“ハンタウイルス”に“エボラ”、風雲急の「感染対策」関連株を追跡 <株探トップ特集>
―日本では「はしか」急増、コロナ禍で物色人気化したあの関連株の現在地―
世界をパンデミックの恐怖に陥れた新型コロナウイルス感染症だが、日本では2023年5月に通常の医療体制で対応できるとされる「5類感染症」へと移行し、人々は日常生活を取り戻した。あれからおよそ3年が経った現在、「ハンタウイルス肺症候群」や「エボラ出血熱」など世界各地で重篤な症状を引き起こす可能性のある感染症が相次ぎ発生している。日本では、感染力が強い「はしか(麻疹)」が急増。また、いわゆる「謎の風邪」が流行するなど、感染症への関心が高まっている。感染予防は、平時のなかでの取り組みが重要であるといわれるなか、新型コロナ感染拡大期に活躍した関連株を追跡した。
●ダイヤモンド・プリンセス号の記憶と重なる
全体相場は、「AI・半導体関連にあらずんば株にあらず」な状況が続いている。しかし、こうした時だからこそ次のステップを見据え、違う角度から銘柄を考察しておくのも重要だ。新型コロナによるパンデミックを経て、感染防止に努めてきた「あの関連株」は、いまどうしているのだろうか。
20年の幕が開き、中国における新型コロナの感染拡大が騒がれ始めたころ、それはまさに対岸の火事といったムードだった。しかし、1月20日に横浜を出港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号での乗客の感染が2月1日に確認されたことにより、状況は一変する。株式市場においても、急速に感染症対策に関わる銘柄に投資家の視線が向かうことになった。ここから、世界を震撼させた新型コロナ感染拡大の脅威が世界を包み込むことになる。
今年4月には、南大西洋上を航行するオランダ船籍のクルーズ船「ホンディウス号」で、ハンタウイルスの集団感染が発生し死亡者も出している。厚生労働省検疫所によると、同症候群の主な感染経路は病原体を保有するげっ歯類の排泄物を含む粉じんの吸入だとしており、発症後に急激に病状が悪化し死に至ることもあるという。また、濃厚接触によるヒトからヒトへの感染の報告もある。今回の集団感染が「クルーズ船」で起きたことで、同じくクルーズ船内で新型コロナの感染が大きく表面化したダイヤモンド・プリンセス号の記憶と重なったこともあり、このニュースは衝撃をもって受け止められる格好となった。
●富士フイルムの「アビガン」提供
なお、厚労省は5月18日に、ホンディウス号におけるハンタウイルス感染症の発生に関連して、発症予防に使用するため、富士フイルムホールディングス <4901> [東証P]グループの富士フイルム富山化学が開発し、日本政府が備蓄する抗ウイルス薬「ファビピラビル(商品名:アビガン)」を英国に提供したと発表している。
更に、懸念されるのがエボラ出血熱の流行だ。国立健康危機管理研究機構(JIHS:ジース)によると、アフリカのコンゴ民主共和国などでエボラ出血熱の感染が急速に広がっており、死亡数も増加している。同月17日には世界保健機関(WHO)が公衆衛生上の緊急事態に該当すると宣言したが、一方でパンデミック緊急事態には該当しないとしている。エボラ出血熱については、特異的な治療法はなく、対症療法が中心であり、現在のところ承認されたワクチンはない。ただ、JIHSによると「日本国内での伝播の可能性は低い」という。
●PSSはエボラで思惑呼ぶ
こうしたなか、プレシジョン・システム・サイエンス <7707> [東証G]に株式市場の関心が向かった。同社のDNA自動抽出装置については、かつてエボラウイルスのDNA抽出分野で使用された経緯があることから、短期資金が流入し株価は思惑高を呼ぶ場面があった。コロナ禍にあって、同社は全自動PCR検査装置やPCR試薬などで注目を集めていた。同社は5月15日、26年6月期の連結業績予想について最終利益を1億1500万円から2億1800万円(前期2億5300万円の赤字)へ上方修正。営業利益をはじめ各利益は、黒字転換する見通しだ。
国内では、「はしか」が急増。感染力が極めて強く空気感染をする。感染した場合、通常約10~12日間の潜伏期間を経て発症し、合併症として肺炎やまれに脳炎を発症し死亡する例もある。有効な予防法は2回のワクチン接種で、発症や重症化のリスクを最小限に抑えることが期待できるという。武田薬品工業 <4502> [東証P]や、第一三共 <4568> [東証P]などがワクチンの製造販売を手がけている。武田については、これまで出荷を停止していた乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン「タケダ」について、6月8日の週からの出荷再開(限定出荷)を発表した。また、咳や鼻水そして喉の痛みなどの症状を起こす「謎の風邪」の流行も気にかかる。いずれにせよ、日ごろの感染予防が重要なのは間違いない。
●エーザイは逆張り妙味も
新型コロナの感染の脅威が囁かれ始めた20年1月初旬、株式市場でまず注目を集めた銘柄は大幸薬品 <4574> [東証P]だった。同年1月10日には「大幸薬品は続伸、武漢で発生の肺炎からコロナウイルス検出で思惑」という記事が株探から配信されている。このころから新型コロナ絡みの記事が急速に増加。当時の記事では、「肺炎」「新型肺炎」「コロナウイルス」「新型コロナウイルス肺炎」と名称も統一されていない。未知のウイルスに対する警戒もさほど高くはなかったといえる。
マスクや手指消毒剤、医療機関向け個人用防護具などの感染管理製品の販売を行う川本産業(25年5月14日上場廃止)、除菌製品を手掛ける中京医薬品 <4558> [東証S]や業務用洗剤、洗浄剤が主力のニイタカ <4465> [東証S]などに感染防止期待が高まり株価を刺激することになった。大幸薬品の26年12月期の連結営業利益は前期比8.9%増の5億円を計画。中京医薬の27年3月期単独業績は営業利益段階で前期比4.4%増の1億3300万円を計画し、ニイタカの26年5月期の連結営業利益は前の期比3.9%増の20億円を予想している。株価はいずれも厳しい状況におかれているが、感染症対策というテーマに対して株価の“感応度”が高い点は忘れてはならない。
また、「イータック抗菌化スプレーα」などで除菌対策関連の一角としてエーザイ <4523> [東証P]も当時人気化した。株価は、コロナ禍で幾度となく大きく買われる場面が訪れた。27年3月期連結営業利益は、前期比58.6%増の700億円を見込む。5月25日に開催した経営戦略説明会では、29年3月期の数値目標として売上収益1兆円、コア営業利益900億円の目標を掲げている。株価は4月9日に直近高値5233円をつけた後は大きく調整し4000円割れ。大底圏で売り込まれているものの逆張り妙味も。
●テルモ、ニプロはともに最高益更新へ
新型コロナのワクチン接種では、急速な需要拡大からシリンジ(注射器)や針の不足が大きな懸念材料となった。20年の7月には加藤勝信厚労相(当時)が、テルモ <4543> [東証P]、ニプロ <8086> [東証P]、JMS <7702> [東証S]など医療機器メーカーのトップと会談し、シリンジと針の増産を要請。こうしたなか、関連銘柄は物色人気を呼ぶことになる。
テルモは5月15日、27年3月期の連結業績予想を発表。今期の売上高は前期比9.5%増の1兆2390億円、営業利益は同27.3%増の2245億円と6期連続の最高益更新を目指す。株価は、同月14日につけた直近安値1901円を底に切り返し急。中東情勢を横目にしながらも、現在は2400円近辺で推移している。ニプロが同月12日に発表した27年3月期の連結営業利益は、前期比6.3%増の400億円とこちらも連続で最高益更新の見通しだ。同社の株価も決算発表翌日から反転攻勢を強めている。
●クラボウ、高機能樹脂製品が回復基調
新型コロナが猛威を振るうなか、抗ウイルス素材や製品にも熱い視線が向けられた。抗ウイルス加工「フルテクト」のシキボウ <3109> [東証P]、抗ウイルス剤練込メラミン化粧板「アイカウイルテクト」のアイカ工業 <4206> [東証P]に加え、クラボウ <3106> [東証P]は独自の抗菌・抗ウイルス機能繊維加工技術「クレンゼ」で攻勢を強めていた。このなかクラボウは、5月14日に27年3月期連結業績予想を発表。半導体製造装置関連市場向け高機能樹脂製品が回復基調にあることなどが牽引し、営業利益は前期比22%増の112億円を計画しており最高益更新を見込む。株価は5月15日に1万1580円まで買われ年初来高値を更新。その後は上昇一服も1万円近辺で推移している。
感染症対策として忘れてはならないのがマスク関連株だ。新型コロナ治療の最前線で、医療従事者の感染予防のために使用された「N95マスク」を手掛ける興研 <7963> [東証S]や重松製作所 <7980> [東証S]は、感染予防関連株として関心が高いだけに注目は怠れない。クルーズ船内でハンタウイルスの感染が発生し3人が死亡したとWHOが発表した際も、両銘柄ともに大幅高に買われた経緯がある。
株探ニュース