動乱相場は“最強”を追え!「珠玉の大幅増益株スペシャル」10連弾 <株探トップ特集>
―ウクライナ情勢に右往左往する市場、米金融政策の転換に身構える投資マネー―
東京株式市場は向かい風に打たれながら不安定な値動きを余儀なくされ、日経平均は2万7000円大台を挟み右往左往する展開が続いている。2022年相場は年初から1月下旬にかけて急落したものの、1月27日の取引時間中に2万6000円トビ台で底値を確認してリバウンドに転じた。しかし、戻り相場も一本調子には行かない。2万7000円台後半は売り圧力が強く、何度も押し戻される状況が続いている。全体相場はウクライナを巡る地政学リスクと、米インフレに対する懸念から下値リスクを意識せざるを得ない局面に遭遇している。
●ウクライナに絡む「ニュース」で乱高下
週末18日の東京市場は前日の米国株市場でNYダウやナスダック総合株価指数など主要指数が揃って大幅安となったことを受け、朝方から大きく売り優勢に傾いた。寄り付き時点で日経平均は2万7000円大台を割り込み、その後も下げ幅を広げ、一時440円安まで売り込まれる場面があった。
この2万7000円ラインは投資家の強弱観が対立するなかでの分水嶺となっている感も強い。2万7000円台を割り込むと悲観ムードが一気に高まるが、2万6000円台で一段と下げ幅を広げると、今度は突っ込み警戒からの空売り買い戻しが機能して切り返すというパターンだ。この日も午前10時半過ぎに急激な巻き戻しが入り、日経平均はあっという間に下げ幅を縮小、2万7000円台に復帰した。これは、緊迫が続くウクライナ情勢を巡り、米ロ外相会談が来週にも行われると報じられたことが、AIアルゴリズムによるヘッドライントレードで買い戻しを誘発したものだ。先物主導の高速プログラム売買であり、一般投資家にすれば臨戦不可能な空中戦だが、今の相場がそれだけウクライナ情勢に絡むニュースで振り回されていることの証である。
●有事リスクを煽る米国、その実態は?
では、ウクライナ情勢が好転した場合は、株式市場も一気に視界が開けるのかというと、そういうわけにもいかないようだ。「(ウクライナ問題に関する)米ブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相の会談で仮に解決に向けた出口が見えたとして、株価は短期的にはポジティブに反応するが、瞬間的な上昇にとどまり恩恵を受けるのはデイトレーダーのみだろう」(中堅証券ストラテジスト)という指摘がある。ウクライナ問題に絡み相場のボラティリティは高まっているが、反応はリアルタイムに限られ、全体相場の方向性を決めるような材料ではない。実際、ロシア側にすれば軍事衝突を回避することが前提で「落としどころはまだ見えないが、ある意味出来レース」(同)という。
また、「米国はやたらと有事リスクを煽っているように見えるが、インフレに頭を抱えるバイデン政権にとって、そして保有株のポジションを低めたい海外投資家にとってこのウクライナ問題は隠れ蓑的な要素が多分にある」(ネット証券アナリスト)という見解もある。「海外投資家は、全体相場が商いを伴い上下動を繰り返しているうちに高PERのグロース株のポジション整理を進めている」(同)という。株価がリバウンドに転じた時には当然保有株をキャッシュ化する好機となるが、株価が下がった時にもウクライナ問題の影響にかこつけることができる。いわば“ステルス売り”だ。
●本当の敵は米インフレに対する懸念
いうまでもなく、今の相場にとって最大の敵は世界の中央銀行が金融緩和策から引き締め策へ転換しているということだ。とりわけFRBのタカ派傾斜のスピードが際立っており、3月中旬のFOMCを境に、パウエルFRB議長は金融の蛇口を締めることに躍起となるのではないかという思惑が強まっている。
この場合、米インフレに対する懸念とFRBの急ピッチな金融引き締め政策に対する懸念は同義である。当面はFOMCを前に、FRB理事や地区連銀総裁のコメントにマーケットの耳目が集まることになるが、直近では、物価統計を重視することで知られるセントルイス連銀のブラード総裁が、インフレが制御不能に陥る危険性に直面しているとの認識を示したことで、株式市場にとっては逆風が一段と強まったと見る向きも少なくない。
●東証1部銘柄を中心に有望銘柄を絞り込む
ウクライナ情勢に一喜一憂する間に海外ファンドなどによる“ステルス売り”が続いているとすれば、それに対応した戦略を立てる必要がある。特に海外投資家の現物売りが目立つのが、新興市場(マザーズ市場とジャスダック市場)である。個人投資家が信用取引を使って一貫して買い下がっているマザーズ市場では、この日は一時フシ目の700台を割り込み連日の昨年来安値に沈んだ。ネット証券大手が開示するマザーズの信用評価損益率はマイナス30%台での推移が続いており、いったんは収まった追い証回避の投げ売りが再び警戒される局面にある。今は、以前のようにテーマ買いで将来の有望株を買っても、足もとの高PERを嫌気して売る勢力の方がはるかに強い。その観点では、新興市場の銘柄は好実態株であってもディスアドバンテージが大きく、投資対象としては避けておくのが無難だ。
マザーズ市場がここから大きく下値に突っ込んだ場面では悪目買いのチャンスとなるが、そうしたケースを除いては、やはり東証1部市場を軸に個別株戦略のシナリオを描いた方が有利だ。そして、その際に銘柄選別の条件として最も重要視されるのは、やはりその企業のファンダメンタルズということになる。
今期業績が絶好調かつ来期も成長トレンドが維持できそうな銘柄で、中期成長力に富み、更にPERにも割高感のないものが選択肢としては最強となる。今回のトップ特集では、3月決算企業を中心にそうした条件を満たす銘柄群から10銘柄抜粋。今期業績の上方修正を交え、大幅営業増益見通しにある有望株にスポットを当てた。
●本物の輝きを放つ大幅増益株10選
◎関東電化工業 <4047>
半導体向けエッチングガスなど特殊ガスが好調なほか、2次電池電解質(六フッ化リン酸リチウム)など電池材料も需要を捉える。22年3月期はこれまでに3度にわたる上方修正を行い、売上高は前期比19%増の620億円、営業利益は同91%増の108億円を見込んでいる。世界的な半導体設備投資拡大の動きを受け、エッチングガスの生産能力増強を計画し収益機会の獲得に余念がない。来期以降も増収増益トレンドが維持される可能性は高い。PERは9倍前後と割安。17年12月につけた1415円高値奪回が視野に。
◎アルプスアルパイン <6770>
電子部品と車載情報機器を手掛けるが、電子部品はゲーム機器やスマートフォン向けが堅調な推移をみせ、特にスマホ用カメラアクチュエーターが想定以上の伸びを示し収益に貢献している。22年3月期業績予想は営業利益を従来予想の280億円から305億円(前期比2.3倍)に上方修正、23年3月期も増益基調は維持できそうだ。株価は1月末にマドを開けて買われた後調整を入れているが、長期トレンドでは大底圏に位置している。17年11月から4年3ヵ月にわたった下降トレンドからの離脱が期待される。
◎木村化工機 <6378>
化学プラントを主軸とする保守・エンジニアリングを手掛け、蒸発装置や原子力関連機器で優位性を発揮する。水素関連分野やアンモニア分野にも積極展開し、低濃度アンモニア水から高純度水素を製造し燃料電池で発電することに世界で初めて成功した。また、工場のボイラー蒸気をオール電化に切り替え、二酸化炭素を排出しないシステムを開発するなど高度な技術を有する。22年3月期営業利益予想は19億2000万円から27億4000万円(前期比44%増)に大幅増額、PER8倍前後と割安で1000円大台復帰を目指す。
◎山一電機 <6941>
世界的な半導体メーカーの設備投資増強の動きを背景に、同社が主力展開する半導体検査用ICソケットが絶好調に推移しており、業績は会社側の想定から大幅に上振れしている状況だ。22年3月期は期中3回にわたる上方修正を経て売上高が前期比39%増の385億円、営業利益が同2.3倍の75億円予想となっている。今期は年間配当予想も増額を繰り返し、結局、期初の計画と比較して倍増となる80円(前期実績は37円)とする見込み。この成長力にしてPER7倍台、4%前後の配当利回りは水準訂正が有力視される。
◎クロスキャット <2307>
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)投資需要の活発化を受け、収益機会が高まっている。官庁向けでも実績豊富で、高水準のシステム開発需要を取り込み業績の伸びに反映させている。22年3月期第3四半期(21年4-12月)営業利益は7億9000万円(前年同期比3.4倍)と高変化をみせ、通期予想の9億5000万円(前期比93%増)も更に上振れする公算が大きい。株価は2月4日に戻り高値1848円をつけた後調整を入れたが、直近は1対2の株式分割発表を受け急浮上に転じた。目先の押しは狙い目となる。
◎メイコー <6787>
プリント配線板の設計・製造で国内屈指だが、電装化が進展する自動車向けや高機能化の進むスマートフォン向けで高水準の需要を獲得している。22年3月期業績は、売上高が従来予想の1350億円から1450億円(前期比22%増)に、営業利益は95億円から120億円(同80%増)に上方修正した。売上高・利益ともに大幅に過去最高を更新することになる。続く23年3月期も増収を確保し、営業利益は2ケタ成長を維持する可能性が高い。株価は昨年12月28日の高値4880円から1000円近い調整を入れ、買い場と判断される。
◎旭有機材 <4216>
樹脂製バルブで独占的シェアを有するニッチトップ企業であり、自動車向けのほか、半導体製造ラインなどで必要不可欠の商品として需要を獲得している。近年は世界的な半導体設備投資拡大の恩恵を享受しているが、高付加価値で利益面での寄与も大きい。22年3月期営業利益は期中3度の増額を経て、前期比70%増の58億円と高変化を見込んでいる。PER10倍、PBR0.8倍はバリュー株としての素質も十分だ。株価は2月初旬に急騰した後もみ合っているが、2000円トビ台は押し目買いチャンスに。
◎近鉄エクスプレス <9375>
国際航空貨物輸送の大手で海上貨物も手掛けるが、世界経済の回復色が強まるなか追い風が強い。世界的に旺盛な需要が続く半導体関連や自動車関連の取扱量増加が収益拡大を後押ししており、単価上昇効果も発現している。22年3月期業績予想は直近2度目の上方修正を行い、売上高が従来予想の8800億円から9400億円(前期比54%増)へ、営業利益を500億円から580億円(同70%増)へ大幅増額。年間配当も上乗せし時価換算で利回りは4%を超える。PERも5倍台と超割安圏にあり、目先26週移動平均線近辺は拾い場に。
◎マクニカ・富士エレホールディングス <3132>
独立系のエレクトロニクス専門商社で、売上高は22年3月期予想ベースで7500億円と一頭地を抜いている。半導体を主力に扱うが、コロナ禍でデジタル関連機器の需要が急増し収益機会を広げている。人工知能(AI)関連事業を経営戦略上の重点分野とするなど、成長に向けた取り組みにも積極的だ。産業機器やコンピューター市場も好調な伸びを示しており、今期営業利益は期中3度の増額を経て前期比87%増の350億円予想と過去最高利益の大幅更新が続く。全体乱調相場のなかも根強い買いが観測され、株価は強さを発揮している。
◎タカトリ <6338> [東証2]
半導体向けなどを主力に精密切断加工を行うマルチワイヤーソーや各種マウンター(表面実装機)など半導体製造機器を手掛ける。電気自動車(EV)向けで パワー半導体需要が急増傾向にあるなか、独自技術を結実させたパワー半導体向けSiC材料切断加工装置は世界的に高い評価を得ている。22年9月期業績は売上高が前期比23%増の80億円、営業利益が同36%増の5億3000万円と大幅な伸びを見込んでいる。株価は2月10日にマドを開け急騰、その後は1400円近辺でもみ合っているが、ここは強気に対処してみたい。
株探ニュース