中国・欧州の電力危機波及、グリーン化追い風の非鉄株に本格復活機運 <株探トップ特集>
―経済再開やEV需要が市況押し上げ、インフレ懸念台頭で投機資金流入も―
非鉄株に復活機運が高まっている。世界でコロナ禍から経済再開(リオープン)に向けての動きが強まるとともに、中国や欧州での電力不足の影響が波及するなか、原油価格の高騰と足並みを揃える格好で、 アルミニウムや 亜鉛などを中心に非鉄価格は軒並み高となっている。インフレ懸念が強まり余剰資金が非鉄市場に流入している、との見方も浮上。非鉄関連株に見直し余地が膨らんでいる。
●アルミニウム、亜鉛、銅、ニッケルなど非鉄市況が軒並み高
足もとで非鉄市況が軒並み上昇している。アルミニウム価格は、ロンドン金属取引所(LME)の3ヵ月先物は、2900ドル前後で推移。今月中旬には一時1トン3200ドル台に値を上げ、2008年7月の最高値3380ドルに接近した。また、亜鉛価格も今月に入り一時1トン3900ドル台に乗せ07年以来、14年ぶりの高値水準に上昇した。
更に、非鉄相場の指標となる銅価格は今月に入り1トン1万ドルを回復。今年5月につけた最高値1万700ドル台に迫っている。ニッケル価格も1トン2万ドル台に上昇し、14年以来の高値水準に上昇している。
●中国や欧州の電力不足が市場に多大な影響与える
非鉄市況が急伸している背景には、ひとつにはコロナ禍からの回復に向けた経済再開による需要回復の動きがある。また、電気自動車(EV)や太陽光発電では、 銅やアルミニウムが大量に使われるなど、経済のグリーン化に向けた新たな需要も発生し需給を引き締めている。
更に、中国と欧州を襲った電力危機の影響は無視できない。中国はいまも石炭火力発電が主流だが、景気の回復に伴う電力需要の増加や炭鉱事故による安全規制の強化、オーストラリアからの石炭輸入停止も重なり石炭の供給不足を招き、これが電力不足をもたらした。特に、アルミニウムは精錬工程での電力消費量が多いことから、世界最大のアルミ生産国である中国の電力不足は市場に大きな影響を与えている。
また、欧州も天然ガス価格の上昇などを背景に電力危機に陥っている。このなか、アルミニウムと同様に製造時に大量の電力を使う亜鉛が多大な影響を被った。具体的には、ベルギーの亜鉛大手、ニルスターは電力コストの高騰を要因に欧州の3つの精錬所での亜鉛生産を最大で50%減少させると発表。亜鉛の需給がタイト化するとの観測から、価格は一気に上昇した。
銅も電力価格の上昇がコスト高となり供給減要因となるとの見方があるほか、世界経済の動向と強い関係をもつため、経済再開で需要が膨らむとの観測が出ている。加えて、ニッケルはEV向けの需要増が続くとの期待が強い。
●経済再開やEV需要で非鉄市況は高止まり状態も
当面の非鉄市況をみるうえで注目されているのは、中国や欧州の電力不足がいつまで続くかだ。直近では、中国政府が石炭価格の抑制や電力不足の緩和に向けた施策を打ち出したことで、中国の電力不足が緩和するとの見方が浮上し、非鉄市況は高値圏から一服する動きとなった。
ただ、「非鉄価格は目先的な調整があっても、高止まり基調は続くのではないか」と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は言う。非鉄市況は、世界的な景気動向に左右される面が強く、足もとの経済再開の動きは追い風だ。また、高水準のEV需要も続く。加えて、「経済がインフレ基調となるなかでは非鉄に投資資金が流入しやすい」(芥田氏)ことも相場の押し上げ要因に働く。同氏は、「例えば、銅価格は最高値を更新してもおかしくない」とみており、先行き1万1000ドルも視野に入れている。経済グリーン化にも関係し長期的な成長が見込める非鉄株には見直し余地が大きいだろう。
●住友鉱、大紀ア、東邦鉛、エンビプロなど注目
個別銘柄では、非鉄最大手の住友金属鉱山 <5713> を中心に、アルミニウムでは、日本軽金属ホールディングス <5703> やUACJ <5741> 、大紀アルミニウム工業所 <5702> など。亜鉛では東邦亜鉛 <5707> 、銅では三菱マテリアル <5711> やDOWAホールディングス <5714> 、三井金属 <5706> など。ニッケルでは大平洋金属 <5541> 、石炭では三井松島ホールディングス <1518> や住石ホールディングス <1514> など。非鉄リサイクルで松田産業 <7456> やアサヒホールディングス <5857> 、アサカ理研 <5724> [JQ]、エンビプロ・ホールディングス <5698> など。
商社では、三菱商事 <8058> や三井物産 <8031> 、丸紅 <8002> 、双日 <2768> といった大手のほか、白銅 <7637> やアルコニックス <3036> などにも注目したい。
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