この記事はプレミアム会員限定です

億り人はこんな人、投資スタイル別の注目指標、そして売買益期待の銘柄は

特集
2022年5月13日 14時00分

第9回 日本株&アメ株で勝つ人(データ分析・億り人編その2)

日本株&アメ株で勝つ人~個人投資家4800人の調査で判明!

筆者/真弓重孝 = 『株探』編集部・編集統括プロデューサー
ビジネス誌、マネー誌などを経て、2018年4月にみんかぶ(現ミンカブ・ジ・インフォノイド)に入社。現在に至る。

前回記事「億り人さんはどんな人、コロナ相場での成績、含み損益が最大の銘柄は?」を読む

『株探』編集部が実施した第2回 「株探-個人投資家大調査」(2022春)のデータ分析・億り人編の2回目は、

☆投資スタイルやスタイル別の注目指標および情報、

☆平均的な保有銘柄や投資期間、信用取引の利用動向

☆売買益期待が最大・2番目・3番目について、各上位30のランキング

――などを、日本株資産が5000万~1億円未満のもうすぐ億り人(もうすぐさん)と、同5000万円以下のこれから億り人(これからさん)と比較しながら紹介していく。

億り人はバリューとグロースが拮抗、もうすぐさんはバリュー派が過半

投資スタイルを見ると、億り人はバリュー派とグロース派が主体で、両者で割合が70%を超えた。またバリュー派が僅差でグロース派を上回った。3番目に多いのがテクニカル・需給派とその他。5番目はテーマ派で、6番目はイベント派だが、この2派は人数が1桁台だった。

バリュー派とグロース派が2大勢力となっているのは、日本株資産が5000万~1億円未満のもうすぐさん、そして同5000万円以下のこれからさんも同じ。

違いが見られたのが、これからさんは億り人と同様に、バリュー派がグロース派を僅差で上回ったのに対し、もうすぐさんはバリュー派がグロース派より2倍を超える割合になっている点だ。

■億り人・もうすぐさん・これからさんの投資戦略の内訳比較

スタイル億り人順位もうすぐ順位これから順位
バリュー38.9%151.3%135.4%1
グロース36.3%223.3%231.5%2
テクニカル・需給9.7%311.6%314.5%3
その他9.7%35.8%56.0%5
テーマ4.4%57.4%49.6%4
イベント0.9%60.5%62.9%6
注:回答数は億り人113、もうすぐ189、これから4463

もうすぐさんのバリュー派は、株価水準より業績成長重視の傾向

運用資産1億円超えは、多くの個人投資家にとって大きな目標であり、夢になっている。その目標達成、夢の実現に近づいているもうすぐさんが、バリュー派が過半を占めているのは、目標達成を目前により慎重になっているのか。それとも、割安銘柄を拾い株価の水準訂正の余力の大きさを期待し、高いリターンを狙うことを重視しているのか。

そのヒントになるのが、投資スタイル別の注目指標・情報にある。バリュー派は下の緑の地を敷いた表になる。バリュー派のもうすぐさんが最も注視しているのが「収益バリュー」で、回答者の75%近くが挙げている。この指標は、億り人でも、これからさんでも最多の割合になっている点では共通する。ただし、異なるのは、その割合で、億り人とこれからさんの場合は、60%前後になっている。

収益バリューに注目するもうすぐさんが、億り人やこれからさんより高割合となっている理由を探るヒントになるのが、収益バリューと親和性のある「PERの水準」になる。

億り人ももうすぐさんも、PERが2番目に高い割合で、収益バリューとPERを合わせた割合は120%超という点では共通する。そうした中で、収益バリューを重視する人の割合がもうすぐさんの中で高いのは、株価水準より業績成長の期待をより重視する人が多いと見られる。

それを示唆するのが、もうすぐさんで収益バリューを注目している人のうち、PERも注視している人は、半分に届かない水準だったことだ。また次回で見ることになるが、今後6カ月の戦略でも、バリュー派のもうすぐさんは、業績やセクターの成長力を重視している。

こうした点で、バリュー派のもうすぐさんは、割安成長株ないし割高ではない成長株に注目している人が多い可能性がある。

■バリュー派の注目指標・情報

注目指標・情報億り人順位もうすぐ順位これから順位
収益バリュー63.6%174.2%157.5%1
PERの水準61.4%252.6%348.2%3
配当利回り59.1%358.8%252.5%2
PBRの水準47.7%442.3%528.6%5
財務基盤の安定性34.1%544.3%438.0%4
理論価値に対して割安22.7%615.5%715.1%7
資産バリュー20.5%718.6%619.8%6
時価総額の水準13.6%811.3%813.5%8
その他6.8%95.2%99.0%9
大株主の保有割合2.3%102.1%103.0%10
注目投信の組み入れ――――1.0%112.5%11

注:母集団と回答数は億り人44と146、もうすぐ97と316、これから1582と4550。
回答は4つまで。合計は100%を超える

テク・需給派では億り人は株価の転換点、他の2者はモメンタム重視の傾向

グロース派の注目指標・情報については、億り人・もうすぐ・これからの3者に際立った違いは見られなかった。

■グロース派の注目指標・情報

注目指標・情報億り人順位もうすぐ順位これから順位
利益の成長性70.7%172.7%167.9%1
収益性の改善51.2%254.5%345.0%4
売上高の成長性48.8%361.4%256.8%2
セクター・事業の成長性46.3%438.6%446.9%3
時価総額の水準24.4%522.7%521.5%5
フリーCFの動向14.6%620.5%612.2%6
その他7.3%72.3%88.6%7
大株主の保有割合4.9%82.3%85.1%8
注目投信の組み入れ―――― 4.5%74.0%9

注:母集団と回答数は億り人41と110、もうすぐ44と123、これから1407と3771。
回答は4つまで。合計は100%を超える

テクニカル・需給派の注目指標・情報については、億り人は「移動平均線のGC(ゴールデンクロス)とDC(デッドクロス)」を注視している人が、最も多く過半を占めた。

これに対してもうすぐさんとこれからさんは、「出来高の増減」が最も多く60%前後の割合を占めた。またこの2者は億り人では最多だった「移動平均線のGC・DC」が2番目に多く、その割合は30%台半ばだった点で共通する。

この点から億り人は株価の転換点、もうすぐさんとこれからさんは、モメンタムを重視している人の割合が多い実態が見られた。

■テクニカル・需給派の注目指標・情報

注目指標・情報億り人順位もうすぐ順位これから順位
移動平均線のGC・DC54.5%136.4%237.2%2
その他36.4%29.1%129.4%11
出来高の増減27.3%363.6%158.0%1
移動平均線の乖離率27.3%331.8%335.0%3
MACD27.3%327.3%633.6%4
歩み値18.2%618.2%921.8%7
注文気配18.2%627.3%626.0%6
RCI18.2%64.5%148.2%13
ボリンジャーバンド18.2%631.8%328.0%5
大株主の保有割合9.1%104.5%142.3%16
信用売り・買い残の変化9.1%1031.8%313.5%9
信用倍率9.1%1018.2%99.0%12
RSI9.1%109.1%1218.4%8
ストキャスティクス9.1%104.5%145.3%15
一目均衡表――――22.7%811.0%10
時価総額の水準――――13.6%117.3%14

注:母集団と回答数は億り人11と29、もうすぐ22と60、これから646と1699。
回答は5つまで。合計は100%を超える

テーマ派とイベント派の注目指標・情報は以下の通り。いずれも億り人ともうすぐさんの母集団がわずかなでしかないため、あくまでも参考として捉えてほしい。

■テーマ派の注目指標・情報

注目テーマ億り人順位もうすぐ順位これから順位
エネルギー・原子力60.0%114.3%734.4%3
半導体・半導体製造装置60.0%142.9%153.6%1
AI・IoT40.0%314.3%726.9%6
貴金属・レアメタル・資源開発20.0%414.3%726.5%7
農業・穀物・肥料・食品20.0%47.1%1315.7%10
メタバース20.0%414.3%730.7%5
キャッシュレス・暗号資産20.0%4――――11.9%12
その他20.0%428.6%310.8%13
サイバーセキュリティー――――21.4%532.8%4
クリーンエネ・環境――――35.7%241.5%2
海運・空運・陸運――――28.6%323.7%8
自動運転――――14.3%721.1%9
ヘルスケア――――21.4%513.6%11
高齢化――――14.3%75.9%14

注:母集団と回答数は億り人5と13、もうすぐ14と29、これから427と1361。
回答は5つまで。合計は100%を超える

■イベント派の注目指標・情報

注目指標・情報億り人順位もうすぐ順位これから順位
株主優待新設・改善100.0%1100.0%116.0%6
M&A(合併・買収)100.0%1――――9.2%9
新高値更新――――――――39.7%3
決算発表・業績修正――――100.0%180.9%1
新製品・新技術の発表――――――636.6%4
株式分割――――100.0%120.6%5
増担保規制の導入や解除――――――――3.1%13
大株主の保有割合――――――――8.4%10
アクティビストの関与――――100.0%19.9%8
株主還元――――100.0%140.5%2
経営陣・経営体制の変更――――――――7.6%11
ディストレスト――――――――――――
時価総額の水準――――――――15.3%7
その他――――――――5.3%12

注:母集団と回答数は億り人1と2、もうすぐ1と5、これから131と384。
回答は5つまで。合計は100%を超える


億り人ともうすぐさんは長期・超長期が主流、これからさんは中期

平均的な銘柄保有期間については、億り人ともうすぐさんは「超長期-3年以上」がトップで、期間が短くなるに従って順位を1つ下げる状況で一致している。

一方、これからさんは「中期-1カ月以上~1年未満」がトップで、2番目は「長期-1年以上~3年未満」、そして3番目が「中短期-1週間以上~1カ月未満」となった。

億り人ともうすぐさんは長期と超長期の合計割合が80%程度に対して、これからさんは50%に満たない水準。億り人ともうすぐさんに比べて、これからさんの長期派は、他の2グループより低い割合になっている。

■平均的な銘柄保有期間

期間億り人順位もうすぐ順位これから順位
超長期-3年以上46.0%143.9%117.5%4
長期-1年以上~3年未満33.6%240.2%231.6%2
中期-1カ月以上~1年未満27.4%332.3%345.8%1
中短期-1週間以上~1カ月未満11.5%411.6%424.2%3
短期-1日以上~1週間以内10.6%58.5%515.6%5
超短期-日をまたがい5.3%61.1%65.4%6

注:母集団と回答数は億り人113と152、もうすぐ189と260、これから4463と6253。
回答は2つまで。合計は100%を超える

億り人は信用取引を活用する人が過半、他の2者は40%未満

信用取引の利用動向は以下の通りで億り人は利用していない人が40%台後半に対して、もうすぐさんとこれからさんは60%台となっている。億り人は、「信用買いと売りの両方をしている」人と「信用買いのみをしている人」の割合が、他の2グループより高い割合になっている。

この点だけでみれば、億り人は信用取引、しかも買いと売りの双方を活用している人が多い実態が見えてくる。ただし、株探編集部がこれまで取材したすご腕の億り人の中には、億の資産を築いてから信用を始めた投資家もいる。

資産に余裕が生じたから始めたケースや、これまで磨いてきた投資法の幅を広げる一環で信用取引を活用した例もある。しかも、億り人の中には、信用取引の仕組みの理解が不十分の中で、コロナ暴落で大きな含み損を抱えた人もいる。

これらも踏まえて、調査結果には信用取引を活用すると億り人になるという因果関係は確認されていない点は留意してほしい。

■信用取引の利用動向

利用状況億り人順位もうすぐ順位これから順位
していない48.7%164.6%162.5%1
買いと売り31.0%223.8%224.3%2
信用買い16.8%38.5%310.1%3
信用売り3.5%43.2%43.1%4

注:回答数は億り人113、もうすぐ189、これから4463

億り人の売買益期待の顔ぶれに、グロース株や世界シェアトップ銘柄も

最後に、売買益期待の最大の銘柄ランキングを紹介する。

億り人は、ベイカレント・コンサルティング<6532>がトップで、2番目にレーザーテック<6920>と東京エレクトロン<8035>の半導体関連がランクインした。

億り人はもうすぐさんとこれからさんに比べて、業績の成長期待が高い銘柄が上位に来た。また日本製鉄<5401>と大阪チタニウムテクノロジーズ<5726>という日鉄系もランクイン。取材した投資家の中には、銘柄選びの基準に長期保有するために、「業界最大手であること」「世界シェアが高い商品を持っていること」を挙げた人がいた。

大阪チタの直近実績は2期連続で赤字に転落しているが、そうした切り口では注目対象になる要素を持っている。

なお、次ページに下に記載した銘柄のうち重複を除いた49銘柄について

業種、

時価総額、

3期平均ROE(自己資本利益率)、

3期平均営業キャッシュフロー(CF)成長率、

EBITDA(利払い・割引料・税引き・償却前利益)マージン

――をまとめた表を掲載している。こちらはプレミアム会員向けとなっている。

次回のデータ分析・億り人編は、今後6カ月の日本株の投資態度や方針や日本株投資で注視する指標および情報、そして配当期待の大きい銘柄のランキングなどを紹介する。

■売買益期待が最大の銘柄ランキング

億り人もうすぐこれから
順位銘柄名<コード>順位銘柄名<コード>順位銘柄名<コード>
1ベイカレント<6532>1郵船<9101>2トヨタ<7203>
2レーザーテク<6920>2三菱商<8058>3三菱UFJ<8306>
2東エレク<8035>3商船三井<9104>4INPEX<1605>
4郵船<9101>4レーザーテク<6920>5商船三井<9104>
4トヨタ<7203>4フロンテオ<2158>6三菱商<8058>
4オリックス<8591>6ソニーG<6758>7レーザーテク<6920>
4NF日経レバ<1570>6NTT<9432>7オリックス<8591>
4日本製鉄<5401>6村田製<6981>9フロンテオ<2158>
4三井物<8031>6キーエンス<6861>10SBG<9984>
4大阪チタ<5726>10トヨタ<7203>11ソニーG<6758>
4第一三共<4568>10三菱UFJ<8306>12丸紅<8002>
4東京センチュ<8439>10INPEX<1605>13KDDI<9433>
10SBG<9984>14フェローテク<6890>
10JFE<5411>14JAL<9201>
10三井ハイテク<6966>16JFE<5411>
10東エレク<8035>17三井ハイテク<6966>
10NF日経レバ<1570>17GW<3936>
10日本M&A<2127>19NTT<9432>
10新光電工<6967>19JTOWER<4485>
10日電産<6594>21日本製鉄<5401>
10アジアGHD<1783>22NF日経レバ<1570>
10エスプール<2471>22デクセリ<4980>
10メルカリ<4385>24東エレク<8035>
10SHIFT<3697>24川崎汽<9107>
10パークシャ<3993>24ENEOS<5020>
10FPG<7148>27伊藤忠<8001>
10HOYA<7741>28アスカネット<2438>
10プロカン<9246>28住友鉱<5713>
10野村マイクロ<6254>
10CREロジスティクスファンド
<3487>

注:回答数は億り人87、もうすぐ129、除く1034。複数の人数が記載した銘柄のみ掲載。銘柄名は略称


※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 売買益期待の大きい銘柄の関連情報を記載した一覧表

 

こちらは株探プレミアム限定記事です。プレミアムプランをご契約して読むことができます。
株探プレミアムに申し込む (初回無料体験付き) プレミアム会員の方はこちらからログイン
プレミアム会員になると...
株価情報をリアルタイムで提供
企業業績の表示期数を拡大
限定コラムが読み放題

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.