【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─拭えぬ景気不透明感、4-6月期決算が最大の焦点に
「拭えぬ景気不透明感、4-6月期決算が最大の焦点に」
◆大テーマ浮上は望めず、好決算銘柄の個別物色が有望か
8月上旬までの東京株式市場は、引き続き上値の重い展開が想定される。経済再開や好調な企業業績を背景に米国株が堅調に推移。外部環境は良好ながら、日本では新型コロナウイルス感染拡大やそれに伴う景気の先行き透明感がぬぐえない。IMF(国際通貨基金)は日本の成長率見通しを下方修正している。
加えて、中国当局によるテクノロジー、教育産業への締め付けが懸念材料として浮上している。米国に上場する中国企業大手で構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国株指数は年初来の高値からほぼ半値に売り込まれている。中国当局による一段の規制強化などがあれば、世界の株式の波乱要因としても意識される可能性がある。
一方、決算発表がピークを迎え、バリュエーション面での割安感が出れば下支えになりそうだ。8月中旬までの日経平均株価は2万6500円~2万8500円程度の値動きが想定される。注意点としては、日経平均は指数寄与度の高いソフトバンクグループ <9984> 、ファーストリテイリング <9983> の下落の影響を受けている面も強い。東証1部全銘柄の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)のチャート形状は、日経平均ほどは悪化しておらず、当面はTOPIXを軸に市場を見る必要もありそうだ。
最大の注目点は3月期本決算企業の第1四半期(4-6月期)決算発表となる。
決算発表が本格化する直前の7月21日現在の日経平均の1株利益は2046円(PER13.4倍)。どこまで1株利益が切り上がるかが最大の焦点となる。なお、決算発表のピークは8月6日(金)だ。
また、海外のスケジュールでは、8月6日に米国の雇用統計の発表がある。非農業部門の雇用者数が市場予想を大きく上回れば、早期の利上げ観測が台頭する公算もある。
東京オリンピックは8月8日が最終日(パラリンピックは8月24日~9月5日)で、その後はお盆休み期間にも入るため、市場参加者の増加は見込みにくく、物色テーマとして大きなものが浮上する可能性は低い。好決算銘柄の個別物色などが有望といえる。好決算を発表した東京製鐵 <5423>、シマノ <7309> 、信越化学工業 <4063> 、日産自動車 <7201> などはチェックしたい。
◆アフターコロナ、半導体製造用ガス関連などに注目
新型コロナの新規感染者の急増が懸念される一方で、ワクチン接種は着実に進んでいる。秋口には行われる衆院の解散・総選挙では五輪後の経済活動再開が焦点となろう。エイチ・アイ・エス <9603> 、KNT-CTホールディングス <9726> 、ANAホールディングス <9202> 、藤田観光 <9722> 、コロワイド <7616> などのアフターコロナ関連の押し目は狙い目になりそうだ。
半導体関連の上値は重くなっているが、テーマとしては引き続きマークしたい。半導体の製造に不可欠な電子材料ガス関連の株価は堅調に推移している。半導体の超微細・精密加工を必要とする半導体プロセスでは、高純度な窒素(N2)を大量かつ安定的に送る必要がある。酸化による品質劣化を嫌うプロセスには分野を問わず窒素が使われる。アルゴン(Ar)は他の物質と反応しない不活性な物性を有する。この物性を活かして金属精錬やアーク溶接に用いられるが、半導体基板材料であるシリコンウエハーの製造にも使われている。産業用ガス国内最大手で電子材料ガスにも強い日本酸素ホールディングス <4091> 、2位のエア・ウォーター <4088> 、独自のフッ素化技術で半導体・液晶用特殊ガスに強みがある関東電化工業 <4047> などは業績への貢献が期待される。
主力ハイテク銘柄の中には信用取引の高値6カ月期日を抜けつつある銘柄も少なくない。1月下旬に高値を付けたのは村田製作所 <6981> 、アンリツ <6754> 、日東電工 <6988> 、TDK <6762> 、ルネサスエレクトロニクス <6723> などがある。通過後は需給の改善で上値が軽くなる可能性もある。なお、日経平均株価の今年の高値は2月の3万0467円(終値ベース)で、高値期日は8月15日となる。
(2021年7月29日 記/次回は8月29日配信予定)
■和島英樹(Hideki Wajima)
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
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