明日の株式相場に向けて=AI・半導体株に売りの洗礼、逆張り好機か
週明け8日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比2563円安の6万4024円と大幅安で3日続落。下げ幅は一時3100円を上回るなど、ややパニック的な雰囲気も漂った。今月3日には終値で6万8402円まで水準を切り上げ、最高値を更新していた。日経平均7万円まであと一息だったが、そこが目先の天井でジェットコースター相場の本領を発揮し下降トレンドに変わった。最近はAI関連の急騰は企業業績をベースにPERなど伝統的指標から割高感は伴わないという「バブルじゃない論」も強まっていたが、それを横目に全体時価総額がシュリンクするという、相場のアマノジャクぶりが示される格好となった。ただ、ここは“待機資金”にとってはチャンス到来となる可能性もある。
今週末12日にメジャーSQ算出日を控え、先物主導の売り仕掛けも発生しやすく、そこは用心が必要だ。もっとも直近の上昇相場で裁定買い残はそれほど積み上がっておらず、「SQの影響はそれほど大きくない」(中堅証券ストラテジスト)という指摘もある。オプションに関しても厚いプットはなく、仕掛けのインセンティブは薄いという声も聞かれた。あとは、AI関連の個別株に吹く向かい風がどの程度の風速なのかによる。きょうの韓国株市場は朝方にサーキットブレーカーが発動し、8%を超える下げとなった。「(韓国は)あすは追い証が集中的に発生する可能性が濃厚で、東京市場にもその影響が及びそうだ」(ネット証券マーケットアナリスト)という。しかし、もし影響が及ぶのであれば、逆にそこは目先のリバースポイントとなるケースも考慮される。
一つ考えられるのは大きく下値に突っ込んだ AI・ 半導体関連のリバウンドを取りに行く手法。追い証の絡む銘柄もあり、もう一段の機械的な投げが生じる危険性はある。そのため欲張らず段階的に買い下がる方針であれば、きょうの波乱安から入って買い溜めていくスタンス。仮にあす早々に切り返せばいったん外してもよし、もちろん中期保有で様子を見るのもあり、であろう。デイトレード特化なら、きょうの寄り付きで入って跳ねた瞬間を逃さず売るという選択肢もあったが、これはほぼ反射神経に委ねられた世界でゲーミングに近く、理屈でアプローチできる領域ではない。銘柄に関しては、言い方は悪いが十把一絡げ(ひとからげ)で、時価総額上位の常連株ならどれも戻り足は似たり寄ったりのパフォーマンスとなる。一般的に下げが大きい銘柄の方が株価の弾性力は強くなるが、テクニカル的には直近までの値動きで陽線の数が多く、押しも浅く明確な上昇トレンドを維持していた銘柄の方が安心感を伴う。例えば条件を満たすものとして、投資金額は張るがキオクシアホールディングス<285A>の深押しなどは有力対象に挙げられる。同社株の場合は、きょうの朝方ウリ気配に買い向かえば結果論だが20分で回転が利いた。
もう一つは、最近のAI相場の蚊帳の外に放置され調整を十二分に入れていた銘柄。任天堂<7974>などのIP(知的財産権)関連はこのパターンで下値抵抗力を発揮しやすい。同社株は底値圏で5日・25日線のゴールデンクロスを示現、きょうも地味ながらプラス圏で引けている。なお、きょうは同じくIP関連の一角で東宝<9602>が外資系証券の買い推奨に刺激され底値離脱の緒に就いた。これは任天堂の株価にも浮揚力を加えている。
そして今にわかに投資資金が視線を向けているのが、AI・半導体関連とは対極のポジションともいえるHALO(ヘイロー)銘柄である。HALO銘柄とは「Heavy Asset Low Obsolescence」の頭文字を採ったもので、重厚な資産と陳腐化リスクの低い資産、この2つの観点で条件を満たす銘柄群を指す。これには「AIで複製が利かない経済価値を持っている」というコンセプトが底流している。具体的な業態としては、電力・ガス・水道などのライフラインや、通信インフラ、鉄道など。国家安全保障を担う防衛関連も切り口によってはこの範疇に含まれる。更に、鉄鋼・セメントなどの社会インフラを作り上げる際に、資材を提供する会社もその一角に位置する。東京電力ホールディングス<9501>、関西電力<9503>などの電力会社や東京ガス<9531>、大阪ガス<9532>などガス会社、NTT<9432>、KDDI<9433>、ソフトバンク<9434>などの通信メガキャリア、防衛省御用達の三菱重工業<7011>、鉄を提供する日本製鉄<5401>なども該当する。
市場関係者によると「AI・半導体関連から資金シフトするという動きとは異なるが、AI特化型のポートフォリオだと近未来の状況次第でバランスを極端に欠く可能性があるため、一方でAI経済圏とは無関係のオールドカンパニーにもヘッジ的な意味合いで注目する見方が徐々に太い流れを形成している」(ネット証券アナリスト)という。このAI経済圏とは直接関係しない銘柄、つまりHALO銘柄も押さえておく必要があるという認識が広がっているようだ。これはいわゆるリターンリバーサルの波形と重なる。
あすのスケジュールでは、5月のマネーストックが朝方取引開始前に開示されるほか、前場取引時間中に6カ月物国庫短期証券の入札が行われる。午後3時以降に発表される5月の工作機械受注額・速報値にもマーケットの関心が高い。海外では5月の中国貿易統計が開示、欧州では6月の独ZEW(欧州経済研究センター)景気予測指数が発表されるほか、ポーランド金融政策委員会が10日までの日程で開催。米国では4月の貿易収支、4月の卸売在庫・売上高、5月の全米自営業者連盟(NFIB)中小企業楽観度指数、5月の中古住宅販売件数などが耳目を集めそうだ。なお、この日は米3年物国債の入札も予定される。(銀)