田部井美彦氏【2万8000円巡る攻防局面続く、年末に向け相場はどう動くか】 <相場観特集>
―手掛かり材料難で上値重い状態、個別材料株物色の状況が続く―
東京株式市場は、高値圏での気迷い相場が続く。依然として、米国のインフレ懸念がくすぶるなか米金融政策の方向性に対する警戒感は強く積極的に上値を追う動きはみられない。ただ、12月相場が目前に迫るなか、米国のクリスマス・ラリーと連動する年末・年始高に向けた期待も強い。ここからどのような投資戦略を取ればいいのか。内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジストの田部井美彦氏に聞いた。
●「年末にかけ一進一退継続も、半導体関連株など注目」
田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)
年末相場に向けては12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)がポイントとなるだろう。ただ、米政策金利の0.5%利上げと米連邦準備制度理事会(FRB)のハト派姿勢を市場は既に織り込んでいる。予想通りの結果なら、相場は反応しないだろう。逆にインフレ進行を警戒し、引き締めの姿勢を強めることを示唆するようなら、株価は下落することも予想される。
今後は実際のインフレの影響が出てきて、米企業の業績が悪化することもあり得る。日本企業の場合も円安効果は来年にかけて徐々に落ちてくることも考慮しなければならないだろう。また、日本では新型コロナウイルス感染拡大の影響で、インバウンド需要が期待したほどではなくなることもあり得る。これらの点を考慮すると、今年は米国市場を含めて年末に向けた株価上昇は、あまり期待できないかもしれない。
今後1ヵ月程度の日経平均株価の予想レンジは2万7000~2万8500円前後を予想している。史上最高水準の自社株買いで下値は限定的だが、外国人を含め上値を買い上がる投資家がおらず、2万8500円を超えた水準では売りに押されそうだ。FOMCなどのイベントの際には株価は上下にぶれることもあり得るが、日経平均株価の基本的なトレンドは2万7000円台後半を中心とする一進一退が続きそうだ。
個別銘柄では、半導体関連株に注目している。早めに調整していたこともあり押し目買いのポイントに到達しつつあると思う。パワー半導体 や研究用など特定分野に強い半導体に関係している銘柄が注目できるだろう。シリコンウエハーの最大手企業である信越化学工業 <4063> [東証P]やパワー半導体関連のローム <6963> [東証P]、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーで高実績を持つソニーグループ <6758> [東証P]などに注目したい。また、防衛関連予算の拡大に絡み三菱重工業 <7011> [東証P]や川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]といった銘柄の活躍にも期待したい。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース