概要・株価
チャート
ニュース
かぶたん ロゴ
PR

田部井美彦(内藤証券)が斬る ―どうなる?半年後の株価と為替―

特集
2026年9月11日 10時00分

日米の株式相場は不安定ながらも高水準で推移している。米国・イスラエルとイランの戦争は終結に向けた出口が見えず、株式や商品のマーケットを揺さぶっている。原油高や財政の先行き懸念などを背景に日米の長期金利は大幅に上昇し、株価の押し下げ要因となっている。トランプ米大統領が「就任から24時間以内に終わらせる」としていたロシアによるウクライナ侵攻も収束のメドはつかない。米国のインフレ懸念も根強く、金利上昇を受けてハイテク株が大幅に下落する場面もあった。世界の政治経済が混迷を深める中、アナリストやエコノミストなどの専門家は、「半年後の株価」や「半年後の為替」をどう見ているのか。インタビューを通じて、著名アナリストに予測してもらい、その背景を詳報する。第53回は、内藤証券の田部井美彦・投資調査部長に話を聞いた。

●田部井美彦(たべい・よしひこ)

内藤証券株式会社 投資調査部長 リサーチ・ヘッド&チーフストラテジスト
経済専門チャンネルの「日経CNBC」、テレビ東京系列の経済情報番組「ワールドビジネスサテライト」に出演。TOKYO MXテレビで放送されるストックボイスの番組で、毎週金曜日の「マーケットワイド」(13:45~)に2006年から出演。このほか、東洋経済オンライン、QUICKニュースなどに寄稿、コメントを寄せている。

田部井美彦氏の予測 4つのポイント
(1)半年後の日経平均株価は7万2000円程度
(2)半年後のS&P500株価指数は8300ポイント程度
(3)金利高は足元で実体経済への大きな影響はないが、更なる上昇には懸念
(4)注目するセクターは半導体、ソフトウエア、銀行、コンテンツ関連

―― 株式相場は高水準で推移しつつも、足元ではやや伸び悩んでいます。半年後(2027年3月末)の日米の株価水準をどう予測しますか。

田部井:私は半年後の日経平均株価を7万2000円程度、S&P500株価指数は8300ポイント程度だと予測しています。ただ、日経平均株価は一時的に5万9000円台、S&P500は7000ポイント程度まで下落する可能性があると考えています。

図1 日経平均株価(週足)

【タイトル】

図2 S&P500(週足)

【タイトル】

―― 日米株価は上下動しながらも来年3月末に向けて回復していくというシナリオかと思います。予測の背景を教えて下さい。

田部井:日本の株式市場関係者が注目しているのが、日銀の金融政策の行方です。日経平均株価は今後、今年9月、12月、来年1月の利上げといった連続性のある利上げのリスクシナリオを織り込んでいく可能性があります。これまでの株式市場のバブル的な状況は、金融当局の連続利上げで終了してきました。日銀の利上げにより、日経平均株価はいったん調整しますが、長期金利や物価の上昇がある程度、沈静化することで再び買いが入りやすくなり、回復軌道に乗ると考えています。

―― ベッセント米財務長官が8月30日に日銀の植田和男総裁と会談し、過度な円安に対処するために「日本が断固とした市場・金融政策上の措置を講じることを強く支持する」と語った、などと報じられました。独立性のある中央銀行の政策に対して、特に外国の要人が発言するのは異例です。

田部井:ベッセント財務長官の発言は、中央銀行の独立性という観点で問題があるかもしれませんが、同氏の発言を受けて日銀は利上げをしやすくなったとも言えます。「利上げに慎重だ」と言われてきた高市早苗首相は、今回も日銀の利上げに反対しないと見られます。

―― 日銀による利上げの上限を、当面どの程度だと考えていますか。

田部井:物価高が落ち着き、長期金利が2%台または3%前後で安定するまでは、日銀は金融引き締めを続けると見ています。9月以降、毎回利上げするとは限りませんが、段階的に政策金利を引き上げていくでしょう。

―― 長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが9月1日、30年ぶりとなる3%台をつけました。実体経済への影響をどう見ていますか。

田部井:今のところ日本の実体経済への悪影響は少なく、銀行の利ザヤ拡大への期待で金融株が買われています。長期金利3%程度までであれば、恩恵の方が大きいように思います。長期金利がさらに上昇し、マンション販売が低迷したり、都市部の不動産価格が下落したりすれば、実体経済への悪影響が顕在化してくるでしょう。

―― 足元では円高・ドル安がやや進んでいます。日銀が利上げすることによる円相場への影響は。

田部井:私は一方的な円高が進むとは考えていません。日本だけでなく、高インフレに悩む米国も利上げをする可能性が高いためです。短期的に1ドル=150円を割り込むことがないとは言えませんが、再び150円を超える円安に戻るでしょう。日米の協調介入は、「1ドル=164円を超えるような円安・ドル高は容認しない」という意思を示しました。おそらく日米の金融当局は、1ドル=150~160円程度に相場を抑えたいと考えているのではないでしょうか。

―― 日本の長期金利が上昇することで、株式から債券への資金流出が起きる可能性は。

田部井:すでに個人向け国債(5年固定金利型)の利回りが2%を超えていることから、一部の富裕層が債券や定期預金への投資比率を高める可能性はあると思います。いずれにしても、9月利上げでどのくらいの利回りになるのか。そこを見極める必要があります。

―― 今年11月には米国でトランプ政権の信任を問う中間選挙が実施されます。共和党の敗北を予想する声も多いですが、マーケットへの影響をどう見ていますか。

田部井:米国・イスラエルとイランの関係が一段と悪化していることもあり、両者の戦争が中間選挙までに終了するとは市場関係者は考えていないでしょう。共和党がある程度、選挙で敗北することも織り込んでいると思います。市場関係者はむしろ中間選挙後のインフレの状況、ホルムズ海峡を巡るイランの動きがどうなるかをより注目しています。

―― ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)によるAI(人工知能)など半導体関連投資は、今のところ堅調です。株式相場を牽引してきた半導体関連株の行方をどう見ていますか。

田部井:現在の半導体市況はスーパーサイクル(需要の急拡大期)にあり、設備投資も活況です。関連企業の7-9月期決算でAI関連の収益が明確になれば、今秋から半導体関連株の買いが強まるでしょう。半導体関連は、株式市場の中でも唯一といっていいほどの高成長産業であるだけに、投資家は資金を入れざるを得ないと思います。特に需要の多いデータセンター、AI関連株には買いが入りやすくなるでしょう。

―― 半導体関連以外で注目しているセクターや銘柄を教えてください。

田部井:注目しているのはソフトウエア関連です。生成AIの登場で業務ソフトの役割がAIに取って代わられる「SaaSの死」が警戒されて、このところソフトウエア関連株は売られてきましたが、今後は見直し買いが入ると見ています。地政学的リスクを背景に、生成AIの利用などを通じた情報漏洩リスクに関心が高まっていることから、NEC <6701> [東証P]、富士通 <6702> [東証P]、野村総合研究所 <4307> [東証P]といった関連銘柄に注目しています。情報の安全性の高いAIやサイバーセキュリティ、SaaS関連企業には投資家の関心が高まる可能性があります。

このほか、中央銀行の利上げで恩恵を受けやすい銀行株にも注目しています。政府が後押ししている成長投資が活発化してくれば、銀行融資へのニーズも拡大し、業務純益が増加しやすくなると見ています。

また、バンダイナムコホールディングス <7832> [東証P]、ハピネット <7552> [東証P]、東宝 <9602> [東証P]、ソニーグループ <6758> [東証P]といったコンテンツIP(知的財産)関連株も有望です。

(※聞き手は日高広太郎)

◆日高広太郎(ジャーナリスト、広報コンサルティング会社代表)
【タイトル】
1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。小売店など企業ニュースの担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。財務省、経済産業省、国土交通省、農水省、日銀、メガバンクなどを長く担当する。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。第一次安倍内閣時の独ハイリゲンダムサミット、鳩山政権時の米ピッツバーグサミットなどでは日経新聞を代表して同行取材、執筆。東日本大震災の際には復興を担う国土交通省、復興庁のキャップを務めた。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年8月に東証1部上場(現プライム市場)のB to B企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。ジャーナリストとしても記事を複数連載中。2022年5月に著書「B to B広報 最強の戦略術」(すばる舎)を出版。内外情勢調査会の講師も務め、YouTubeにて「【BIZ】ダイジェスト 今こそ中小企業もアピールが必要なワケ」が配信中。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集