明日の株式相場に向けて=フーシ派急進撃が揺さぶる年末高シナリオ
14日の東京株式市場で日経平均株価は518円安と続落。下げ幅は一時1200円を超えた。終値は7月30日以来、およそ1カ月半ぶりの低水準。米アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)がAIの開発競争を減速させるべきだと主張。米オープンAIのサム・アルトマンCEOとテスラ<TSLA>のイーロン・マスクCEOがこれに同調したほか、アルトマンCEOに至っては米誌のインタビューでオープンAIの年内IPO(新規株式公開)を否定した。 AI・ 半導体関連株への売りが促され、キオクシアホールディングス<285A>とアドバンテスト<6857>、オープンAIに出資するソフトバンクグループ<9984>の3銘柄が日経平均に対して約800円押し下げる要因となった。対してTOPIXは反発。東証33業種のうち値下がり業種は6業種にとどまり、プライム市場の値上がり銘柄数は78%に上った。
AIの台頭による「SaaSの死」の懸念からパフォーマンスで劣後していたソフトウェア関連株が買われるなど、一種のロングショートポジションの解消に向けた動きが顕著となった1日でもあった。15~16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、17~18日に日銀の金融政策決定会合が控える中銀ウィークでのTOPIXの上昇である。前週末11日発表の米8月消費者物価指数(CPI)を経て、9月の米利上げは86%程度まで織り込みが進んだ。市場の見立て通りとなれば金融引き締めだ。日銀に関しても、0.25%の利上げがコンセンサスとなっている。「米国も日本も一緒に利上げをするとみられるなかで原油高も進んでいる。積極的に買い向かえるような環境ではない」(国内証券)との声がある。
米原油先物相場は14日アジア時間に再び上昇し、足もとではWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期先物が1バレル=103ドル台で高止まりしている。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が、紅海の要衝である港湾都市モカに続き、バベルマンデブ海峡上のペリム島を制圧したことが明らかになった。サウジアラビアは原油輸出ルートが塞がれる形となる。更に、サウジアラビアの東西パイプラインがドローンの攻撃を受け稼働を停止した。復旧までの期間を巡り見方が錯綜している。ホルムズ海峡を巡る湾岸諸国の協議も直前で延期となり、14日は同海峡で爆発音の報告が相次いだようだ。今後の原油供給を巡る悲観が強まっている。
原油高が企業業績を大きく損なうことがなく、マイルドなインフレをもたらし続けるのであれば株式市場には悪い話ではない。しかし2つの海峡を経由した原油輸送の停滞が続き、世界的に原油在庫が急減するなかで、米国によるイランへの軍事作戦は長期化し、湾岸諸国を巻き込んで混迷化している。北半球はこれから冬場を迎え、暖房としての需要が拡大する時期になる。すでに米国の農家が収穫に用いるトラクター向け軽油価格は高騰しており、食料価格の上昇が危惧されている。米国において物価上昇と景気後退が同時に進行するスタグフレーションのシナリオが改めて声高に語られるようになる恐れがある。市場では米中間選挙を経て日経平均が年末にかけて7万円か、もしくはそれ以上の水準に上昇するとの期待感が広がっていたが、米国景気が腰折れとなれば、年末安の展開となる可能性もあるだろう。
14日の東京市場では、外部環境に左右されにくい内需株に対し個人投資家の資金がシフトする形で東証グロース市場250指数が2%を超える頑強ぶりを発揮した。このうち大型蓄電池のパワーエックス<485A>が大幅続伸し底値離脱の兆しを示している。対米投融資第3弾で次世代原発関連株も賑わった。ちなみに、第2弾において蓄電池事業は有力候補として取り沙汰されたものの、結果として次世代小型原子炉と天然ガス発電が選ばれた経緯がある。「第3弾」の内容はともあれ、車載・産業用電池のジーエス・ユアサ コーポレーション<6674>や、系統用蓄電所事業の拡大に注力するウエストホールディングス<1407>、エネルギー関連データのAI解析を手掛けるインフォメティス<281A>など、原油高対策の思惑が広がる関連銘柄の物色意欲が高まるか注視しておきたい。
日程面では、15日は国内では7月第3次産業活動指数が発表される。国土交通省が基準地価を公表するほか、財務省が20年債入札を実施する。海外では中国で8月鉱工業生産と8月小売売上高、1~8月固定資産投資、1~8月不動産開発投資が発表される予定。ドイツ及びユーロ圏の9月ZEW景況感指数やユーロ圏の7月貿易収支、英8月失業率の発表を控える。米国はFOMCが15日から2日間の日程で開かれる。このほか9月のニューヨーク連銀製造業景気指数が発表され、米20年債入札が予定されている。(長田善行)