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イランによるホルムズ海峡の管理で、石油市場は新たな局面へ? <コモディティ特集>

特集
2026年7月8日 13時30分

●ホルムズ海峡は戦争前とかけ離れた管理体制へ

米国とイランの覚書合意を受けて、ホルムズ海峡の航行は正常化に向かっている。原油取引の指標価格となるブレント原油やニューヨーク市場のウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物はイラン戦争開始後の上げ幅を消し、市場は次のテーマを探っているが、ホルムズ海峡から市場参加者の視線は離れそうにはない。

ホルムズ海峡を通過するには、イラン側かオマーン側のルートの二択となる。ホルムズ海峡の中央部の機雷はまだ除去されておらず、ただでさえ狭い2つのルート上を貨物船やタンカーがひしめき合っている。欧州連合(EU)は対イラン制裁を解除しておらず、イラン革命防衛隊(IRGC)が管理するイランルートを敬遠せざるを得ない船舶が多く、オマーン航路を利用する船舶でも米軍による護衛がたびたび観測されるなど、ホルムズ海峡の航行は正常化しつつあるものの、イラン戦争前とはかけ離れている。

覚書の第5項では、「イランは、適用される国際法とホルムズ海峡沿岸国の主権的権利に沿って、ペルシャ湾の他の沿岸諸国と協議しつつ、ホルムズ海峡における将来の管理と海事サービスを定めるため、オマーンと対話を行う」とされており、イランが設立したペルシャ湾海峡庁(PGSA)を中心としたホルムズ海峡の管理が始まる見通しだ。覚書が締結された後もトランプ米大統領やルビオ米国務長官はイランがこの海峡を管理することを拒絶しているが、イランはオマーンとの対話を積み重ねている。イランがオマーン以外のペルシャ湾岸諸国との共同管理を提案したとの報道もあった。ブルームバーグの報道によると、欧州の一部の国はホルムズ海峡を通行する船舶がイランやオマーンに通行料を支払わざるを得なくなるとの見方も受け入れつつあるという。

●海峡の航行管理でOPECプラスを上回る影響力を行使可能に

5月にIRGCが発表した地図によれば、ホルムズ海峡の管理海域の東端はアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ付近からイランのモバラク山をつないだ海域となる。実際にこの地図に基づいて管理が始まるのか今のところ不透明だが、UAEの石油基地であるフジャイラ沖がイランの管理対象となるならば、ペルシャ湾岸諸国でPGSAの管理を回避できるのはサウジアラビアの東西パイプラインだけである。

イランがホルムズ海峡を管理する目的は通行料である。米国との武力衝突で発生したイランの被害額ははっきりとしていないが莫大であることは確かであり、損失補填あるいは戦後賠償としての意味合いが強い。また、イランがホルムズ海峡の航行を管理するということは、石油の供給量を管理することに等しい。サウジの東西パイプラインがフル稼働しても、日量1300万バレル規模の輸出がホルムズ海峡を経由する必要があり、イランは石油市場に対して石油輸出国機構(OPEC)プラスを上回る影響力を行使可能となる。覚書に沿って、イランがこの絶大な権力を行使できるようになるのか、または実際に行使しようとするのか不明だが、石油市場の新たな世界が開かれようとしていることは確かだろう。ただ、ホルムズ海峡におけるイランの商船攻撃を受けて米国はイランの石油販売許可を取り消しており、覚書に沿って協議が前進すると到底思えない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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