糸島孝俊氏【AI拡大と強まる金利先高観、8万円突破の唯一の条件とは】 <相場観特集>
―エヌビディア決算とジャクソンホール会議後の気迷い相場の行く末は?―
31日の東京株式市場は朝方大きく売られるも、後場に買い戻しが入り、日経平均株価は反落ながら6万6000円台で高値引け。TOPIXは8連騰となった。ジャクソンホール会議でのウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長のタカ派的発言に動揺が走ったものの、日経平均は下値の堅さを印象付けた。次の焦点である日米中銀の金融政策決定会合に向け、日経平均は上下どちらに動くのか。ストラテジストとして大局的視点での市場分析に定評のあるピクテ・ジャパンの糸島孝俊氏に、9月相場を展望してもらった。
●「6万円から7万円のレンジが濃厚だが、上下更にぶれる可能性も」
糸島孝俊氏(ピクテ・ジャパン 運用本部 シニア・フェロー)
前週末のジャクソンホール会議でのウォーシュ氏講演は、ある種のネガティブ・サプライズとなった。市場との会話に消極的と目された同氏が、大方の予想を裏切り、利上げの可能性を示唆する発言をしたことにより、週明けの東京市場はFRBの早期利上げを織り込む展開となった。米国では今夜からG20財務相・中銀総裁会議が始まる。一方、日本では2027年度の予算に向けた各省庁の概算要求が期限を迎え、当初見積もりの140兆円を上振れる可能性が指摘されている。9月中旬の金融政策決定会合へ向け、日米ともに金利が上昇しやすい局面を迎えたといえよう。
同じく注目されたエヌビディア<NVDA>決算は、予想以上の好業績に加え、同社が来期(28年1月期)の売上高予測を公表し、引き続きAI投資が旺盛であることを示したことで、市場には一定の安心感が広がった。決算発表後の同社の株価が乱高下したことから分かるとおり、一部で指摘されている同社の循環投資への不安が完全に払しょくされたとはいえないが、ひとまずAIへの過剰な懸念が和らいだことは確かだ。
AI需要の拡大と金利の上昇。2つのベクトルが同時進行する9月相場だが、当面の日経平均は6万円から7万円という比較的大きなボックス圏で推移すると見ている。AI関連銘柄は、これ以上の暴落はないだろうが大きな上昇も見込めない。もちろん金利上昇も逆風となる。その分、金利高の恩恵を受ける銀行株を始めとしたバリュー株へと資金が向かうだろう。更にバリュー株の中では、9月の日米の金融政策次第で物色対象が分かれる。日銀の利上げはほぼ確実だが、もしFRBが政策金利を上げずに据え置けばAI・半導体関連株の一時的なリバウンドが期待できる。反対に利上げとなれば、銀行株に加え小売株やディフェンシブ株、9月末配当取り狙いの内需系高配当バリュー株の投資妙味が増す。
とは言え、株価がこのレンジ以上の推移を見せる可能性もわずかにある。そのカギとなるのはイラン情勢だ。もし米国とイランの停戦が暫定であれ今度こそ実現し、ホルムズ海峡の通航が元に戻るようなら日経平均は8万円突破もあり得る。逆にイラン情勢が更に悪化すれば、5万円まで下落しても不思議ではない。その意味で当面、注目しなければならないのは、9月下旬に開催される米中首脳会談だ。日本では大型連休直後だが、米中間選挙の行方をにらんだこの会談の結果いかんでは、イラン情勢がどちらかに大きく動く可能性もあるからだ。
(聞き手・樫原史朗)
<プロフィール>(いとしま・たかとし)
証券系シンクタンクの企業調査アナリストを経て、日系大手運用会社にて国内株式中心に運用。その後、ヘッジファンドや独立系運用会社でもアクティブ・ファンドマネージャーとして従事。運用経験通算21年、最優秀ファンド賞など、数々の受賞歴を持つ。ピクテでは、ストラテジストとして国内株式を中心に主要国のエクイティ・マーケットまでカバー。テレビ東京「News モーニングサテライト」、日経 CNBC「昼エクスプレス」、ストックボイスなどメディア出演多数。
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