。

フルヤ金属 <7826> [JQ]は、イリジウム化合物(有機EL燐光材向け一次材料)が対象。前回認定を受けたイリジウムの加工技術を応用し新たな分野で高いシェアを持つ部材を開発・提供したことや、原料のリサイクル精製・供給体制の整備を含めた活動が評価された。

また、旭化成 <3407> の再生セルロール繊維キュプラ、ジェイテックコーポレーション <3446> [東証M]の放射光用X線ミラー、ニッポン高度紙工業 <3891> [JQ]のアルミ電解コンデンサ用セパレータ、第一稀元素化学工業 <4082> の自動車排ガス浄化触媒用材料、旭有機材 <4216> のプラスチック製バルブ、愛知製鋼 <5482> のNd系異方性ボンド磁石、パウダーテック <5695> [JQ]の電子写真用キャリア、大阪チタニウムテクノロジーズ <5726> のスポンジチタン、朝日インテック <7747> のPTCAガイドワイヤーも認定されている。

●電気・電子部門

レーザーテック <6920> は、マスク欠陥検査装置(マスク欠陥検査装置MATRICSシリーズ、アクティニックEUVパターンマスク欠陥検査装置 ACTIS A150)の優れた技術が半導体産業に大きく貢献し、世界で高い市場占有率を持つことが評価された。

加えて、テイカ <4027> の医療用超音波画像診断機用セラミックス振動子、イビデン <4062> の最先端ICパッケージ基板、東京応化工業 <4186> の半導体製造用フォトレジストや高純度化学薬品、古野電気 <6814> の商船向けレーダー、横河電機 <6841> の安全計装システム「ProSafe-RS」、エスペック <6859> の環境試験器、オプテックスグループ <6914> の自動ドアセンサーも選ばれている。

●消費財・その他部門

上場企業では、マニー <7730> の眼科ナイフ、萩原工業 <7856> のバルチップ(コンクリート・モルタル補強用オレフィン樹脂短繊維)、興研 <7963> [JQ]のマイティミクロンフィルターが対象となっており、今後改めて注目される場面もありそうだ。

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