会計ビッグバン以来の衝撃!「新リース会計基準」特需株を追う <株探トップ特集>
―契約書AI解析から固定資産管理まで、導入後の保守・ストック収入で化ける企業―
東京株式市場は、日経平均株価が再び7万円台に乗せたものの戻り一服となるなか、個別物色については10月中旬から本格化する3月期決算企業の中間決算発表を見据えた見極めモード色を徐々に見せつつある。地政学リスクや為替の変動なども意識されるなか、市場の一部では外部環境に左右されにくい「国内のIT投資」や「制度改革特需」などへの関心も高まりつつある。
こうしたなか、注目したいのが、2027年4月1日の強制適用まで半年を切った「新リース会計基準」関連銘柄だ。国際会計基準(IFRS)への準拠を図る今回の改定は、原則として全てのリース取引のオンバランス化を求めるものであり、1990年代後半のいわゆる「会計ビッグバン」以来のインパクトとも評される。これを商機とする企業の業績への寄与も見られ始めており、関連銘柄への熱視線が注がれている。
●「リース会計基準」とは
「リース会計基準」とは、ファイナンスリースやオペレーティングリースといったリース取引の種類や、リース取引を財務諸表にどのように記録・報告するかを定めたルールのこと。日本の会計基準は、長らくIFRSと異なる独自のルールを採用してきたが、グローバル化が進展するにつれ、これまでにも段階的に国際的な基準に近づける見直しが進められてきた。
27年4月1日以後開始する会計年度の期首から強制適用される「新リース会計基準」はこの流れの一環として定められたもので、リースの一般的な定義に加えて、リースの識別に関する定めが新たに設けられるほか、リース取引の区分廃止やオンバランス処理の原則化が求められるようになったことが大きな変更点になる。法的にリース契約の形態ではなくても、リースの定義を満たす場合は、契約書の名称に関わらずリースと判定され、リースの会計処理が適用されることになる。
また、これまで「ファイナンスリース」「オペレーティングリース」と分かれていた借り手側におけるリース取引の区分が廃止され、原則として全てのリース取引について使用権資産及びリース負債を計上することになる。当然、自己資本比率やROA(総資産利益率)といった財務指標が大きな影響を受ける可能性がある。
●準備の遅れに伴う駆け込み特需が発生
適用直前となった現在、市場で注目を集めているのが「準備の遅れに伴う駆け込み特需」だ。前述の大きな変更点だけでも実務上の負担増大が予想される新リース会計基準だが、その準備となると、契約書上は「リース」という名称ではないものの「資産の使用権」と「対価の支払い」が含まれると実質的にリースとみなされる「隠れリース」の洗い出しから始めなければならない。
不動産賃貸借契約をはじめ、データセンター設備や専用機器の利用契約など、全社規模で膨大に存在する契約を一つひとつ精査する作業は、実務現場にとって大きな作業負担となる。「27年春までまだ猶予がある」と高を括っていた企業も、この膨大な洗い出し作業と対応の遅れに本格的な悲鳴を上げ始めた。
これらに対応するためには、単なる会計ソフトの更新にとどまらず、特に固定資産管理や契約書のデジタル化、更には業務プロセスの見直しが必須となる。そのため、足もとでは大企業から中堅企業にかけて契約書解析などの専門ツールやITコンサルティングなどへの駆け込み需要が加速しており、関連企業にとって強力な追い風となりそうだ。
●新リース会計基準への直接対応を打ち出す銘柄に注目
新リース会計基準の適用に向けた需要は、一見すると制度改定に伴う一巡性の特需に見える。だが、本当に見逃せないのは、その特需を入り口に獲得した顧客が、導入後の利用料や保守料として積み上がり、収益の質を高める可能性があることだろう。そこでまず注目したいのは、新リース会計基準への直接対応を打ち出す銘柄群だ。
プロシップ <3763> [東証P]は、関連銘柄の代表格といえる。固定資産管理に特化したソリューション「ProPlus」シリーズが主力で、24年12月には新リース会計基準に対応したSaaS型リース資産管理ソリューション「ProPlus+」をリリースした。IFRS16対応で培った知見を武器に攻勢を強め、大手企業向け案件でも採用実績を積み上げており、提供開始から約1年半で導入企業数は1000社を突破。足もとでも移行案件の引き合いが一段と活発化しているようだ。
オービックビジネスコンサルタント <4733> [東証P]は、中堅・中小企業向け基幹業務システム「奉行シリーズ」を展開しており、主力の「奉行クラウド」では、「固定資産奉行V ERPクラウド」が25年4月、業界に先駆けて新リース会計基準へ対応。また、AIが契約書の内容からリースを自動識別する「奉行AIエージェント 新リース会計識別クラウド」もリリースした。今年6月には三菱HCキャピタル <8593> [東証P]などとビジネスマッチング契約を締結しており、制度対応需要の取り込み加速に期待がかかる。
ピー・シー・エー <9629> [東証P]は、中堅・中小企業向けの会計や固定資産管理に強みを持つ基幹業務ソフト会社。新リース会計基準をめぐっては「PCA 固定資産シリーズ」などで対応機能を打ち出し、実務担当者の負担軽減を前面に出した訴求を強めることで、更新需要や保守収入の積み上がりが期待されている。今年7月にはファーストアカウンティング <5588> [東証G]とのシステム連携の協業開始を発表しており、「Steward・新リース会計基準」との連携により、リース判定から固定資産管理までの業務効率化を支援している。
マネーフォワード <3994> [東証P]は、クラウド型の会計や契約管理などバックオフィス向けサービスを幅広く展開。25年11月には、「マネーフォワード クラウドリース会計」の正式提供を開始した。リース資産の判定、仕訳計上などの必須機能を網羅することで、新基準への対応に伴う膨大な工数を削減し、企業の初年度適用とその後の運用をサポートしている。更に今年9月にはAIと専門オペレーターが新基準対応を代行するAI-BPOサービス「マネーフォワード おまかせリース契約管理」の正式提供も開始した。
●Sansanなども商機拡大に期待
また、新リース会計基準をきっかけとした業務プロセスの見直しや契約管理の高度化、クラウド活用の広がりへの期待から、以下の銘柄にも注目したい。
Sansan <4443> [東証P]は、契約書や請求書などのアナログ情報をデータ化し、企業のバックオフィスDXを支援している。新リース会計基準をめぐっては、今年8月から契約AX(AIトランスフォーメーション)サービス「Contract One」に、新基準に対応するリース判定機能を搭載。AIが契約書からリースに該当する可能性のある資産を自動で識別し、リース該当性の判定業務を支援している。
ファーストAは、経理業務の自動化を支えるAIソリューションを展開している。PCAとの協業でも触れた「Steward・新リース会計基準」はリース契約に該当するか否かをユーザー企業のルールを学習し自動で判定し、その根拠を提示する機能を有する次世代経理オペレーション基盤で、PCAのほかにもプロシップの「ProPlus+」やTKC <9746> [東証P]の固定資産管理システムなどとも連携。制度対応で増大する実務負荷の受け皿として注目されている。
アバントグループ <3836> [東証P]は、連結会計や経営管理の高度化を支援するソフトウェアを手掛けている。会計処理の見直しやグループ経営管理の高度化に際し、導入コンサルティングや業務構築SI、BPOを一括で引き受ける高付加価値な事業モデルが強みで、制度改正を契機とした会計基盤刷新の動きが広がるなか、SIやコンサルティング案件の積み上がりが期待できる。
JBCCホールディングス <9889> [東証P]は、企業の情報システム構築や運用を担うITサービスグループで、経理財務DX支援にも注力する。傘下のJBCCがOBCのゴールドパートナーとして「固定資産奉行V ERPクラウド」の導入構築や運用支援を行っているほか、独自の「隠れリース判定AI」や新リース会計基準影響額試算ツールなども展開している。
このほか、新リース会計基準に対応した固定資産管理システムを投入したTKCや、既存顧客基盤を背景に制度改正対応を進めるミロク情報サービス <9928> [東証P]も関連銘柄として外せない。更に、統合資産管理クラウド「@property」上で、新リース会計基準に対応した契約管理・会計計算・注記開示を一元的に行える新オプションを今年4月から提供し、5月公表の成長計画でも重点施策の一つとして新リース会計基準対応需要の獲得に触れているプロパティデータバンク <4389> [東証G]も、新基準が不動産や契約、運用履歴の統合管理と親和性があることから要注目だ。
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