【北浜流一郎のズバリ株先見!】 ─ 業績相場が始動中!経済回復メリットの"素材"に照準
「業績相場が始動中!経済回復メリットの“素材”に照準」
●多彩な株価刺激材料、思いもかけぬサプライズも
東京市場はディズニーランドほどではないものの、日々刺激的な材料が出現、面白くなってきた。
それらすべてが投資意欲をそそるわけではないし、株価が上がるわけでもないけれど、チャンスが隠れていることはある。最近の例では、ソニーグループ <6758> 、日立製作所 <6501> 、東芝 <6502> などが、思いがけない発表をして驚かされた。
まずはソニーG。社名を「ソニーグループ」に変更した。ちょっと変えただけじゃないか。こういう見方もあるだろうが、この会社の改称は63年ぶり。今回の社名変更は、多様化する関連企業群の求心力を高めるための効果は大と見てよい。
これだけではない。ソニーGは電気自動車(EV)を披露した。販売目的ではないという点が独特であり、評価もできる。搭載されている各種自社製品などの販売を考えてのことだ。それに、EVを販売したとしたら、既存の自動車メーカーとの苛烈な開発競争に巻き込まれるのは必定。それを考えて製造販売を行わない決断はさすがだ。
そして、もう一つ。タイで同社傘下コロンビア・ピクチャーズの作品をもとにした テーマパークを10月にオープンするというのだ。「ソニーがテーマパーク?」であり、意外な積極策は評価できる。
次は日立。選択と集中に取り組んでいる最中であり、新たな買収など考えもしないだろうと見ていたところ、米IT企業のグローバルロジックを96億ドル(約1兆400億円)で買収すると発表した。資金は日立金属 <5486> の売却代金やその他で賄う意向のようだが、それにしても大胆な決断だ。その企業価値拡大への意欲はこれまた評価できる。
では、東芝はどうか。残念ながら、どう評価してよいものか分からない。東芝に買収提案をしたことが明らかとなった英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズの言い分は、「物言う株主」と経営陣とが対立していては経営再建がうまくいかない、状況改善のためには買収し上場廃止にするのが望ましいということなのだが、この論法はよく分からない。それに東芝の車谷社長が、CVCの出身者である点も気になる。背景にどんな思惑があるのか正確に読むのはとても無理。それゆえ、私から見るととても投資などできない銘柄になる。
このように、いまは株価刺激材料が豊富になっていて、それが市場の活性化に寄与しているのは明らかだ。
●見逃せない意外な分野の“素材”
幸い、市場の流れは業績相場が始動中だ。業績回復でまず考えなければならないのは、工業製品を作るための素材が十分あるかだ。いまのところ十分でも、経済の回復が本格化するにつれて在庫が減少、そして不足することになる。
そこで、注目銘柄はこの点を考えて、まずは松田産業 <7456> になる。電子部品のリサイクルにより貴金属類を採掘するいわゆる「都市鉱山」会社であり、すでに業務多忙になりつつある。類似企業のアサヒホールディングス <5857> も同様の理由で続伸する確率が高いと見てよい。
意外な分野にも素材はある。半導体ウエハーの研磨剤に使われる高純度シリカもその一つだ。この製品に強いのが扶桑化学工業 <4368> 。この会社はリンゴ酸も製造しており、これまた意外な素材といえる。
特殊分野の素材では第一稀元素化学工業 <4082> もある。この会社は自動車排ガス浄化触媒や電子材料向けジルコニウム化合物に強く、目下需要は着実に拡大中だ。
地味な値動きながら、木材も素材であることを考えると住友林業 <1911> がある。ただ、値動きは超スローで、投資したら時間をかける必要がある。
最後に、書き出し部分で取り上げたソニーGと日立を。東芝は経済小説を書く素材にはなるだろうが、投資対象としては敬遠したい。
2021年4月9日 記
株探ニュース