明日の株式相場に向けて=我が道を行く株「大化け候補生」を探す
きょう(9日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1392円高の6万5416円と大幅反発。前日の下げ分を取り戻すには至らないが半値以上は戻した勘定。テクニカル的には25日移動平均線を足場に踏みとどまった形で、明日以降も上値指向が維持されれば、5月中旬の調整局面と同様、25日線をリバースポイントとする極上の拾い場提供ということで話は完結する。ただ、中身をみると日経平均が1400円近く上昇している割に値上がり銘柄数は全体の54%にとどまる。やはりAI・半導体関連という一つの集落がせわしく相場を振り回しているという状況が見てとれる。
きょうは日銀からのリークが株式市場にポジティブに作用した。来週15~16日の日銀金融政策決定会合で0.25%の利上げ決定についてマーケットは織り込み済みであったが、きょうの観測報道はこれをなぞったに過ぎずマイナス要素は感じられない。これと併せて来年4月から国債買い入れ減額の停止(四半期ごと)を行うというアドバルーンが上げられた。これは一瞬分かりにくいが、いわゆるQT(量的引き締め)を停止するということで、QE(量的緩和)ではないが緩和的な作用をもたらす話であり、日銀サイドとしては緩衝材を用意しているというマーケットへのメッセージである。
個別株もきょうは視界がやや広がった。言うに及ばず今は生成AI市場の飛躍的な拡大が続くなか、世界的にAIデータセンターの建設が加速している。ただ、強力な計算資源となっているGPUは電力を爆食するとともに、それに付随する発熱問題が常に大きな課題として横たわっている。そこで、注目されているのがサーバー冷却分野のインフラを提供する企業群だ。電力効率を向上させるエジェクタ冷却機を手掛ける富士電機<6504>のほか、水冷式ではニデック<6594>が高技術を有する。また、スーパーコンピューター「富岳」の冷却配管システムで実績を上げた三櫻工業<6584>も存在感を高めている。このほか、高精度な水冷用バルブを製造するキッツ<6498>、流体継手のトップメーカーである日東工器<6151>やCKD<6407>なども活躍余地が大きい。更に非導電性液浸冷却フルード(流体)を製造するのがAGC<5201>で、今後も折に触れスポットライトを浴びそうだ。
基本は「強い銘柄の押し目買い」が値千金の戦略で、可能性として大相場に発展する可能性を内包している銘柄に資金を振り向ける。以前にも取り上げたニッポン高度紙工業<3891>はついに1万円大台ラインを突破した。“1万円クラブ”などという看板自体が時流に追いつけなくなっているが、それでも過去1万円を突破した銘柄を見ると、キオクシアホールディングス<285A>はもちろんのこと、大化け株の登竜門というイメージを持つ市場関係者は少なくない。村田製作所<6981>は株式分割をしている関係で、額面通りの意味合いでは語れないが、やはり今の1万円大台近辺での攻防は強弱観が対立するポジションといえ、売りと買いどちらに軍配が上がるかにマーケットの熱い視線が向けられている。
AI・半導体関連以外は眼中になしという相場のようだが、よく目を凝らすと実際はそうでもなく、諸々の背景で相場に発展しつつある銘柄が散見される。では、強い銘柄とはどういうものか。これはあくまで個別にピックアップしていくよりないが、コンセプトとしては確信と言えるレベルではないものの、投資する側に夢を持たせる銘柄群と定義される。大化け株の匂いを発散させている銘柄は、AIの推論領域ではフォローできず、それを嗅ぎ分けるのはまさにアナログ的な投資家の感性以外にない。
現状ではあくまで候補生に過ぎないが、いくつか挙げていくと、例えば石原ケミカル<4462>。きょうは大陽線を示現し一時3000円に乗せたが、先端デバイスの表面処理剤に期待が大きく、2月25日につけた上場来高値を抜き去ることができれば本物といえる。また、オールドカンパニーながら半導体製造装置用電源と自動運転分野で活躍機会が高まっている京三製作所<6742>も並々ならぬ動き。半導体材料では前週紹介したステラ ケミファ<4109>も新値街道を走っており、日足陽線の多さが上値余力を暗示している。クリエーター用イラスト制作アプリを手掛けるセルシス<3663>は生成AIのリーチが届かないエリアで需要を囲い込み、アンソロピックショックなどどこ吹く風で意表の上値追い。ロジンを主原料とする光硬化型樹脂のニッチトップである荒川化学工業<4968>の強さも秀逸。PBRが依然として解散価値の半値水準である0.5倍というのには驚く。このほか、半導体ウエハー容器のグローバルニッチトップといえばミライアル<4238>で、株価の上げ足に拍車がかかっている。
あすのスケジュールでは、5月の企業物価指数が朝方取引開始前に日銀から開示されるほか、前場取引時間中に30年物国債の入札が行われる。また、個別にANYCOLOR<5032>の4月期通期決算、GENDA<9166>の26年2~4月期決算が発表される。海外では5月の中国消費者物価指数(CPI)、5月の中国生産者物価指数のほか、5月の米消費者物価指数(CPI)にマーケットの注目度が高い。これ以外に5月の米財政収支、米10年物国債の入札も予定されている。また、カナダの金融政策決定会合が行われ政策金利が発表される。海外主要企業の決算発表では米オラクル<ORCL>の3~5月期決算が注目される。(銀)