明日の株式相場戦略=テレワークや半導体が織りなす強気
週明け(13日)の東京株式市場は日経平均が493円高の2万2784円と急速な切り返しに転じた。前週末の238円安は数千億円規模のETF分配金捻出の売りが取り沙汰され、日銀の1000億円規模のETF買いでは太刀打ちできず仕方ない面もあるが、きょうは“倍返し”の戻りを演じるところに今の地合いの強さがある。見方によってはバブル的な要素も否めず、これは多くの市場関係者が口にするところだが、だからこそ懐疑の中で育つ相場が継続しているともいえる。超緩和政策によりかつてなく流動性が高まったマネーは株式市場や金相場などに流れ込んでいるが、実勢経済は新型コロナの感染拡大が漬物石のような存在で人々にデフレマインドを強いている。株式市場と実勢経済のギャップにどこで修正が入るか、これは正直相場に聞くしかない。今週は米中の重要経済指標が相次ぎ、日欧の中央銀行による金融政策決定会合も予定され、本来であれば、ひと際メディアが騒がしい週となるところだが、相場の方向性に大きな変化は出ないと見る向きが多いようだ。
個別ではここまで全体相場を主導してきた東京エレクトロン<8035>やレーザーテック<6920>など半導体関連 のシンボルストックは上げ一服ムードも出ているが、それでも下値には買い注文がぎっしり這わされ大きくバランスを崩すような気配がない。5Gの普及やテレワーク 導入に伴う半導体特需というのは、世界的に同時進行している社会構造の変化がベースとなっているだけに、流れ込む資金も強力だ。いったん引いても波状的に押し寄せてくる。過熱感もないとは言えないが、これまでを振り返っても分かる通り半導体関連は基本的に押し目買いで報われる相場だ。
一方、テレワーク周辺ではITソリューション関連の銘柄も相変わらず収益好環境を享受している。きょうは当欄でも継続的に追ってきたノムラシステムコーポレーション<3940>がストップ高に買われる人気となった。同社株は株価が3ケタ台にもかかわらず、株式分割(1株→2株)を実施したのがうまいところで、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連の一角として初動段階にあった人気に拍車をかけた。分割後1か月半で株価は1.5倍化した。さかのぼって2019年7月にも今回と同様に2分割を発表しており、当時は分割後いったん利食われたものの、売り一巡後はストップ高を号砲に確変モードに突入、安値から短時日で倍化した経緯がある。
そして、もう一つ4月初旬から継続マークしているITbookホールディングス<1447>も値動きは荒いが、うねりを伴って株価を変貌させた昇竜銘柄。きょうは朝方ストップ高に買われた後は漸次上げ幅を縮小させる、相変わらずトレーダー泣かせの値運びだが、時価総額130億円ソコソコでこの商いを普通にこなしてしまうキャパシティは否が応でもマーケットの視線を集める。官公庁案件に強く、政府が普及に本腰を入れるマイナンバー関連のシンボルストック的なポジションをいつの間にか占めている。
このほか、ソフトバンク<9434>と「有線給電ドローン無線中継システム」で連携する双葉電子工業<6986>が底値もみ合いを経て動意含みだが、業績面での買いにくさは否めない。ただし、自然災害で国土強靭化が改めて注目される折、ドローン周辺銘柄に買いの矛先が向く契機にはなる。そのなか、建設コンサルとしても実力を有するアジア航測<9233>はマークしておく価値がありそうだ。
チャートの強い銘柄では5G関連で材料性に富むリバーエレテック<6666>が押し目を入れながらも次第高のトレンドを形成中。目先動意含みの低位株では、ホットスタンプ印刷など特殊印刷機メーカーで、独自のアルゴリズムを使った画像検査装置でグローバル展開を狙うナビタス<6276>。同社株は400円未満と値ごろ感があり、PBR0.5倍台と解散価値の半値水準に放置されている。このほか、アクモス<6888>も押し目狙いで有力。リテールテック関連のラクーンホールディングス<3031>なども強力な波動で目が行く。
日程面では、あすは5月の鉱工業生産指数確報値が後場取引時間中に発表されるほか、日銀の金融政策決定会合が15日までの日程で開催される。海外では6月の中国貿易統計、4~6月期のシンガポールGDP速報値、5月のユーロ圏鉱工業生産、7月のZEW独景気予測指数。米国では6月の米CPI発表に市場の注目度が高い。
(中村潤一)